ヒトパピローマウイルスによる不死化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/16 03:51 UTC 版)
「HeLa細胞」の記事における「ヒトパピローマウイルスによる不死化」の解説
HeLa細胞は、ヘンリエッタ・ラックスの子宮頸部の上皮細胞に感染し、癌の原因になったヒトパピローマウイルス18型 (HPV18) の遺伝子の一部(L1、E6、E7を含む領域)が、細胞の染色体に組み込まれたことが、癌化の形質や不死化に関与していると考えられている。マウス由来の細胞などに、HPVのE6、E7遺伝子を遺伝子導入すると、細胞は不死化することが知られている。 HPV18の持つE6およびE7と呼ばれるウイルス初期遺伝子(感染後早い段階で発現する遺伝子群)には、それぞれ宿主細胞の細胞増殖を抑制的に制御するp53タンパク質やRbタンパク質と結合して阻害する働きがある。E6タンパク質はp53と結合してユビキチン化を促進する活性があり、これによって細胞内のp53は分解される。E7タンパク質はRbと結合する活性を持っており、転写因子E2FとRbとの結合を阻害することによって、E2Fが活性化され、細胞周期の停止した状態を解除する。これらの働きによって細胞周期チェックポイントの機構やアポトーシスが回避された結果、HeLa細胞は無限増殖性を持った癌細胞としての性質を持っていると考えられている。 一般に、(L細胞の起源となった例のように)マウスなどの齧歯類由来の細胞は比較的容易に不死化し、通常の培養過程で自発的 (spontaneous) に不死化することもあるが、これに対してヒト細胞は不死化しにくく、HPV E6E7だけでは不死化が起こらないケースも多い。HeLa細胞では、この機構に加えて、他のがん細胞でもしばしば見られるように、テロメラーゼが活性化されており、老化とその結果として起こる細胞死に関係があるとされるテロメアの漸次的短縮を妨げている。これによって、HeLa細胞はヘイフリック限界を回避している。
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