フレーリッヒの超伝導モデル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/02/04 10:06 UTC 版)
「電荷密度波」の記事における「フレーリッヒの超伝導モデル」の解説
1954年、ヘルベルト・フレーリッヒは電子系と波数ベクトル Q = 2kF のフォノンが相互作用する結果、ある転移温度以下で ±kF にエネルギーギャップが開くという微視的理論を提唱した。それより高温側では擬一次元導体は金属的であり、そのフェルミ面は ±kF においてチェイン軸と直交する平面である。フェルミ面付近の電子は Q = 2kF の「ネスティング」波数を持つフォノンと強くカップルし、電子フォノン相互作用の結果として 2kF モードのフォノンはソフト化する。温度の低下とともに 2kF フォノンモードの振動数は減少していき、最終的にパイエルス転移温度でゼロに達する。フォノンはボゾンであるからこのモードの占有数は巨大なものになり、定常的な周期格子ひずみとして発現する。同時に電子電荷のCDWが形成され、 ±kF にパイエルスギャップが開く。その後の伝導機構は熱励起型であり、凝縮に加わっていない常伝導電子がパイエルスギャップを熱的に越えることで伝導が行われる。 CDWと格子との位置関係は電荷密度変調 ρ0 + ρ1 cos[2kFx - φ] における位相 φ で表されるが、CDW波長が下地の結晶格子とインコメンシュレートな場合(CDW波長が格子定数の整数倍ではない場合)には安定な位置関係というものが存在しない。そこでフレーリッヒはCDWが格子上を自由に動くことができると考えた。のみならず、 運動量空間中でパイエルスギャップがフェルミの海全体とともに変位して波数分布が非対称となるため、dφ / dt に比例する正味の電流が生じるだろうと。しかしながら、以下の節で論じるように、インコメンシュレートなCDWも不純物によってピン止めされるため動くことはできない。また超伝導と異なり、CDWの伝導は常伝導電子との相互作用によって散逸的なものになる。
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