バリー・クーパー版
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「交響曲第10番 (ベートーヴェン)」の記事における「バリー・クーパー版」の解説
1983年、ベートーヴェンの研究をしていたバリー・クーパーは西ベルリンの図書館で、交響曲第10番に関するカール・ホルツの説明に一致するスケッチを発見する。またベートーヴェン自身の筆跡で「第1楽章の終わりの部分」という記述も発見した。さらにその次のページには新しい交響曲についての記述も認められた。1988年、クーパーは交響曲第10番変ホ長調を発表した。完成されたのは第1楽章のみで、350小節相当におよぶベートーヴェンのオリジナル・スケッチが検討の対象とされた。これはロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団によって初演された。クーパーはその後、さらに資料収集と検討を重ねて第2稿を発表した。第2稿はウィン・モリス指揮、ロンドン交響楽団によって初演された。クーパー版第1楽章の第1主題はピアノソナタ第8番『悲愴』の第2楽章に酷似しており、スケッチに残された指示通り木管楽器で奏でられる。その第1主題は展開しつつアンダンテで繰り返し提示されるが、途中からティンパニの連打によってスケルツオの第2主題に変わる。これは2つの旋律が残される一方でそれらの主題が別の楽章ではないと指示があり、その変化する部分のスケッチも残されているためである。最後はもう再度第1主題に戻り曲の終わりを迎える。残されたスケッチに比較的忠実に作曲されており、随所にベートーヴェンらしさは感じられるとされるが、採用したスケッチの選択や曲の展開や構築については意見や評価が分かれている。クーパー補筆版の演奏は複数のレーベルから市販された。また、クーパーはこの曲のために来日し、読売日本交響楽団を指揮して公演を行っている(日本初演)。
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