フレーバーテキスト
フレーバーテキストとは、トレーディングカードゲームにおける用語で、カードに書かれたテキストのうちゲームの進行そのものには関係しない、もっぱら雰囲気づくりのために用意されているような文章のことである。
カードゲームのカードにはアイテムの効果、使用法、使用条件といったゲームプレイに関わる情報が主に記載されているが、その他にもアイテムの伝来や伝説、キャラクターの性格や内情、あるいは当該アイテムとは全く関係ない情景などのような、一種の余談が記載されている場合も多い。これらの余談はゲームを進行する上で必要となる場面は全くないが、ゲームの舞台となっている架空の世界の世界観や文化などがうかがい知れる情報源として機能する。フレーバーテキストはいわばカードゲームの世界への没入感や思い入れを高めるための一役買っている。
フレーバーテキスト
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/04/25 08:04 UTC 版)
フレーバーテキストは、ゲームの世界観・テーマといった雰囲気(フレーバー)を表現するための文章を指す用語。ゲームシステムには直接関係しない要素であるが、他のゲームとの差別化やプレイヤーに没入感を与えるのに有益なものであり、作品の評価にも影響を与える。トレーディングカードゲームのほか、ボードゲームなどでも重要視される。
ゲームにおけるフレーバー
キャラクターやアイテムが丸や四角などの記号にすぎなかったとしても、システムやルール(ゲームメカニクス)が構築されていればゲームは成立する[1]。しかし、単なる記号を操作するだけではプレイヤーは早々に飽きを覚え、ゲームの継続が困難となる[1]。このため、プレイヤーの想像力を刺激し、没入感を与えるために、キャラクターやアイテムに設定やイラストを与えるなどしてゲーム全体に固有の雰囲気を付加していく[1]。
ゲームデザインでは、このようなゲームの雰囲気や世界観を醸し出すために作られたイラストや文章をフレーバー(Flavor)と表現する[1][2]。ボードゲーム作家のマイク・セリンカーは、ゲームにはフレーバーが必要であるとし、ルールとフレーバーは「リーズ・ピーナッツバターカップ」のように混ざり合うものだと表現する[3]。時代・ゲームのジャンルによってフレーバーの意味する範囲は異なり、ゲームメカニクス以外の表現要素全てをフレーバーと捉えることもあれば、ロールプレイングゲームにおけるシナリオの肉付け部分を指してフレーバーということもある[1][4]。
トレーディングカードゲームでは、カードのルールや効果を説明と区別するように場所や字体を変えて記載された文章を指してフレーバーテキストということが多く、イラストの説明や世界観に沿った文章が記載される[3][5]。たとえば、『マジック:ザ・ギャザリング』では、カードの上部にイラストを配置し、下部のテキスト欄には、カードの効果を説明するルールテキストと、ルールテキストとは異なる字体によるフレーバーテキストを区分けして記載するという体裁を採る[6]。
コンピュータゲームにもフレーバーテキストの概念はあり、Cygamesシナリオチームの坂本正吾は、ゲーム内のカードやアイテムの性能に関する説明とは別に用意されたテキストがフレーバーテキストであるとし、イラストと一体となってコミック的な面白さを演出する効果もあると説明する[7]。
定着と発展
ボードゲームに用いられるカードなどにルールとは直接関係しない文章を盛り込む文化は、アメリカでウォー・シミュレーションゲームが流行した1970年代には既に存在していた[3]。これがフレーバーとして用語化・定着した時期は定かでないが、日本においても、1980年代後半から1990年代初頭には、安田均や鈴木銀一郎によるゲーム制作の入門書で使用されていることが確認できる[4][8]。また、『マジック:ザ・ギャザリング』のデザインに携わったデイブ・ハウエルは、同作が制作された1993年に自身が「フレーバーテキスト」と呼ぶことを提唱し、定着したと述べる[9]。
安田均によれば、初期のトレーディングカードゲームのフレーバーテキストは世界観に沿った気の利いた警句を記載する程度のものだったが、これに固有のストーリー性を与えるという手法を採ったのは加藤ヒロノリの『モンスター・コレクション』が始まりではないかとしている[5]。1997年に発売した同作品の幾種かのカードには、ゲーム世界中の人物の手記という体裁で数行のフレーバーテキストが記されており、これがプレイヤーの間で話題を集めた結果、2001年に『ドラゴンマガジン』で短編小説の掲載が始まり、2002年から富士見ファンタジア文庫で『ホーリィの手記』としてシリーズ化される[10]。
2020年代の日本では、ゲームレビューの中でフレーバーテキストの巧拙が取り上げられることも珍しくなく、たとえば、フロム・ソフトウェアの作品は、作中のフレーバーテキストから世界観を考察するファンが多いことで知られる[11][12]。
出典
- 1 2 3 4 5 川上ほか 2018, pp. 30–32.
- ↑ ミヤザキ・かく 2025, p. 253.
- 1 2 3 セリンカー 2019, pp. 195–198.
- 1 2 安田 1987, pp. 66–67.
- 1 2 加藤・安田 2002, pp. 374–381.
- ↑ ゲームギャザ編集部 2002, p. 8.
- ↑ “今すぐ使える! Cygames流、シナリオ“じゃない”ゲームテキストでプレイを盛り上げる鉄則”. GAME Watch. インプレス (2019年9月6日). 2026年4月22日閲覧。
- ↑ 鈴木 1991, p. 59.
- ↑ “Contributions” (英語). Dave's Web Site. Dave Howell. 2026年4月22日閲覧。
- ↑ 加藤・安田 2002, pp. 368–373.
- ↑ “『エルデンリング』などの物語や世界観を醸し出す名文の数々。フロム・ソフトウェアのフレーバーテキストは、なぜ優れているのか?”. リアルサウンドテック. blueprint (2022年5月26日). 2026年4月22日閲覧。
- ↑ “ゲームのニッチなところだけ語りたい。“フレーバーテキスト”について。想像力を刺激しゲーム世界に浸らせてくれる言葉。求む名文【神は細部に宿るのか?】”. ファミ通.com. KADOKAWA Game Linkage (2026年1月2日). 2026年4月22日閲覧。
参考文献
- 加藤ヒロノリ; 安田均『ホーリィの手記1 炎のラビリンス』富士見書房、2001年。ISBN 978-4-8291-1422-3。
- 川上大典ほか『ゲームプランとデザインの教科書 ぼくらのゲームの作り方』秀和システム、2018年。 ISBN 978-4-7980-5350-9。
- ゲームギャザ編集部 編『この一冊ですべてがわかる! マジック:ザ・ギャザリング用語辞典 2002年度版』ホビージャパン、2002年。 ISBN 978-4-89425-277-6。
- 鈴木銀一郎『RPGカードゲームの作り方』マイクロデザイン出版局、1991年。 ISBN 978-4-944000-08-1。
- マイク・セリンカー 著、安田均・笠井道子 訳『コボルドのボードゲームデザイン』グループSNE、2019年。 ISBN 978-4-88375-382-6。
- ミヤザキユウ; かく『ボードゲームのアートワーク&デザイン アイデアを形にするための制作ガイド』ビー・エヌ・エヌ、2025年。 ISBN 978-4-8025-1302-9。
- 安田均『トラベラー・ハンドブック SFロールプレイング・ゲーム完全入門書』ホビージャパン、1987年。 ISBN 978-4-938461-28-7。
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