ケカビ類の場合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/02/03 05:41 UTC 版)
ケカビ類は配偶子のう接合によって接合胞子のうを形成することで有性生殖を行う。一部の種では単一株を培養している間にも、培地上でどんどん接合胞子のうを形成するが、単独株ではそれを形成しないものの方が多い。そのような種では、好適な株をその株と触れ合わせることで、接合胞子のうの形成を誘発することができる。このようなものが自家不和合であると言われる。 寒天培地の入ったシャーレの、中央から離れた二点にそれぞれの株を接種すれば、その点を中心に菌糸を伸ばす。そして、両者の菌糸が接触した地点で、両側の菌糸から配偶子のうが形成され、それらの間で接合胞子のうの形成が行われる。この場合、ある株を中心に見れば、その種の他の株は、その株と和合であるかそうでないかの二つに分けられる。そして、その二つのグループに含まれる株においては、同一グループ内では不和合、異なるグループ間では和合である。つまり互いに交配可能な二つの型に分かれ、同一型のもの同士では交配できない。 このことは性別があるかのように見られがちであるが、性別とはまた異なった概念である。性別は、交配にかかわる生殖細胞の性的二形に関する型の違いに基づく区別である。ケカビの場合、配偶子のうには大きさや形の差は無く、性別は存在しない。また、一部のケカビ類では配偶子に大小の差があるので、その場合は大きい方を雌性と見ることもできるが、それと株の型とは対応関係があるとは限らない。つまり、片方からは雌性配偶子のうだけが形成されるとは限らないようである。そのため、この区別を表す用語としては、+-を使っている。 種が異なるものであっても、配偶型が好適であれば、配偶子のう形成が誘発できることが知られている。そのため、複数の種にわたって+-を共通に使える。一般にはヒゲカビで定められた+-を他種にも適用している。この+-の型は単一の対立遺伝子によって支配されていることが知られている。 自家不和合性の種でも、単独株が接合胞子のうを作る場合がある。これには二つの場合がある。一つは接合胞子のうを接合なしで作る場合で、これを疑似接合胞子のう(Azygosporium)という。もう一つは、接合が行われている場合で、これは一つの菌糸体に複数系統の核を含む、いわゆる異核共存体である場合に生じることが知られている。 子のう菌や担子菌でも同様の現象が知られる。ただし、支配する遺伝子は一対ではなく、二対のことが多いようである。
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