サークルズ (ザ・フーの曲)
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「サークルズ」 | |
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ザ・フーの楽曲 | |
収録アルバム | 『トゥーズ・ミッシング』 |
英語名 | Circles |
リリース | ![]() |
録音 | 1966年1月末頃 |
ジャンル | ロック |
時間 | 3分37秒 |
レーベル | リアクション・レコード |
作詞者 | ピート・タウンゼント |
作曲者 | ピート・タウンゼント |
プロデュース | ザ・フー |
「サークルズ」(Circles)は、イングランドのロック・バンドであるザ・フーが1966年のシングルで発表した[1]楽曲である。「インスタント・パーティ」(Instant Party)の曲名でも発表された[2][3]。
解説
作詞・作曲はピート・タウンゼントによる。彼がギターとヴォーカルの多重録音によって制作したデモ[注釈 1]に基づいて録音された。ザ・フーの楽曲の中でジョン・エントウィッスルが金管楽器を演奏した[注釈 2]初めてのものである。
本曲には2つの録音が存在する。
- 1966年1月12日と13日にロンドンのIBCスタジオでシェル・タルミーのプロデュ―スによって録音されたもの[4]。同年3月7日にイギリスでブランズウィック・レコードから発表されたシングル『リーガル・マター』のB面に「インスタント・パーティ」として収録された[3][5]。
- 1966年1月末にロンドンのオリンピック・スタジオでメンバーのプロデュ―スによって録音されたもの[5]。同年3月4日にイギリスでリアクション・レコードから発表された『恋のピンチ・ヒッター』の2種類のシングルのB面に「サークルズ」[1]または「インスタント・パーティ」[2]として収録された[5]。
本ページでは便宜上、前者をブランズウィック版、後者をリアクション版と呼称し、以下、発表に至る経緯を順序に従ってリアクション版から述べる。
リアクション版(「サークルズ」または「インスタント・パーティ」)
1965年12月、タルミーのプロデュースで制作したデビュー・アルバム『マイ・ジェネレーション』がイギリスでブランズウィック・レコードから発表された。1966年1月12日と13日、ザ・フーはシングル『マイ・ジェネレーション』に続く5作目のシングルとして、タルミーのプロデュースで「サークルズ」と「インスタント・パーティ・ミクスチャー」[注釈 3]をレコーディングした[4]。しかし間もなく彼等は印税の取り分を巡ってタルミーと対立し、彼との契約を破棄してブランズウィック・レコードを去り、エージェントのロバート・スティグウッドが設立したリアクション・レコードへ移籍した。彼等は同月末に自分達のプロデュースで「サークルズ」を再録音し[5]、同年2月にピート・タウンゼントのプロデュースで録音した新曲「恋のピンチ・ヒッター」のシングルのB面収録曲に用いることにした。
「インスタント・パーティ」 | |
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ザ・フーの楽曲 | |
英語名 | Instant Party |
リリース | ![]() |
録音 | 1966年1月末頃 |
ジャンル | ロック |
時間 | 3分37秒 |
レーベル | リアクション・レコード |
作詞者 | ピート・タウンゼント |
作曲者 | ピート・タウンゼント |
プロデュース | ザ・フー |
シングル『恋のピンチ・ヒッター』は35,000枚もの予約を受けて、3月4日にリアクション・レコードから発表された[1][6]。「自分がプロデュースした作品の著作権は自分にある」と主張するタルミーがB面に収録された「サークルズ」について何らかの法的な行動を起こす可能性が考慮されて、「サークルズ」を「インスタント・パーティ」に改題した[注釈 4]シングル[2]も同時に発表された[7][注釈 5]。はたしてタルミーは裁判所に「サークルズ」の収録が著作権の侵害に当たると訴えた[注釈 6]。同月8日、裁判所は彼の訴えを認めてシングル『恋のピンチ・ヒッター』発売の差し止めを命ずる判決を下し、2種類のシングル[注釈 5]は発売5日後に店頭から姿を消した。
リアクション版は同年11月にイギリスで発表された5曲入りEP『レディ・ステディ・フー』に「サークルズ」として収録された。アメリカでは解散後の1987年に発表された編集アルバム『トゥーズ・ミッシング』に「サークルズ」として収録されて、アメリカで初めて入手可能になった。
ブランズウィック版(「インスタント・パーティ」)
「インスタント・パーティ」 | |
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ザ・フーの楽曲 | |
収録アルバム | 『ザ・フー・シングス・マイ・ジェネレーション(![]() |
英語名 | Instant Party |
リリース | ![]() |
録音 | 1966年1月12日と13日 |
ジャンル | ロック |
時間 | 3分37秒 |
レーベル | ブランズウィック・レコード |
作詞者 | ピート・タウンゼント |
作曲者 | ピート・タウンゼント |
プロデュース | シェル・タルミー |
タルミーは上記の訴えを起こすと、シングル『恋のピンチ・ヒッター』の売り上げを鈍らせる為に、3月7日にザ・フー側に無断でブランズウィック・レコードからシングル『リーガル・マター』を発表した[3]。A面にはアルバム『マイ・ジェネレーション』の「リーガル・マター」、B面には自分がプロデュースした「サークルズ」を「インスタント・パーティ」と改題して収録した。
ブランズウィック版は、1966年4月、アメリカでデッカ・レコードから発表されたデビュー・アルバム『ザ・フー・シングス・マイ・ジェネレーション』[注釈 7]に「インスタント・パーティ」として収録された。
参加ミュージシャン
- ロジャー・ダルトリー(Roger Daltrey) – リード・ヴォーカル
- ピート・タウンゼント(Pete Townshend) – ギター、ヴォーカル
- ジョン・エントウィッスル(John Entwistle) – ベース・ギター、フレンチ・ホルン、ヴォーカル
- キース・ムーン(Keith Moon) – ドラムス
カヴァー
脚注
注釈
- ^ タウンゼントの編集アルバム『スクープ』(1982年)に収録された。
- ^ 本曲ではフレンチ・ホルンを演奏。
- ^ 「ディオン・アンド・ザ・ベルモンツ風のパロディ曲」で、未発表のままお蔵入りとなり、2002年に発表された『マイ・ジェネレーション』のデラックス・エディションでようやく日の目を見た。
- ^ 内容は同じくリアクション版「サークルズ」である。
- ^ a b Reaction 591001。
- ^ 自分は1966年に録音されたオリジナル(ブランズウィック版)をプロデュースしたのだから著作権は自分にある、という主旨。
- ^ モノラル録音(DL 4664)とステレオ録音(DL 74664)がある。
- ^ プロデューサーはグリン・ジョンズ。ジミー・ペイジがプロデュースしたとする文献があるが、ペイジがプロデュースしたのはデビュー・シングルである。
出典
- ^ a b c “www.thewho.com”. 2025年2月18日閲覧。
- ^ a b c “www.thewho.com”. 2025年1月27日閲覧。
- ^ a b c “www.thewho.com”. 2025年2月18日閲覧。
- ^ a b Neill & Kent (2007), p. 111.
- ^ a b c d Neill & Kent (2007), p. 115.
- ^ “Discogs”. 2025年2月19日閲覧。
- ^ “Discogs”. 2025年2月19日閲覧。
- ^ “Discogs”. 2025年2月16日閲覧。
- ^ “Discogs”. 2025年2月16日閲覧。
引用文献
- Neill, Andy; Kent, Matt (2007). Anyway Anyhow Anywhere: The Complete Chronicle of The Who 1958-1978. London: Virgin Books. ISBN 978-0-7535-1217-3
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