国の財政・会計
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/19 01:33 UTC 版)
一三 租税を薄くして民を裕(ゆたか)にするは、即ち国力を養成する也。故に国家多端にして財用の足らざるを苦むとも、租税の定制を確守し、上を損じて下を虐(しい)たげぬもの也。能く古今の事跡を見よ。道の明かならざる世にして、財用の不足を苦む時は、必ず曲知小慧(きよくちしようけい)の俗吏を用ゐ巧みに聚斂(しゆうれん)して一時の欠乏に給するを、理材に長ぜる良臣となし、手段を以て苛酷に民を虐たげるゆゑ、人民は苦悩に堪へ兼ね、聚斂を逃んと、自然譎詐狡猾(きつさこうかつ)に趣き、上下互に欺き、官民敵讐(てきしゆう)と成り、終に分崩離拆(ぶんぽうりせき)に至るにあらずや。 一四 会計出納は制度の由(よつ)て立つ所ろ、百般の事業皆是れより生じ、経綸(けいりん)中の枢要(すうよう)なれば、慎まずはならぬ也。其の大体を申さば、入るを量りて出るを制するの外更に他の術数無し。一歳の入るを以て百般の制限を定め、会計を総理する者身を以て制を守り、定制を超過せしむ可からず。否(しか)らずして時勢に制せられ、制限を慢(みだり)にし、出るを見て入るを計りなば、民の膏血(こうけつ)を絞るの外有る間敷(まじき)也。然らば仮令(たとい)事業は一旦進歩する如く見ゆるとも、国力疲弊して済救す可からず。 一五 常備の兵数も、亦会計の制限に由る、決して無限の虚勢を張る可からず。兵気を鼓舞して精兵を仕立てなば、兵数は寡(すくな)くとも、折衝禦侮(ぎよぶ)共に事欠く間敷也。
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