制裁減免制度
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/06/20 06:44 UTC 版)
カルテルに参加していても欧州委員会にその事実を通報した企業は、制裁減免制度(リーニエンシー)により起訴しないとしている。この制度は2002年に初めて適用された。 カルテル事件における制裁金の減免に関する欧州委員会告知では、欧州委員会のカルテル捜査に協力した企業に対して刑罰の減免を保証している。 II.A, §8: The Commission will grant immunity from any fine which would otherwise have been imposed to an undertaking disclosing its participation in an alleged cartel affecting the Community if that undertaking is the first to submit information and evidence which in the Commission’s view will enable it to: (a) carry out a targeted inspection in connection with the alleged cartel; or (b) find an infringement of Article 81 EC in connection with the alleged cartel.(日本語訳) 欧州委員会は共同体に影響を及ぼす疑わしいカルテルに参加している事実を明らかにした事業体に対して、その事業体が欧州委員会に情報や証拠を他の事業体より先んじて提供し、それらにより欧州委員会が以下のような行動ができる場合は、本来科されるべき制裁金を免除する。 (a) 疑わしいカルテルをめぐる捜査の実施 (b) 疑わしいカルテルをめぐる欧州共同体設立条約第81条違反の発見この制度は単純明快なものである。自らの罪を白状し、それを欧州委員会に伝えた最初の企業が刑事責任を完全に免れるというものであり、つまり一切の制裁金を科されないというものである。以下のような欧州委員会に対する協力についても制裁金の減額の対象となる。 カルテルの存在を最初に告発者した企業は、刑事責任を免除される。 カルテルの存在を告発しても最初の告発者でない企業は、制裁金の50%が減額される。 欧州委員会に協力し自らの責任を認めた企業は、制裁金の10%が減額される。 捜査の実施が公開され更なる情報をもたらした企業は、制裁金の20-30%が減額される。 この方策はカルテルの発見件数の増加につながる大成功であるとされ、今日ではほとんどのカルテル捜査は制裁減免制度による告発から開始されている。制裁金減免額を変動させる目的はカルテル参加企業の内部告発競争を促すことである。国境を跨ぐ国際的捜査においてカルテル参加者は欧州委員会だけではなく国内外の公正競争管轄庁に苦心して通報するようになっている。
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