出演俳優たち
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/14 03:46 UTC 版)
フィリスというキャラクターは、それまでのハリウッド映画では倫理的に許されないほどの異常な悪女であった。従来、明るい美人の役柄を得意としてきたバーバラ・スタンウィックは、自ら選んだ金髪のかつらを被り、フィリス役に挑んだ。アカデミー主演女優賞にもノミネートされたが、受賞は逸した。 夫の殺害に際しても何ら動じず、むしろ笑みさえ浮かべるフィリスの非情さは、ファム・ファタール(運命の女、危険な女)と言われる女性像のクラシックになっている。 原作では「ウォルター・ネス」だった主人公は、ロサンゼルスに当時、偶然にも同姓同名の保険外交員が実在したことからトラブルを慮って「ネフ」に改名された。 当時、この主人公役のオファーに応じる俳優はほとんどいなかった。多くの男優とそのマネージャーは、悪女の誘惑に屈して破滅するような「不道徳なアンチヒーロー」であるキャラクターを演じることによる、スターとしてのイメージダウンを怖れたのである。 当初は、主演にポール・ダグラスを考えていたが、ダグラスが急死したため、最終的にワイルダーは、もっぱら凡庸なB級コメディ映画の主役専門だった二枚目フレッド・マクマレイを強引に口説き落とし、ネフ役に据えた。マクマレイにとっては初のシリアスな主演映画となり、彼の新境地を開くことになった。 行動的な調査員・キーズを演じたエドワード・G・ロビンソンは、ギャング役で鳴らした大スターとして知られるが、知識人・労働者、善人・悪人の何れもこなせる万能型の性格俳優であった。短躯でダミ声の強面である彼は、本作では葉巻片手に圧倒的な早口で喋りまくり、ユーモアをも交えた緩急に富む演技で、この重苦しい作品の息抜き役ともなっている。ネフと悪女フィリスの関係が破滅の道へ陥っていくのと対照的に、ネフとキーズの「男の友情」は全編に貫かれ、ラストシーンに至って、物語に深い余韻を残した。
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