ジェームス山とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 固有名詞の種類 > 建物・施設 > 施設 > 歴史的建造物 > 西洋館 > ジェームス山の意味・解説 

ジェームス山

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/08 06:40 UTC 版)

ジェームス邸外観

ジェームス山(ジェームスやま)は、兵庫県神戸市垂水区青山台・塩屋町付近を指す通称地名である。須磨離宮公園周辺とともに神戸市西部を代表する高級住宅街として名高い。明治時代にかけて移住したアメリカ人やイギリス人の多数の洋館が残ることで知られ、大阪湾明石海峡淡路島)を見下ろす高台に位置する。

ジェームス山開発を行う塩屋土地株式会社は[1]、井植家の資産管理会社でもあり[2][3]、アイジー興産(ジェームス山自動車学院)、淡路フェリーボート洲本ゴルフ倶楽部)、ユーアールエー、ホテルアナガとともにグループを構成する。

歴史

ジェームス山異人街・いかなご釘煮発祥の地碑

1930年昭和5年)、神戸に居住しカメロン商会を経営していたイギリス人貿易商、アーネスト・ウイリアムス・ジェームス(英語: Ernest William James[4])が、当地に自邸を含めてイギリス人のための住宅地を約60棟以上ほど開発した。やがてジェームスの名を取り、この地を「ジェームス山」と称するようになった。

かつては地域住民との交流も盛んであり[注 1]、住民の中には各邸の御用聞きや使用人として働く者も多くいた。

戦時中には敵国資産として接収され、海軍の保養施設となった。また、戦後の一時期多くの建物はGHQのクラブハウスとして用いられた[注 2]

ジェームスの没後は相続税の支払いや老朽化した住宅街管理に難渋したことにより三洋電機創業者である日本人井植歳男に売却、旧邸[注 3]やイギリス人住宅地を所有したことにより、近郊住宅地としてのジェームス山が誕生した[注 4]

その後、1980年代になると北部の開発と共に徐々に建物は日本人向け集合住宅へと建て替わり外国人向け住宅は数を減らしていった。居住する外国人も短期赴任の駐在員が主となり、地域住民とのかかわりも大きく減少した。

その一方で景観や歴史的価値から塩屋地区はブランド化が進み、2020年代から新規クリエイターの参入が増加しているという。

施設・周辺

  • 西洋館近代建築
    • 旧ジェームス邸(望淡閣) 昭和9年(1934年)築[5][6][7]
      井植歳男没後は井植敏(三洋電機元社長)が相続、2003年に三洋電機子会社に売却、2005年から三洋電機所有。同社迎賓館の役割もあった。2012年2月に神戸市の指定有形文化財となった[8]。同年12月からは、三洋電機より借り受けたノバレーゼが運営する婚礼施設兼フレンチレストラン、ジェームス邸としてオープンした[9][10][11]2016年NHKの朝のテレビ小説べっぴんさんのロケ地に使用された[12]
    • 旧ジェームス邸車庫住宅(聖泉館) 昭和9年(1934年)築
    • 旧グッゲンハイム邸[13]明治45年(1912年)築[注 5]
    • 旧ジョネス邸 大正8年(1919年)築
    • 旧後藤邸 明治40年(1907年)築
    • 鄭邸 明治40年(1907年)築
    • 竹内邸 大正5年頃(1916年)築
    • 旧清水邸
    • 岸本・青山・中川邸
    • 柏木邸
    • 四本邸
    • 旧塩屋異人館倶楽部
    • 鐘紡クラブ
  • 井植記念館
  • 神戸ジェームス山[15]
  • イオンジェームス山店[16](旧ジェームス山サティ。塩屋土地が所有[17]
  • ジェームス山天然温泉[18]
  • ジェームス山自動車学院[19]
  • 安養寺
  • 若宮神社
    祭神:顕宗天皇仁賢天皇安閑天皇。6月1日、うどん祭り。7月25日、天神祭。10月10日、秋祭。
  • 西向地蔵
    明治時代から大正時代頃、塩屋の地引網(やんだら)にかかった地蔵。
  • 毘沙門天
  • 山王神社
  • いかなご釘煮発祥碑
  • 塩屋漁港
  • ライオン像
    もともと数種の動物が飼われていたためといわれる、他にタイガー像[注 6]もある。
  • 岩船不動明王[注 6]
  • 高尾稲荷[注 6]

立入禁止区域

塩屋7丁目1番地の大半の街区は「塩屋カントリークラブ」の会員及びその家族以外は立ち入り禁止となっている[注 7]

内部は37戸の住宅とインターナショナルスクール、プール、トレーニングジム、ダンスホールなどである[20]。また入り口前にある御影石のライオン像はしばしばジェームス山のシンボルと呼ばれる[21]

戦後すぐに立入禁止エリアは設けられていたものの、かつては特に規制はなされておらず、花見を楽しむ住民もいたという。

交通

路線バス

以上のバスがジェームス山地区へ乗り入れる。 このほかにジェームス山地区内で平日昼間に限り塩屋北町循環バス(山陽電鉄バス・30系統)が運行されている。

当地を舞台にした作品

その他

  • 塩屋の異人館1989年映画花の降る午後』の撮影場所にもなった。
  • サマセット・モームの短編小説集『コスモポリタンズ』の一小説である「困ったときの友は真の友(A friend in need is a friend indeed)」に、塩屋カントリークラブなど今もジェームス山に残る名門クラブが描かれている。

脚注

注釈

  1. ^ ジェームスが生前、地元小学生をクリスマスに自宅に招いたという話も残る。
  2. ^ ジェームスはカナダへ避難したのち、1948年に帰国、この地を再整備・拡張する計画を立てたものの、1952年に果たすことなく死去している。
  3. ^ 「望淡閣」の名で三洋電機の迎賓館として使用された。
  4. ^ 青山台一丁目には、井植を顕彰する井植記念館が建つ。
  5. ^ のちにグッゲンハイム本人の所有物ではなかったと報じられた[14]
  6. ^ a b c 後述の立入禁止エリア内。
  7. ^ 日本人は立入禁止である、といった言説で書かれることもしばしばあるが、カントリークラブは日本人の入会も可能である。

出典

  1. ^ -Shioya Tochi- ジェームス山
  2. ^ 三洋電機、井植ブランド輝き消ゆ - asahi.com 2007年3月30日
  3. ^ 三洋電機、同族経営の終焉 (3) - ネットIB(データ・マックス 2007年4月26日)
  4. ^ Tamura 2002.
  5. ^ 神戸(昭和9年)▷新築のジェームス邸(現・垂水区塩屋のジェームス山) - ジャパンアーカイブズ 2020年1月27日閲覧。
  6. ^ 塩屋の邸宅文化を伝える旧ジェームス邸 ー 2014年9月号|神戸っ子アーカイブ”. 2018年8月9日閲覧。
  7. ^ 神戸 旧ジェームス邸 | オーダーメイド家具の永田良介商店 -神戸の欧風家具店-
  8. ^ 神戸市指定有形文化財
  9. ^ 神戸・播磨の結婚式場|ジェームス邸モノリス|いつまでも記憶に残る美しいウエディングを
  10. ^ 神戸の旧貿易商邸宅レストラン|ジェームス邸
  11. ^ 文化財の歴史的洋館で結婚式、神戸の旧ジェームス邸が婚礼施設に。 | Narinari.com
  12. ^ 【べっぴんさんロケ地】坂東家お屋敷洋館は「旧ジェームス邸」(神戸市垂水区) | ロケTV
  13. ^ 旧グッゲンハイム邸 | 神戸市塩屋の洋館
  14. ^ 記事
  15. ^ 神戸ジェームス山[リンク切れ]
  16. ^ イオンジェームス山店
  17. ^ 神戸市:ジェームス山サティ
  18. ^ ジェームス山天然温泉 月の湯舟”. ジェームス山天然温泉 月の湯舟. 2025年5月11日閲覧。
  19. ^ ジェームス山自動車学院
  20. ^ 会員と家族以外立ち入り禁止 外国人居住区の「塩屋カントリークラブ」 | M's KOBE - 神戸新聞NEXT”. www.kobe-np.co.jp (2018年9月4日). 2025年5月11日閲覧。
  21. ^ 特集 ー扉 E.W.ジェームス氏が愛した塩屋 | 神戸っ子”. kobecco.hpg.co.jp. 2025年5月11日閲覧。

参考文献

関連項目

外部リンク


ジェームス山 (神戸市垂水区)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/16 15:15 UTC 版)

日本の人名地名一覧」の記事における「ジェームス山 (神戸市垂水区)」の解説

宅地開発行った貿易商アーネスト・ウイリアムス・ジェームスより。

※この「ジェームス山 (神戸市垂水区)」の解説は、「日本の人名地名一覧」の解説の一部です。
「ジェームス山 (神戸市垂水区)」を含む「日本の人名地名一覧」の記事については、「日本の人名地名一覧」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「ジェームス山」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ



固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ジェームス山」の関連用語

ジェームス山のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ジェームス山のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのジェームス山 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの日本の人名地名一覧 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS