バックコンバータ、ブーストコンバータ、バックブーストコンバータの安定性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/18 14:24 UTC 版)
「スイッチング電源」の記事における「バックコンバータ、ブーストコンバータ、バックブーストコンバータの安定性」の解説
バックコンバータは、スイッチの状態にかかわらず常時コイルの電流が負荷に流れる。このため、コンデンサを省略しても負荷には電流が連続的に流れるし、スイッチのオンオフタイミングをどの様に変化させても、バックコンバータはその機能を果たす。よって、出力電圧をコンパレータで基準電圧と比較して、コンパレータ出力で直接スイッチを制御しても、バックコンバータは成立する。近年多数流通している低価格帯のLEDドライバICはこの制御方式を採用している。 しかし、ブーストコンバータとバックブーストコンバータは、スイッチの状態によってコイルの電流が負荷に流れる時と流れない時がある。このため、負荷に対して電流を常時供給する場合において、コイルの電流が負荷に流れない時はコンデンサが代わりの役割を担う必要があり、よってコンデンサを省略する事はできない。また、制御信号を決定するには、スイッチのオンオフの一周期が終わって、得られた出力電圧の平均値から判定しなければならない。したがって、バックコンバータの様に前述のコンパレータを用いる簡易的制御は不可能であり、スイッチの制御方式はPWM又はPFMが必須とならざるを得ない。 スイッチのオンオフ時間の比率を時比率という。バックコンバータの入出力電圧比は時比率 D = T o n / T s {\displaystyle D=T_{\mathit {on}}/T_{s}} (Ton:スイッチのオン時間、Ts:スイッチのオンオフ時間、つまりスイッチ制御周期)として V o / V i = D {\displaystyle V_{o}/V_{i}=D} つまり、バックコンバータの入出力電圧比は時比率Dに等しい。この入出力電圧比を時比率Dで微分すると1になり、スイッチのオンオフ時間の変化に対する出力電圧の変化は完全に線形であることがわかる。すなわち、バックコンバータは本質的に安定である。これに対し、ブーストコンバータ、バックブーストコンバータの入出力電圧比は共に V o / V i = 1 / ( 1 − D ) {\displaystyle V_{o}/V_{i}=1/(1-D)} となる。 この入出力電圧比を時比率Dで微分すると 1 / ( 1 − D ) 2 {\displaystyle 1/(1-D)^{2}} になる。スイッチのオン時間 T o n {\displaystyle T_{\mathit {on}}} がオフ時間 T o f f {\displaystyle T_{\mathit {off}}} に比べて長くなり、時比率Dが1に近似する程、計算上では、出力電圧は指数関数的に上昇する。しかし現実の回路がその様に動作する訳ではなく、どこかのタイミングで制御が成立せず、コイルに過大な電流が流れ、回路の破壊等の事故が生じるだろう。 すなわち、ブーストコンバータ、バックブーストコンバータは本質的に不安定である。
※この「バックコンバータ、ブーストコンバータ、バックブーストコンバータの安定性」の解説は、「スイッチング電源」の解説の一部です。
「バックコンバータ、ブーストコンバータ、バックブーストコンバータの安定性」を含む「スイッチング電源」の記事については、「スイッチング電源」の概要を参照ください。
- バックコンバータ、ブーストコンバータ、バックブーストコンバータの安定性のページへのリンク