大陸貴族との違い
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/22 22:50 UTC 版)
英国貴族は大陸の貴族と違い法的な特権がほとんどなかった。行政・軍事における高級の地位が保障されることはなく、土地所有について税金を支払い、権利争いにおいては所有地内で暮らしている者から起訴されることもあった。 イギリスは一方で強固な階級関係を維持しながら、その階級関係は固定的ではなく財産の上昇や下降で変わっていく流動的なものだった。特に「紳士」(ジェントルマン)という高度に階級的な表象は、やがて社会の最底辺まで下降するだけの流動性を有していた。 旧体制フランスの貴族は自分たちの特権に固執したので閉鎖的なカーストとなり、その結果フランス革命で破局を迎えることになるが、英国貴族や紳士は貧民の保護を自らの義務・名誉と心得ていたので積極的な慈善事業を行ったし、特権も適時に徐々に手放したので、閉鎖的なカーストとならず、むしろ無限に社会の底辺にまで広がっていた。「労働貴族」(熟練労働者が未熟練労働者と徒弟に対してあたかも貴族であるかのように教育と保護の義務を負う)の概念はそれを象徴する。19世紀フランスの歴史家フランソワ・ピエール・ギヨーム・ギゾー、フランソワ=ルネ・ド・シャトーブリアン、アレクシ・ド・トクヴィル、イポリット・テーヌらがそろってイギリス貴族制を「義務・責任を負った貴族制」(ノブレス・オブリージュ)として羨望と賞賛の言葉を送っている所以である。
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