湯浅 譲二:二つのパストラール
英語表記/番号 | 出版情報 | |
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湯浅 譲二:二つのパストラール | 作曲年: 1952年 |
作品解説
この作品は湯浅の処女作で、作曲家になることを決意した1952年に書かれている。パストラールとは、もとは羊飼いの笛の音を模倣した器楽曲のことで、通常は牧歌風ののどかな曲風を示す言葉である。とはいえ、湯浅のこの作品は、さすがに作曲を志す23歳の青年の初心が表れており、決して退屈なのどかさはない。湯浅もまた武満と同様に音楽はほとんど独学だが、武満のデビュー作《二つのレント》よりも、処女作としては無骨さなどはなく、洗練されたセンスのよさが光っている。湯浅の処女作としての歴史的な意味だけでなく、今日でも、ピアノ曲のレパートリーとして充分魅力的な作品である。
第一曲は、変ロ長調、Largo decisoで、終始ゆったりとした曲想。左手の低音のモチーフに、右手が和音で応答を繰り返していく。七の和音や九の和音の響きが豊かな表情をつけ、決して甘ったるくなりすぎない。時折現われる復調的な響きには不協和な印象はなく、洗練され、かつおだやかな響きに満ちている。第二曲は、変ホ長調で、おどけたような元気のよい序奏で始まると、animatoでおどけたような主題が現われる。中間部は流れるように右手と左手が動き出すが、8分の6拍子の拍節感がしだいに崩されるようなリズム感がおもしろい。最初の主題が戻り、終結部では意外な響きの和音がfffで鳴らされるところもユニークである。全体にフラット系の調特有の、温かみのある響きに包まれた作品だ。
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