化学発色皮膜
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/15 16:24 UTC 版)
ステンレス鋼は金属素地を露出させて使うのが一般的だが、ニーズの多様化に応える形で近年では着色したステンレス鋼も利用されている。用途によっては銀色の金属光沢が持つ冷たい印象を嫌う場合もあり、そういった面からも着色が求められる。 ステンレス鋼の着色方法には、後述の塗装のほかに、表面に酸化皮膜を作り、光の干渉色を利用する方法がある。酸化皮膜の厚さを変えることで、干渉色を変えることができる。この方法には様々なものが存在するが、実用的にはインコ法が主流である。 インコ法は、硫酸と酸化クロムの浴に浸漬して発色させる工程と、さらに硫酸とリン酸の浴で浸漬・電解し、酸化皮膜を強固にする工程から成る。できあがる酸化皮膜は「化学発色皮膜」と呼ばれる。化学発色皮膜の組成はクロムに豊み、厚みはステンレス鋼元来の不働態皮膜よりも著しく大きい。ただし、化学発色法による酸化膜は、元来の不働態皮膜と異なり傷ついたら回復しない。浸漬時間に応じて化学発色皮膜の厚みが変わり、厚みが増すにしたがって発色が「ブロンズ → 青 → 金色 → 赤 → 緑」と変わる。化学発色皮膜の厚さは、ブロンズのときに 0.02 μm 程度、緑のときに 0.36 μm 程度である。現在では発色と硬化を分けずに、同じ工程で一度に行う技術も実用化されている。以前の化学発色法は発色の不均一さを克服できなかったが、現在では前処理技術の向上などによって均一な発色も可能となっている。
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