単位根仮説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/08/22 21:07 UTC 版)
経済学者は様々な経済的統計量、特に生産量、が単位根を持つか、もしくはトレンド定常過程かで議論を行っている。ドリフト付き単位根過程は、1次オーダーの場合、以下で与えられる。 y t = y t − 1 + c + e t {\displaystyle y_{t}=y_{t-1}+c+e_{t}} ここで c は定数項であり、"ドリフト"項と見なされ、 e t {\displaystyle e_{t}} はホワイトノイズである。たった1期間でもノイズ項の値が0でなければ、グラフで示すようにノイズは y t {\displaystyle y_{t}} の値に恒久的な影響を与える。よって直線 y t = a + c t {\displaystyle y_{t}=a+ct} からの逸脱は非定常であり、どのようなトレンドにも戻ることはない。対照的にトレンド定常過程は以下で与えられる。 y t = k ⋅ t + u t {\displaystyle y_{t}=k\cdot t+u_{t}} ここで k はトレンドの傾きであり、 u t {\displaystyle u_{t}} はノイズである(単純な場合ではホワイトノイズであるが、より一般的にはノイズ自体が定常自己回帰過程である)。ここでは、どのような一時的ノイズも y t {\displaystyle y_{t}} がトレンド上にあるという長期的傾向から置き換わることはない、これは図で示したとおりである。この過程は、トレンド線からの逸脱が定常であるがために、トレンド定常性と呼ばれる。 この問題は景気循環における文献で特に一般的である。この問題についての研究はGNPと他の生産集計量が単位根仮説を統計的に棄却し損ねたという Nelson と Plosser の研究から始まっている。それ以来、統計的方法についての技術的な批判にまつわる議論が行われている。いくつかの経済学者はGDPは単位根、もしくは構造変化を持ち、経済的な下落は恒久的に長期でのGDPの水準低下をもたらすだろう、と主張している。他の経済学者はGDPはトレンド定常的であると主張している。つまり、GDPが景気悪化の間下落したとしても、後にトレンドが予期している水準にまで戻り、ゆえに恒久的なGDPの下落は存在しないと主張している。単位根仮説についての文献が統計的方法についての難解な議論と整合的であるだろうという一方で、この仮説は経済予測と政策に有意な実証的含意をもたらしている。
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