定理の主張と証明
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/12 04:36 UTC 版)
「ゲルシュゴリンの定理」の記事における「定理の主張と証明」の解説
n × n-複素行列 A の各成分を a i j {\displaystyle a_{ij}} とする。また各 i ∈ {1, …, n} に対して R i = ∑ j ≠ i | a i j | {\displaystyle R_{i}=\sum _{j\neq {i}}\left|a_{ij}\right|} を第 i-行の非対角成分の絶対和とする。このとき、aii を中心とする半径 Ri の閉円板 D(aii, Ri) をゲルシュゴリン円板 (Gershgorin disc) と言う。 定理 (Gershgorin) A の任意の固有値は少なくとも一つのゲルシュゴリン円板 D(aii, Ri) の上に載っている 証明. A の固有値 λ とそれに属する固有ベクトル x = (xj) を取り、固有ベクトル x のうち絶対値が最大となる成分の番号 i ∈ {1, …, n} (|xi| = maxj |xj|) を選ぶと |xi| > 0 である(さもなくば x = 0 である)。x は固有ベクトルゆえ Ax = λx が成り立つが、これは各行について ∑ j a i j x j = λ x i {\displaystyle \sum _{j}a_{ij}x_{j}=\lambda x_{i}} が成り立つということであり、対角成分を移行して ∑ j ≠ i a i j x j = λ x i − a i i x i {\displaystyle \sum _{j\neq i}a_{ij}x_{j}=\lambda x_{i}-a_{ii}x_{i}} が得られる。i を上で述べたように選んだならば、選び方から xi ≠ 0 だから、両辺を xi で割って絶対値を取れば | λ − a i i | = | ∑ j ≠ i a i j x j x i | ≤ ∑ j ≠ i | a i j x j x i | ≤ ∑ j ≠ i | a i j | = R i {\displaystyle |\lambda -a_{ii}|=\left|{\frac {\sum _{j\neq i}a_{ij}x_{j}}{x_{i}}}\right|\leq \sum _{j\neq i}\left|{\frac {a_{ij}x_{j}}{x_{i}}}\right|\leq \sum _{j\neq i}|a_{ij}|=R_{i}} を得る。ここで最後の不等号が成り立つことは | x j x i | ≤ 1 for j ≠ i {\displaystyle \left|{\frac {x_{j}}{x_{i}}}\right|\leq 1\quad {\text{for }}j\neq i} による。 系 A の固有値は A の(行ではなく)列に対応して作られるゲルシュゴリン円板の上にも載っていなければならない。 証明は A の代わりに A の転置行列 AT を考えればよい。 例 対角行列に対しゲルシュゴリン円板はその行列のスペクトルそのものである。逆にゲルシュゴリン円板がスペクトルに一致するならば、その行列は対角行列である。
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