前後方向の力の伝達
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/02 01:42 UTC 版)
「鉄道車両の台車」の記事における「前後方向の力の伝達」の解説
車体と台車(具体的には台車枠)との間の相対運動に関して、枕ばねは上下や左右方向の運動を吸収するが、前後方向については相対的に固定して輪軸と車体の間に生じる前後方向の力、すなわち牽引力やブレーキ力を伝達する必要がある。(なお輪軸と台車枠との間の伝達は下記の軸箱支持装置が行う)。 スイングハンガー方式、インダイレクトマウント方式においては車体と上揺れ枕または枕ばり(ボルスタ)の間は心皿・中心ピンで伝達されるが、そこから台車枠の間には枕ばねが介在する。またダイレクトマウント方式においては車体とボルスタの間に、ボルスタレス台車では車体と台車枠の間に枕ばねが介在する。しかし枕ばねは一般に横方向の剛性が低く、力の伝達には適しない。そのため以下のように様々な方式が用いられてきた。 揺れ枕守方式 スイングハンガー方式の中でも古い台車では上揺れ枕と台車枠の間に「すり板」を設け、相互に揺動する両者を接触させることで、前後の牽引力の伝達を行う揺れ枕守方式が主流であった。しかし揺れ枕守は、構造が簡単で安価な一方で、台車の揺れにより摩耗し「がたつき」を起こしやすいことが欠点である。詳細はボルスタアンカー#揺れ枕守方式とその欠点を参照されたい。 ボルスタアンカー 上の欠点を克服するものとして登場したのがボルスタアンカーである。ボルスタアンカーは、枕ばねの上端・下端を前後方向に拘束し、牽引力やブレーキ力を伝達するもので、その他の動きは拘束しない。スイングハンガー方式では上揺れ枕と台車枠の間に、インダイレクトマウント方式ではボルスタと台車枠の間に設けられる。詳細はボルスタアンカー#ボルスタアンカーのバリエーションを参照されたい。 一方ダイレクトマウント方式においては車体とボルスタの間に設けられる。詳細はボルスタアンカー#牽引力を伝達するボルスタアンカーを参照されたい。 牽引装置 枕ばりを持たないボルスタレス台車には、牽引装置が設けられて回転運動などは拘束せずに前後の力を車体と台車枠の間で伝達する。門形板ばね、Zリンク、1本リンク、積層ゴム式などの方式が存在する。 なおボルスタレス台車においては、上記ボルスタアンカーと類似した外観を呈するが牽引力の伝達を行うのではないヨーダンパが設けられていることも多い。また、ごく一部のボルスタアンカー付き台車では、高速時の蛇行動対策としてヨーダンパを併設した例が存在する。その詳細はボルスタアンカー#ヨーダンパとボルスタアンカーを参照されたい。
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