オーティス・スパンとは? わかりやすく解説

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オーティス・スパン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/15 16:04 UTC 版)

オーティス・スパン
生誕
死没
ジャンル シカゴ・ブルース[1]
職業
担当楽器
活動期間 1944年1970年
レーベル
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オーティス・スパンOtis Spann1924年もしくは1930年3月21日1970年4月24日米国ミシシッピ州) はアメリカのブルース・ミュージシャンであり、戦後のシカゴ・ブルースの主要ピアニストであるとされている[2][3]マディ・ウォーターズのバンドへの長きに渡る参加で知られている[3][4]

来歴

幼少時

スパンの初期の来歴については、資料によって異なった記載がなされている[2]。彼は1930年にミシシッピ州ジャクソンで生まれたという資料もあるが[4][5] 、研究者のボブ・イーグルとエリック・ルブランは、国勢調査の記録やその他の公式情報に基づいて、1924年にミシシッピ州ベルゾーナ英語版で生まれたと結論付けている[6]

いくつかの情報源によると、スパンの父親はフライデー・フォード(英語: Friday Fordと呼ばれるピアニストであった。彼の母親であるジョセフィン・アービー(英語: Josephine Erbyメンフィス・ミニーベッシー・スミスと共に活動したギタリストであり、彼の継父であるフランク・ヒューストン・スパン(英語: Frank Houston Spannは牧師かつミュージシャンであった。 5人兄弟の1人であるスパンは7歳のときに、父や祖父、リトル・ブラザー・モンゴメリー英語版からの指導を受けてピアノを弾き始めた [7]

ミュージシャンとしての活躍

14歳になった頃には、スパンはジャクソン界隈でバンド活動を始めていた。彼は1946年にシカゴに移り、ビッグ・メイシオ・メリウェザーに指導を受けている。彼はギタリストのモリス・ピジョー(英語: Morris Pejoeと組みソロ活動を行ない、ティック・トック・ラウンジ(英語: Tic Toc Loungeで定期的に演奏した[8]。スパンはその独特のピアノ・スタイルで知られるようになった。彼は1952年後半にウォーターズのバンドに加入、1953年9月24日に彼らとの初のレコーディング・セッションに参加している[9]。彼はウォーターズのバンド在籍中も、 ボ・ディドリーハウリン・ウルフなど他のミュージシャンとの演奏活動や、ソロ・アーティストおよびセッション・プレーヤーとしてもレコーディングを続けた。彼は1968年までウォーターズのバンドに在籍している[10]

スパンのチェス・レコードに残したレコーディングには、自身の名義で1954年にリリースした「イット・マスト・ハヴ・ビーン・ザ・デヴィル(英語: It Must Have Been the Devil) / ファイブ・スポット(英語: Five Spot」があり、これにはB.B.キングジョディ・ウィリアムズ英語版ギタリストとして参加している。また、「ユー・キャント・キャッチ・ミー」のスタジオ版を含むチャック・ベリーの初期のレコードのいくつかにも参加している。1956年には、ビッグ・ウォルター・ホートン英語版ロバート・ロックウッド・ジュニアと共に2つのトラックを録音したがリリースはされなかった[11]。1960年8月23日にニューヨークで、ロックウッド、ボーカリストのセントルイス・ジミー英語版と共に録音したセッションは、同年のアルバム『オーティス・スパン・イズ・ザ・ブルース英語版』および死後の『ウォーキング・ザ・ブルース英語版』として発売された。ストーリーヴィル・レコードにおいては、1963年のコペンハーゲンのセッションが録音された。彼は1964年にウォーターズ、エリック・クラプトンと共にデッカ[12]ジェイムズ・コットンと共にプレスティッジでレコーディングを行なっている。

1966年にABCブルースウェイより発表されたアルバム『The Blues Is Where It's At』には、ウォーターズに加えジョージ・ハーモニカ・スミスサミー・ローホーン英語版らが参加。また1967年の『ザ・ボトム・オブ・ザ・ブルース英語版』では、妻ルシール・スパン英語版をフィーチャーしている[13]。1960年代後半にはその他、バディ・ガイビッグ・ママ・ソーントンピーター・グリーンフリートウッド・マックのアルバムに参加した。1967年にブルース・ギタリスト、サン・ルイス英語版がプロデュースしたライブおよびスタジオでの演奏を収めた『Someday...』は2012年にシルク・シティ・レコード(英語: Silk City Recordsから発売されている。

映像としては、ニューポート・ジャズ・フェスティバル(1960年)、アメリカン・フォーク・ブルース・フェスティバル英語版(1963年)、ブルース・マスターズ(英語: The Blues Masters、1966年)コペンハーゲン・ジャズ・フェスティバル英語版(1968年)での演奏がDVDとして発売されている。

死没

スパンは1970年シカゴにおいて肝臓癌で亡くなった。彼はイリノイ州アルシップ英語版バー・オーク墓地英語版に埋葬された。彼の墓は、キラー・ブルース・ヘッドストーン・プロジェクト(英語: Killer Blues Headstone Projectの代表スティーブ・ソルター(英語: Steve Salterが《ブルース・レビュー(英語: Blues Review》誌に、「このピアノの偉人は、墓標のない墓に眠っています。この悲惨な状況をなんとかしましょう」との手紙を書くまで、ほぼ30年間墓標をもたなかった。その後世界中のブルース愛好家が、墓石を購入するために寄付を送り、1999年6月6日、墓標はプライベート・セレモニーで除幕された。墓石には「オーティスは私たちが今まで聞いた中で最も深いブルースを演奏しました。彼は私たちの心の中で永遠に演奏します」と刻まれている。

遺産

1972年、アナーバー・ブルース・アンド・ジャズ・フェスティバル英語版の会場は「オーティス・スパン・メモリアル・フィールド(英語: Otis Spann Memorial Field」と名付けられた[14]。「ヴィレッジ・ヴォイス」紙の評論家ロバート・クリストガウは同年、スパンを「最も偉大な現代のブルース・ピアニスト」と呼び[15]、1981年には『Christgau's Record Guide: Rock Albums of the Seventies』に掲載された、1950年代と1960年代の音楽の「ベーシック・レコード・ライブラリ」にスパンのコンピレーション・アルバム『ウォーキング・ザ・ブルース』(1972年、バーナビー英語版を選出した[16]

1980年には、ブルースの殿堂入りを果たした[2]

2012年11月13日、スパンと彼の家族が1930年代から40年代にかけて過ごしたミシシッピ州ジャクソンのサウス・ローチ・ストリート(英語: South Roach Street547番地にミシシッピ・ブルース・トレイルの標識が設置された。ここにはいとこでピアニストのリトル・ジョニー・ジョーンズ英語版の名前も併記されている[17]

ディスコグラフィ

リーダー/共同リーダーとして

他のアーティストの作品への参加

チャック・ベリー
フリートウッド・マック
  • ブルーズ・ジャム・イン・シカゴ英語版(ブルーホライゾン、1969年)
バディ・ガイ
  • ア・マン・アンド・ザ・ブルース英語版(ヴァンガード、1968年)
ジョン・リー・フッカー
ハウリン・ウルフ
  • ハウリン・ウルフ (チェス、1962年発売)[18]
  • リアル・フォーク・ブルース英語版(チェス、1956年-1964年録音、1965年発売)
  • モア・リアル・フォーク・ブルース英語版(チェス、1953年-1956年、1967年発売)
ロニー・ジョンスン英語版
  • See Rider (ストーリーヴィル、1964年)
フロイド・ジョーンズ英語版エディー・テイラー英語版
  • Masters of Modern Blues Volume 3(テスタメント、1967年)
マディ・ウォーターズ
  • シングス・ビッグ・ビル英語版(チェス、1960年)
  • マディ・ウォーターズ・アット・ニューポート英語版(チェス、1960年)
  • フォーク・シンガーズ英語版(チェス、1964年)[19]
  • マディ、ブラス・アンド・ザ・ブルース英語版(チェス、1966年)
  • マッド・イン・ユア・イア(英語: Mud in Your Ear(ミューズ、1967年 [1973年])
  • アフター・ザ・レイン(キャデット、1969年)
  • ファーザーズ・アンド・サンズ英語版(チェス、1969年)
ジョニー・シャインズ英語版
  • ラスト・ナイツ・ドリーム英語: Last Night's Dream(ブルーホライゾン、1969年)
スーパー・スーパー・ブルース・バンド(ハウリン・ウルフ、マディ・ウォーターズ、ボ・ディドリー
ジュニア・ウェルズ
  • サウスサイド・ブルース・ジャム(英語: Southside Blues Jamデルマーク、1970年)
サニー・ボーイ・ウィリアムスンII
  • ダウン・アンド・アウト・ブルース英語版(チェス、1959年)[20]
  • リアル・フォーク・ブルース英語版(チェス、1947年-1964年録音、1966年発売)

参考文献

  1. ^ Du Noyer, Paul (2003). The Illustrated Encyclopedia of Music. Fulham, London: Flame Tree Publishing. p. 181. ISBN 1-904041-96-5 
  2. ^ a b c Otis Spann”. The Mississippi Blues Trail. the Mississippi Blues Commission. 2020年12月9日閲覧。
  3. ^ a b Dahl, Bill. “Otis Spann: Biography”. AllMusic.com. 2014年5月29日閲覧。
  4. ^ a b Spann, Otis”. Encyclopedia.com. 2020年12月9日閲覧。
  5. ^ Dicaire, David (1999). Blues Singers: Biographies of 50 Legendary Artists of the Early 20th Century. McFarland. p. 119.
  6. ^ Eagle, Bob; LeBlanc, Eric S. (2013). Blues: A Regional Experience. Santa Barbara, California: Praeger. pp. 195. ISBN 978-0313344237 
  7. ^ Harris, S. (1981). Blues Who's Who. New York: Da Capo Press. pp. 477–479. ISBN 978-0306801556.
  8. ^ Doc Rock. “The 1970s”. The Dead Rock Stars Club. 2015年10月6日閲覧。
  9. ^ Otis Spann”. LivinBlues (1953年9月24日). 2014年2月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年5月29日閲覧。
  10. ^ Russell, Tony (1997). The Blues: From Robert Johnson to Robert Cray. Dubai: Carlton Books. p. 168. ISBN 1-85868-255-X 
  11. ^ Leadbitter, M.; Fancourt, L.; Pelletier, P. (1994). Blues Records 1943–1970, vol. 2. London: Record Information Services.
  12. ^ Roberty, Marc (1993). Eric Clapton: The Complete Recording Sessions 1963–1995. New York: St. Martin’s Press. p. 16.
  13. ^ Doc Rock. “New Entries”. Thedeadrockstarsclub.com. 2014年5月29日閲覧。
  14. ^ Otis Spann Memorial Field – Ann Arbor”. LocalWiki.org (2011年2月18日). 2015年10月6日閲覧。
  15. ^ Christgau, Robert (1972年12月17日). “Gift Albums”. The Village Voice. https://www.robertchristgau.com/xg/news/nd721217.php 2018年3月6日閲覧。 
  16. ^ Christgau, Robert (1981). “Consumer Guide '70s: S”. Christgau's Record Guide: Rock Albums of the Seventies. Ticknor & Fields. ISBN 089919026X. https://www.robertchristgau.com/get_chap.php?k=S&bk=70 2020年12月9日閲覧。 
  17. ^ Otis Spann”. Msbluestrail.org. 2019年6月26日閲覧。
  18. ^ Beebe, Todd (2016年3月4日). “Classic Album: Howlin’ Wolf – Rockin’ Chair”. Blues and Music News. Buddy Guy's Legends. 2020年12月9日閲覧。
  19. ^ Ovadia, Steven (2019年4月1日). “Revisiting Muddy Waters’ ‘Folk Singer’ (1964) | Retrospective Tribute”. Albumism. 2020年12月9日閲覧。
  20. ^ uDiscover Team (2020年5月10日). “Sonny Boy Williamson II - Blues Harmonica”. uDiscover Music. 2020年12月9日閲覧。

外部リンク




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