プロリン及びその誘導体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/25 07:59 UTC 版)
「有機分子触媒」の記事における「プロリン及びその誘導体」の解説
1970年代初頭に、プロリンを触媒として不斉ロビンソン環化反応を行う手法が複数のグループから報告されていたが(ヘイオス-パリッシュ反応)、しばらくこの反応の原理が大きく発展することはなかった。 ところが2000年、リスト、バルバス、ラーナーらにより、プロリンによるアルドール反応は非常に一般性の高いものであり、多くの単純なカルボニル化合物の分子間反応に対して適用可能であることが示された。この反応では、単にケトンとアルデヒド、触媒量のプロリンをDMSO中で撹拌するという極めて単純な操作により、高収率・高エナンチオ選択的に目的のアルドール付加体を与える。このことは世界の化学者に大きな衝撃を与え、急速にプロリン触媒の化学が開花することとなった。 プロリン触媒アルドール反応のメカニズムは以下のようであると考えられている。まずプロリンとカルボニル化合物が酸触媒によってイミニウムカチオンを生成し、エナミンへと異性化する。ここにもう一分子のカルボニル化合物が付加するが、この際プロリンのカルボキシル基との間に水素結合を介した環状の遷移状態を経由し、立体選択的に反応が進む。プロリンは付加体と離れ、再び触媒サイクルに戻る。 このエナミン中間体はアルドール反応以外の反応にも有用な中間体となりうる。その後アルドール反応の他にも、マンニッヒ反応、マイケル反応、アルデヒドのα位官能基化など多数の不斉反応へと展開され、プロリン触媒の化学は大きな成果を挙げている。プロリンは極めて安価で毒性もなく、反応にも難しい操作を必要としないため、理想的な触媒のひとつと見なされている。また最近ではプロリンを適当に修飾した誘導体の触媒反応も検討され、さらに応用範囲が広がっている。
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