不凍性の機構
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/03/11 01:31 UTC 版)
不凍タンパク質の不凍性機構は、吸着‐抑制機構による結晶成長阻止に由来するものとの説が有力である。凍結初期に形成された微小な氷板に不凍タンパク質が吸着されると、熱力学的に氷晶の成長が抑制される。その結果として、六角板形状である氷板はファンデルワールス力による表面の形成の妨害に従い、単独で紡錘形に近い形状となる。 通常の氷の結晶面は、基本面 (0001) およびプリズム面 (1010) を示し、板状の結晶となって成長する。しかしながら、不凍タンパク質 (AFP typeI) が存在する場合、結晶成長は2021面に制限される。この機構はさらに精密に解明され、AFP typeIは水の水素結合に介入して氷晶の成長を阻害していることが明らかとなった。しかしながら、タンパク質の水素結合に関与すると考えられた部分を変異させたものを用いた実験においても、不凍性の低下は測定できなかった。このため、現在では、水素結合への介入は不凍性の主たる作用ではないとの説がある。この機構については、分子動力学法やモンテカルロ法による分子運動シミュレーションを用いた解析が有効ではないかと思われ、分析が進められている。
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