シーア派法学の法源
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/31 07:07 UTC 版)
「十二イマーム派」の記事における「シーア派法学の法源」の解説
シーア派法学では、クルアーン、伝承(スンナ)、シーア派法学者の意見の一致(イジュマー)、理性(アクル)の四つを法源と認める。伝承については、預言者とイマームによってなされた発言、行為、暗黙の了解が信頼できる伝承者によって伝えられたものでなければならない。この点で興味深い点は、信頼できるスンナ派の伝承者によるものの方が、邪悪なシーア派の伝承者によるものより優れていると考えられていることである。伝承者の見解はあまり問題視されていない。 イジュマーはそれ自体では法源とはならない。しかし、これによってイマームの考えを知る手段となりうる。十二を数えるイジュマーの機能があると言われるが、最も有力なものは。イマームたちが存命中その近くにいた教友たちの意見の一致である。 四番目の理性の行使は極めてシーア派的である。これは純粋理性ならびに実践理性から引き出される明確な判断を意味している。実践理性の好例としては、公正は正しく、不正は悪であるというような判断である。シーア派の法学原理によれば、「理性の命ずるものは全て宗教の命ずるものである」。したがって、宗教の規則は唯一理性の判定によって判断される。行為とその前提の関係、なんらかの規定と禁止の関係などは、全てシーア派法学の方法上、合理的前提であり、法的規則を見い出す純粋理性に基づく法源である。 シーア派法学上最も基本となる伝承集は通常以下の4つである。 ①کتاب الکافی ابو جعفر محمدبن یعقوب کلینی ②کتاب من لا یحضره الفقیه محمد بن علی بابویه القمی ③تهذیب الاحکام محمد بن حسن الطوسی ④الاستبصار فيما اختلف من الأخبار またこの他に有名なものにビハール・アル=アンワルがなどがある。 以上四つの法源は、一種の論理的思惟の方法(法学用語でイジュティハード)を用いて実践される。シーア派では、このイジュティハードは学者たちに開かれたものである一方、スンナ派では初期の学者に限定されている。したがって全てのシーア派法学者はなんらかの法的判断を下す場合、自らこれらの法源を調査しなければならない。ムジュタヒドが他のムジュタヒドの意見を模倣することは非合法である。
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