単位根の存在が疑われる時の推定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/08/22 21:07 UTC 版)
「単位根」の記事における「単位根の存在が疑われる時の推定」の解説
最小二乗法(OLS)は自己回帰モデルの傾きを推定するためにしばしば用いられる。OLSの使用の妥当性は確率過程が定常であることに依存する。もし、確率過程が非定常ならば、OLSの使用は間違った推定をもたらし得る。クライヴ・グレンジャーとポール・ニューボールド(英語版)はそのような間違った推定を見せかけの回帰(英: spurious regression)と呼んだ。見せかけの回帰では、高い決定係数と高い t 検定統計量が得られるが、経済学的な意味はまったくない。 傾きを推定するためには、まず単位根が存在するという帰無仮説の下での単位根検定を行わなければならない。もしこの帰無仮説が棄却されれば、OLSを利用できる。しかしながら、単位根の存在が棄却できなければ、その系列の差分を取らなくてはならない。もし単位根検定により差分系列が定常であると確かめられたならば、OLSをその差分系列に対して傾きを推定する為に使用できる。 例えば、AR(1)の場合、 Δ y t = y t − y t − 1 = ε t {\displaystyle \Delta y_{t}=y_{t}-y_{t-1}=\varepsilon _{t}} は定常である。 AR(2)の場合、 y t = a 1 y t − 1 + a 2 y t − 2 + ε t {\displaystyle y_{t}=a_{1}y_{t-1}+a_{2}y_{t-2}+\varepsilon _{t}} は ( 1 − λ 1 L ) ( 1 − λ 2 L ) y t = ε t {\displaystyle (1-\lambda _{1}L)(1-\lambda _{2}L)y_{t}=\varepsilon _{t}} と表すことができ、L は各変数の時間の添え字を一期分に減らすラグオペレーター(英語版)である。つまり L y t = y t − 1 {\displaystyle Ly_{t}=y_{t-1}} を満たす。もし λ 2 = 1 {\displaystyle \lambda _{2}=1} ならば、このモデルは単位根を持ち、 z t = Δ y t {\displaystyle z_{t}=\Delta y_{t}} と置ける。すると z t = λ 1 z t − 1 + ε t {\displaystyle z_{t}=\lambda _{1}z_{t-1}+\varepsilon _{t}} は | λ 1 | < 1 {\displaystyle |\lambda _{1}|<1} ならば定常である。よって傾き λ 1 {\displaystyle \lambda _{1}} を推定する為にOLSを用いることが出来る。 もし確率過程が多数の単位根を持つならば、差分オペレーターを複数回適用できる。
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