キュヴィエの立場
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/10 07:14 UTC 版)
現在ではキュヴィエは進化論に反対した学者、ということで非常に評価が低い。この説の名にしても、揶揄の対象としての意味がある。彼が政治家と結び付いて高い地位を守り続けた点も、後世からは批判の対象とされる面がある。しかし、当時の時点での判断としては、むしろ彼の判断の方が科学的であったとの声もある。 彼の時代、地層の絶対年代は全く不明であったが、現代知られているような数千万年といった単位ではなく、せいぜい数千年のオーダーと考えられていた。この範囲では、明らかに種の不変性が認められるべきなのである。また、彼は地球全体がどうにかなってしまうような大変異を想定していなかった気配もある。例えば大陸一つが埋まるような大洪水であれば、その地層の生物は一掃されるであろうし、その後へはそれ以外の地域から異なった動物が侵入するのは不思議ではない。 彼自身はそのような事件を天変地異とは呼んでおらず、大異変といった表現をしていたらしい。したがって、「激変説」の方が正しい呼称であるとの主張もある。先述のように、彼自身はキリスト教に配慮するような意図は無かった。しかし、当時のそれ以外の人達にとっては、キリスト教の示唆するノアの洪水があったこと、またそれがさらに過去にも繰り返されていた、という考えの方が受け入れやすかった、ということもあるようである。 なお、地質学の進歩により、地層の生成された年代がその想定よりはるかに古いらしいと判断されるようになったからには、この説が力を失ったのもまた当然と言える。
※この「キュヴィエの立場」の解説は、「天変地異説」の解説の一部です。
「キュヴィエの立場」を含む「天変地異説」の記事については、「天変地異説」の概要を参照ください。
- キュヴィエの立場のページへのリンク