ヴ以外の仮名による [v] の音訳
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/04 05:47 UTC 版)
「ヴ」の記事における「ヴ以外の仮名による [v] の音訳」の解説
英語やフランス語、ドイツ語、ロシア語など、明治期以降の日本語に多くの外来語をもたらした言語は、有声唇摩擦音 [v] の音を音韻体系の中に含んでおり、これらの言語から単語を音訳する際に、日本語に存在しておらず対応するカナをもたない [v] の音をどのように表記するかという問題が生じた。 上記のように、古くはヴを使用する表記は推奨されず、[v] 音にバ行を当てることが一般的であった。以下はそのような音訳表記の一例である。 Liverpool [ˈlɪvəpuːl]: リバプール(英) vacance [vakɑ̃s]: バカンス(仏) Valois [valwa]: バロア(仏) violin [vaɪəˈlɪn]: バイオリン(英) [v] の音に「ヴ」を用いることが多くなった現在では、ヴァカンス、ヴァイオリン、というように、これらの外来語に本来含まれた [v] をヴで表記する例も現れ、日本語においては、ヴとバ行の表記が混在するケースや誤表記を招くケースがままある。 ただし、以上はあくまで表記の問題であり、日本語の音韻としては現在も[b]と[v]の区別は定着していないため、「ヴァ」と書かれていても実際の発音は「バ」になる。このことが上記のような表記のゆれにつながっている。 上で例を挙げなかったドイツ語は、Vの文字を原則として [f] の音で発音するが、フランス語などに由来する借用語では [v] の音になるときもあり、それぞれの例に応じたカタカナの当てはめが行なわれる。一方、語頭のWの文字は [v] の音で発音するが、このような例を音訳する場合、当てはめられる仮名はバ行ではなくワ行(ワ・ウィ・ウェ・ウォ、古くはヰ・ヱ・ヲも)となることが多かった(/u/ に対してはウが使用されることについては変わらない)。 Weimar [ˈvaɪmaʁ]: ワイマル、ワイマール Wagner [ˈvaːgnɐ(ʁ)]: ワグネル、ワーグナー Wien [viːn]: ヰィン、ウィーン Wagen [vaːɡən]: ワーゲン、ヴァーゲン ヴを使用した [v] の表記がひろく定着した結果、ドイツ語の発音を尊重して「ヴァイマル」、「ヴァーグナー」、「ヴィーン」などと表記することも多くなったが、一般には現在でもワ・ウィ・ウ・ウェ・ウォ式の表記が広く用いられている。 ロシア語、ウクライナ語などの в [v] を転記するときも、バ行ではなくワ行を使うことが多かったが、必須ではない。 ワ行の例Москва [masˈkva]: モスクワ(露) Иван [iˈvan]: イワン、イヴァン(露) Владивосток [vlədʲivasˈtok]: ウラジオストク、ウラジオストック(露) バ行の例совет [saˈvʲet]: ソヴィエト(露) Волга [ˈvolga]: ヴォルガ(露)
※この「ヴ以外の仮名による [v] の音訳」の解説は、「ヴ」の解説の一部です。
「ヴ以外の仮名による [v] の音訳」を含む「ヴ」の記事については、「ヴ」の概要を参照ください。
- ヴ以外の仮名による [v] の音訳のページへのリンク