アーホム文字_(Unicodeのブロック)とは? わかりやすく解説

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アーホム文字 (Unicodeのブロック)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/17 16:05 UTC 版)

アーホム文字 (Unicodeのブロック)
Ahom
範囲 U+11700..U+1174F
(80 個の符号位置)
追加多言語面
用字 アーホム文字
主な言語・文字体系
割当済 65 個の符号位置
未使用 15 個の保留
Unicodeのバージョン履歴
8.0 57 (+57)
11.0 58 (+1)
14.0 65 (+7)
公式ページ
コード表 ∣ ウェブページ
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アーホム文字(アーホムもじ、英語: Ahom)は、Unicodeブロックの一つ。

解説

13世紀から18世紀ごろにかけて、かつて現在のインド北東部のアッサム州にあたる地域に存在していたアーホーム王国の公用語であった、タイ・カダイ語族に属するアーホム語英語版を表記するために用いられたアーホム文字を収録している。アーホム文字は一部の写本では周辺地域で話されたインド・ヨーロッパ語族インド・イラン語派インド語群に属するアッサム語の表記にも用いられた[1]。アーホム語は現在死語となっているが、伝統的な司祭たちの手によって1920年以降アーホム文化の復興が進められており、それに伴ってアーホム語及びアーホム文字の使用が復活しつつある[1]

アーホム文字はブラーフミー文字から派生した所謂ブラーフミー系文字(インド系文字)の一つであり、音素文字のうち子音字単独では暗黙の随伴母音/-a/を伴って発音され、別の母音にする際に母音記号を付加することで発音を切り替えるアブギダに分類される。書字方向ラテン文字などと同様に左から右への横書き(左横書き)である。

現在のアーホム語や一部の写本では単語毎に分かち書きをするが、多くの古典的写本では分かち書きをせずスペースなしで単語が連続している[1]

多くのブラーフミー系文字とは異なり、独立母音字は存在せず、頭子音が存在しないことを表す子音字U+11712 𑜒 AHOM LETTER Aに母音記号を付加することで表す。

加えて、アラビア文字タイ文字などと同様に独自の数字体系(アーホム数字)を有している。

符号位置の順序はおおむね、2011年10月にアッサム州シブサガル県モランで開催されたアーホム語コミュニティのリーダー会議で承認されたアーホム文字の順序に従っている[1]

Unicodeのバージョン8.0において初めて追加された。

収録文字

ラテン文字転写」の列はブラーフミー系文字のラテン文字への翻字方式の一つであるISO 15919(及び一部はIAST)に従う。

コード 文字 文字名(英語) 用例・説明 ラテン文字転写
子音字
U+11700 𑜀 AHOM LETTER KA 子音[k]を表す。 k
U+11701 𑜁 AHOM LETTER KHA 子音[kʰ]を表す。 kh
U+11702 𑜂 AHOM LETTER NGA 子音[ŋ]を表す。
U+11703 𑜃 AHOM LETTER NA 子音[n]を表す。 n
U+11704 𑜄 AHOM LETTER TA 子音[t]を表す。 t
U+11705 𑜅 AHOM LETTER ALTERNATE TA U+11704 𑜄 AHOM LETTER TAの異体字。 t
U+11706 𑜆 AHOM LETTER PA 子音[p]を表す。 p
U+11707 𑜇 AHOM LETTER PHA 子音[pʰ]を表す。 ph
U+11708 𑜈 AHOM LETTER BA 子音[b]を表す。 b
U+11709 𑜉 AHOM LETTER MA 子音[m]を表す。 m
U+1170A 𑜊 AHOM LETTER JA 子音[ɟ]を表す。 j
U+1170B 𑜋 AHOM LETTER CHA 子音[cʰ]を表す。 ch
U+1170C 𑜌 AHOM LETTER THA 子音[tʰ]を表す。 th
U+1170D 𑜍 AHOM LETTER RA 子音[r]を表す。 r
U+1170E 𑜎 AHOM LETTER LA 子音[l]を表す。 l
U+1170F 𑜏 AHOM LETTER SA 子音[s]を表す。 s
U+11710 𑜐 AHOM LETTER NYA 子音[ɲ]を表す。 ñ
U+11711 𑜑 AHOM LETTER HA 子音[h]を表す。 h
U+11712 𑜒 AHOM LETTER A 頭子音が存在しないことを表す。
U+11713 𑜓 AHOM LETTER DA 子音[d]を表す。 d
U+11714 𑜔 AHOM LETTER DHA 子音[dʱ]を表す。 dh
U+11715 𑜕 AHOM LETTER GA 子音[ɡ]を表す。 g
U+11716 𑜖 AHOM LETTER ALTERNATE GA U+11715 𑜕 AHOM LETTER GAの異体字。 g
U+11717 𑜗 AHOM LETTER GHA 子音[ɡʱ]を表す。 gh
U+11718 𑜘 AHOM LETTER BHA 子音[bʱ]を表す。 bh
U+11719 𑜙 AHOM LETTER JHA 子音[ɟʱ]を表す。 jh
U+1171A 𑜚 AHOM LETTER ALTERNATE BA U+11708 𑜈 AHOM LETTER BAの異体字。 b
介音字
U+1171D 𑜝 AHOM CONSONANT SIGN MEDIAL LA 子音クラスタにおける頭子音に後続して現れる[l]を表す。 l
U+1171E 𑜞 AHOM CONSONANT SIGN MEDIAL RA 子音クラスタにおける頭子音に後続して現れる[r]を表す。 r
U+1171F 𑜟 AHOM CONSONANT SIGN MEDIAL LIGATING RA 別の子音字と結合した際に合字を形成する場合の、子音クラスタにおける頭子音に後続して現れる[r]を表す。 r
母音記号
U+11720 𑜠 AHOM VOWEL SIGN A 短母音[a]を表す。 a
U+11721 𑜡 AHOM VOWEL SIGN AA 長母音[aː]を表す。 ā
U+11722 𑜢 AHOM VOWEL SIGN I 短母音[i]を表す。 i
U+11723 𑜣 AHOM VOWEL SIGN II 長母音[iː]を表す。 ī
U+11724 𑜤 AHOM VOWEL SIGN U 短母音[u]を表す。

音節の末尾に使用され、母音の長さまたは母音の質を示すことがある[1]

u
U+11725 𑜥 AHOM VOWEL SIGN UU 長母音[uː]を表す。 ū
U+11726 𑜦 AHOM VOWEL SIGN E 母音[e]を表す。 e
U+11727 𑜧 AHOM VOWEL SIGN AW 二重母音[au̯]を表す。 aw
U+11728 𑜨 AHOM VOWEL SIGN O 母音[o]を表す。 o
U+11729 𑜩 AHOM VOWEL SIGN AI 二重母音[ai̯]を表す。 ai
U+1172A 𑜪 AHOM VOWEL SIGN AM 母音[am]を表す。 am
U+1172B 𑜫 AHOM SIGN KILLER ヴィラーマ。殺母音記号。母音/-a/を発音せず子音のみが読まれることを表す。

伝統的なアーホム語では使用されていないが、現代復興中のアーホム語の表記で用いられている[1]

語尾の母音、母音列、または子音字にこの記号を繰り返すことで、単語を重複させる必要があることを示す[1]

数字
U+11730 𑜰 AHOM DIGIT ZERO 数字の0 0
U+11731 𑜱 AHOM DIGIT ONE 数字の1 1
U+11732 𑜲 AHOM DIGIT TWO 数字の2 2
U+11733 𑜳 AHOM DIGIT THREE 数字の3 3
U+11734 𑜴 AHOM DIGIT FOUR 数字の4 4
U+11735 𑜵 AHOM DIGIT FIVE 数字の5 5
U+11736 𑜶 AHOM DIGIT SIX 数字の6 6
U+11737 𑜷 AHOM DIGIT SEVEN 数字の7 7
U+11738 𑜸 AHOM DIGIT EIGHT 数字の8 8
U+11739 𑜹 AHOM DIGIT NINE 数字の9 9
数値
U+1173A 𑜺 AHOM NUMBER TEN 単位数字の10
U+1173B 𑜻 AHOM NUMBER TWENTY 単位数字の20
約物
U+1173C 𑜼 AHOM SIGN SMALL SECTION 小さな節の終わりを表す記号。 .
U+1173D 𑜽 AHOM SIGN SECTION 大きな節の終わりを表す記号。
U+1173E 𑜾 AHOM SIGN RULAI 段落記号として用いられる[1]
U+1173F 𑜿 AHOM SYMBOL VI 感嘆符U+AA77 ꩷ MYANMAR SYMBOL AITON EXCLAMATIONに対応している[1] !
追加の子音字
U+11740 𑝀 AHOM LETTER CA 子音[c]を表す。

パーリ語の表記に用いられる。

c
U+11741 𑝁 AHOM LETTER TTA 子音[ʈ]を表す。

パーリ語の表記に用いられる。

U+11742 𑝂 AHOM LETTER TTHA 子音[ʈʰ]を表す。

パーリ語の表記に用いられる。

ṭh
U+11743 𑝃 AHOM LETTER DDA 子音[ɖ]を表す。

パーリ語の表記に用いられる。

U+11744 𑝄 AHOM LETTER DDHA 子音[ɖʱ]を表す。

パーリ語の表記に用いられる。

ḍh
U+11745 𑝅 AHOM LETTER NNA 子音[ɳ]を表す。

パーリ語の表記に用いられる。

U+11746 𑝆 AHOM LETTER LLA 子音[ɭ]を表す。

パーリ語の表記に用いられる。

小分類

このブロックの小分類は「子音字」(Consonants)、「介音字」(Medials)、「母音記号」(Vowel signs)、「数字」(Digits)、「数値」(Numbers)、「約物」(Punctuation)、「追加の子音字」(Additional consonants)の7つとなっている[2]

子音字(Consonants

この小分類にはアーホム文字のうち、基本的な子音字が収録されている。

介音字(Medials

この小分類にはアーホム文字のうち、半母音のように機能する、子音連続時に頭子音に後続して用いられる中間音を表す子音記号が収録されている。

母音記号(Vowel signs

この小分類にはアーホム文字のうち、子音字に結合する母音記号が収録されている。

数字(Digits

この小分類にはアーホム文字で用いられる固有の数字が収録されている。

なお、アホーム数字に関する知識は不完全であり、アホーム特有の形が分かっているのは 1、7、8、10 のみである。その他の数字の形はビルマ文字から借用されたものである。6 と 9 および残りの数字、2、3、4、20 は、アホームでそれらの数字を綴った単語に過ぎない[1]

数値(Numbers

この小分類にはアーホム文字のうち、位取り記数法を用いず、単位数字を並べて表現する数値記号(Unicode上では10進法の位取り記数法を用いる"digit"とは区別される)が収録されている。

約物(Punctuation

この小分類にはアーホム文字で用いられる句読点などの約物類が収録されている。

追加の子音字(Additional consonants

この小分類にはアーホム文字のうち、パーリ語の表記に用いられる追加の子音字[3]が収録されている。

文字コード

アーホム文字(Ahom)[1]
Official Unicode Consortium code chart (PDF)
  0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 A B C D E F
U+1170x 𑜀 𑜁 𑜂 𑜃 𑜄 𑜅 𑜆 𑜇 𑜈 𑜉 𑜊 𑜋 𑜌 𑜍 𑜎 𑜏
U+1171x 𑜐 𑜑 𑜒 𑜓 𑜔 𑜕 𑜖 𑜗 𑜘 𑜙 𑜚 𑜝 𑜞 𑜟
U+1172x 𑜠 𑜡 𑜢 𑜣 𑜤 𑜥 𑜦 𑜧 𑜨 𑜩 𑜪 𑜫
U+1173x 𑜰 𑜱 𑜲 𑜳 𑜴 𑜵 𑜶 𑜷 𑜸 𑜹 𑜺 𑜻 𑜼 𑜽 𑜾 𑜿
U+1174x 𑝀 𑝁 𑝂 𑝃 𑝄 𑝅 𑝆
注釈
1.^バージョン17.0時点


履歴

以下の表に挙げられているUnicode関連のドキュメントには、このブロックの特定の文字を定義する目的とプロセスが記録されている。

バージョン コードポイント[a] 文字数 L2 ID ドキュメント
8.0 U+11700..11719,1171D..1172B,11730..1173F 57 L2/12-222 Martin Hosken; Stephen Morey (10 July 2012), Proposal to add the Ahom Script in the SMP (英語)
L2/12-309 Martin Hosken (23 October 2012), Revised Proposal to add the Ahom Script in the SMP (revised; WG2 N4321R) (英語)
11.0 U+1171A 1 L2/15-272 Martin Hosken (26 October 2015), Proposal to add one extra character to the Ahom Block (英語)
14.0 U+11740..11746 7 L2/20-258 Stephen Morey (1 October 2020), Proposal to encode additional signs for the Tai Ahom script (英語)
  1. ^ 提案されたコードポイントと文字の名前は、最終決定と異なる場合がある。

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j Martin Hosken, Stephen Morey (2012年7月10日). “Proposal to add the Ahom Script in the SMP” (英語). Unicode. 2025年9月17日閲覧。
  2. ^ “The Unicode Standard, Version 17.0 - U11700.pdf” (PDF). The Unicode Standard (英語). 2025年9月18日閲覧.
  3. ^ Stephen Morey (2020年10月1日). “Proposal to encode additional signs for the Tai Ahom script” (英語). Unicode. 2025年9月17日閲覧。

関連項目




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