吹き荒れて春体内の泥や塩
作 者 |
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季 語 |
春 |
季 節 |
春 |
出 典 |
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前 書 |
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評 言 |
吹き荒れて春、春先の感じです。句全体の印象からいうと、春泥、春塵、春埃、黄砂、霾といろいろ考えられます。しかし、後半の表現は、又別の趣きです。前半の外的要素が内面のうっくつした気分、自らかかえるさまざまな問題、不安、病気かもしれませんし、家庭をも含め決して楽しいことではないマイナーな部分の、内包される要素を引き出します。 「泥や塩」、色彩的にも黒と白です。塩が人間の根源的なものを暗示しています。人間そのもののはかない存在感です。 作者は「重くれ俳句」を標榜する作家と言われています。従って作品は、難解なものが多く、簡単に素人にはわからせてもらえません。 第3句集「藍納戸」(1998年)より 果てしなく手を洗いおり山法師 菜の花畑扉一枚飛んでいる 言い訳のように昼月母訪わな 白鳥に影というものオホーツク 春一番その上を行く鉄腕アトム 発止と蟬それから一茶出て行けり 思考停止せよ弥勒の涼しき手 青大将存分に垂れ熊野かな 雲を釣るひとりは見えて後向き 比較的与し易い句を選んでみました。一句目、果てしなくが山法師を無理なく引き出します。又、オホーツク、鉄腕アトム、一茶、弥勒菩薩等固有名詞を、自在に定着させる作句力はさすがです。 |
評 者 |
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備 考 |
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