不完全観測のケース
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/09 14:11 UTC 版)
「囚人のジレンマ」の記事における「不完全観測のケース」の解説
ここまでは相手の行動を完全に観測できると想定した。現実には「相手に協調してもらったのに裏切られたと誤解する」「裏切られたのに気付かない」というように、他人の行動を不完全にしか観測できないことが多い。このような不完全観測のもとでの無期限繰り返し囚人のジレンマの理論は近年大きく発展している。 不完全観測のケースでは、相手の他のプレイヤーの行動を不完全ながら表すシグナルを観察できるものとし、誰もが観察できるシグナルがある場合を公的不完全観測、各人自分しか見られないシグナルを観察する場合を私的不完全観測という。 公的不完全観測のケースは比較的分析が容易である。完全観測下のトリガー戦略に似た戦略で協調が生まれる。フォーク定理は1994年にきわめて緩い条件のもとで証明された。 一方、私的不完全観測のケースは分析が困難で、いまだ研究途上にある。私的不完全観測では協調を生み出す戦略を見つけること自体が難問で、長い間ゲーム理論の未解決問題として有名であった。この難問に初めて答えが出たのは1997年のことで、きわめて高い精度で人の行動を私的観測できる場合の囚人のジレンマで協調を生み出す戦略が見つかった。また、各期の終わりに集まってコミュニケーションをとれる場合に限っていえば、1998年に一定の緩い条件のもとでフォーク定理が証明された。コミュニケーションを取れない場合については、相手が今までみてきたことを全く気にする必要のないような特殊な均衡をつくる信念不問アプローチが多くの成果を挙げている。2002年には信念不問アプローチにより囚人のジレンマの均衡を簡単につくる方法が発見され、本格研究が進展し始めた。そして2012年、ついに私的不完全観測下のフォーク定理がかなり緩い条件のもとで証明された。
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