ハイドロダイナミックエスケープ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/30 21:08 UTC 版)
「大気散逸」の記事における「ハイドロダイナミックエスケープ」の解説
圧力と温度が高い大気では、ハイドロダイナミックエスケープ (英: hydrodynamic escape) と呼ばれる散逸も発生する。この現象はジーンズ散逸の場合とは異なり惑星大気が静水圧平衡になれない状態で発生し、大気が粒子単位ではなく流体として宇宙空間へ流出していく。流体力学的散逸とも呼ばれる。この散逸過程は、一般には極端紫外線放射など介した大量の熱エネルギーが大気に吸収されることで発生する。大気分子が加熱されるにつれて大気は上方へと拡大し、さらに脱出速度に到達するまで加速される。この過程においては、大量の気体が散逸する間に、軽い分子が衝突を介してより重い分子を引きずって散逸しうる。 ハイドロダイナミックエスケープでの大気の散逸率の上限値は、大気上層に与えられるエネルギーによって決まる。これは、流出していく大気は惑星の重力を振り切るためのエネルギーが必要であり、輻射などで大気に与えられるエネルギーの量を超えて散逸することは出来ないことによる。大気上層の加熱源は主に恒星からの遠紫外線や極端紫外線であるため、この波長域での輻射によって与えられるエネルギーで散逸できる量が、ハイドロダイナミックエスケープでの散逸率の上限値となる。 ハイドロダイナミックエスケープは、HD 209458b など、主星に近い軌道を公転するホット・ジュピターのような太陽系外惑星で観測されている。現在の太陽系内の惑星では大気が静水圧平衡を保っており、ハイドロダイナミックエスケープは発生していない。ただし過去には発生していた可能性があり、例えば金星の大気は過去に起きたハイドロダイナミックエスケープによって水を失った可能性が指摘されている。
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