平面波基底
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/19 19:05 UTC 版)
「基底関数系 (化学)」の記事における「平面波基底」の解説
量子化学計算には、局在基底系の他に平面波基底も用いられる。平面波では基底を増やすほど精度がよくなるが、通常はあるカットオフエネルギー以下の有限数の平面波が用いられる。この基底は周期的境界条件を課せられた系についての計算によく用いられる。特定の積分は平面波基底を用いることにより局在基底と比べて実装も計算もはるかに簡単になる。 実用上、平面波基底は有効核ポテンシャル、別名擬ポテンシャルと共に用いられることが多い。これを用いることで価電子密度の計算のみを平面波を用いて行うことができる。これは、コア電子は原子核の周りに集中していることが多く、波動関数の勾配も電子密度の勾配も大きくなるために平面波で表現するには波長の短い平面波が必要で、カットオフエネルギーを非常に高くしなければならないからである。平面波基底と擬ポテンシャルを用いる手法はしばしば略してPSPW計算と呼ばれる。 その上、平面波基底には全ての基底関数が互いに直交するため、基底関数重なり誤差が生じないという利点がある。しかし、この基底は気相の計算には向いていない。高速フーリエ変換を用いると、運動エネルギー積分などの前述の積分だけでなく、その微分も平面波基底の逆格子空間上で容易に計算できるようになる。さらなる平面波基底の利点として、この基底を変分計算に用いると目的の波動関数に単調かつ滑らかに収束することがあげられる。対して、ガウス基底の場合は単調な収束しか保証されない(correlation-consistent基底系は例外)。フーリエ変換の特性により、全エネルギーを各平面波の係数で微分した勾配を表わすベクトルを計算するのに必要な計算量は、NPWを平面波の数としてNPW*ln(NPW) のオーダーでスケールすることがわかる。この性質と、Kleinman-Bylander型の分離型擬ポテンシャルおよび前処理付き共役勾配法を組み合わせて用いると、数百原子を含む周期系の動的シミュレーションが可能となる。
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