庚申の夜殿上の人々をわらわせし事
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 22:44 UTC 版)
「安倍晴明物語」の記事における「庚申の夜殿上の人々をわらわせし事」の解説
(元になったのは『宇治拾遺物語』巻十四の十一「俊平入道弟習算術語(俊平入道の弟、算術を習いし語)」。主人公を高階俊平の弟から晴明に置き換えている。浅井了意の別著作『北条九代記(鎌倉北条九代記)』の「大輔房源性異僧に遇ひ算術の奇特ある事付安倍晴明奇特の事」に同じ話が収録されている) 9月、庚申の夜。庚申講に天皇を始め、若い殿上人たちが集まって夜明かしをしていたが、皆眠気を催していた。そこで晴明が呼び出され、何としても眠気を覚ませと勅命された。 晴明が祈祷を行うと、切り灯台などの調度品が一箇所に集まって跳ね踊った。その様子がすさまじいため、天皇は「もう少し恐ろしくない事をせよ」と命じた。晴明が「ならば、皆さんを笑わせましょう」と言う。それに対して天皇は「申楽などは笑いもしようが、他に何か可笑しいことがあるのか」と問われる。晴明は目をしばたたいて「申楽でもありませんし、可笑しい物語りするわけでもなく、皆さんをただ笑わせます」と答えた。晴明は明るいところへ算木を持ち出して置き渡したのを見て、殿上人たちは「これがおかしいことなのか。どれ、笑うか」などと嘲笑するが、晴明はそれに応えず、算木を1本手に持って「皆さん、飽きるまで笑いなさい」と言う。 それを聞いた全員が、わけもなく可笑しくなって笑い出した。天皇は笑い転げて内に引っ込んでしまい、残された人々も笑いどよめく。何か特別なものを見たわけでもないのに、ひたすら可笑しくて笑いが止まらない。腹がよじ切れるような痛みに涙を流しつつ笑いながら、晴明に向かって手を合わせた。晴明が「笑い飽きましたか」と問うと、一同はやっとの思いでうなずき、笑いながら七転八倒しつつも手を摺り合わせた。そこで晴明が算木を押し崩すと、なんということもなく、可笑しさは冷めた。
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