りゅう座イプシロン星
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/08 21:53 UTC 版)
りゅう座ε星 A / B ε Draconis |
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星座 | りゅう座 | |
見かけの等級 (mv) | 3.91 / 6.82[1] | |
位置 元期:J2000.0 |
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赤経 (RA, α) | 19h 48m 10.35080s[2] | |
赤緯 (Dec, δ) | +70° 16′ 04.5492″[2] | |
視線速度 (Rv) | 2.74 km/s[3] | |
固有運動 (μ) | 赤経: 79.31 ミリ秒/年[2] 赤緯: 39.08 ミリ秒/年[2] |
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年周視差 (π) | 22.04 ± 0.37ミリ秒[2] (誤差1.7%) |
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距離 | 148 ± 2 光年[注 1] (45.4 ± 0.8 パーセク[注 1]) |
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絶対等級 (MV) | 0.591[4] | |
りゅう座ε星の位置(丸印)
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物理的性質 | ||
半径 | A: 5.9 R☉[5] | |
質量 | A: 2.0 M☉[6] | |
表面重力 | A: 0.4 G[6][注 2] | |
自転速度 | A: 10 km/s[7] | |
スペクトル分類 | G8 III + F5 III[2] | |
光度 | A: 60.1 L☉[8] | |
表面温度 | A: 4,993 K[6] | |
色指数 (B-V) | 0.888[4] | |
色指数 (U-B) | 0.521[4] | |
金属量[Fe/H] | A: -0.32[3] | |
年齢 | 1.76 ×109 年[3] | |
地球から見た位置 (りゅう座ε星Aとの関係) | ||
元期 | 2012.735 | |
位置角 | 21.2°[9] | |
角距離 | 3.14"[9] | |
他のカタログでの名称 | ||
ティル, りゅう座63番星, BD+69 1070, CCDM J19482+7016AB, HD 188119, HIP 97433, HR 7582, IRAS 19483+7008, IRC +70160, 2MASS J19481035+7016045, SAO 9540 | ||
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りゅう座ε星(りゅうざイプシロンせい、ε Draconis、ε Dra)は、りゅう座にある二重星である。
名称
アメリカのアマチュア博物学者アレンは、りゅう座ε星、りゅう座δ星、りゅう座π星、りゅう座ρ星によって形作られる四角形が、「牡山羊」を意味するアルタイス(Al Tāis)と呼ばれた、と記している[10]。しかし、本来アラビアで"Al Tāis"という語が星の名付けに使われたことはなく、りゅう座ε星自身には、アラビア語で「蛇」を意味するal-tinnīnが記されていた[11]。
この星は、多くの場合バイエル名で呼ばれるが、ティル(Tyl)という固有名も持つ[12]。この名前は、アントニーン・ベチュヴァーシュが用いたことから広まったとされ、その由来は不明である[13]。
中国では、りゅう座ε星は、天廚(拼音: )という星官をりゅう座δ星、りゅう座σ星、りゅう座ρ星、りゅう座64番星、りゅう座π星と共に形成する。りゅう座ε星自身は、天廚三(拼音: )つまり天厨の3番星と呼ばれる[14][15]。
観測
りゅう座ε星は、赤緯が+70度あるため、主に北半球でみられる星で、南緯20度のすぐ北でほぼ地平線付近にみえる。北緯20度から北の地域では、周極星となり、一年中沈まなくなる。視等級が4等なので、大都市のような光害のひどい地域でなければ、肉眼でみることができる。
りゅう座が夜中に正中する北半球の夏が、りゅう座ε星の観測好機だが、周極星なので、広い範囲で季節を問わずみることができる。
星系
りゅう座ε星が二重星であることを最初に記録したのは、シュトルーベであるとされ、19世紀前半から知られていた[16]。明るい方のりゅう座ε星Aは、視等級が3.9、暗い方のりゅう座ε星Bは、視等級が6.8で、両者は見かけ上3.1秒離れている[1][9]。この2つの恒星は、連星である可能性が高いと考えられ、そうだとすれば、りゅう座ε星Aとりゅう座ε星Bの間の実際の距離は、140AU程度となる[17]。
特徴
りゅう座ε星Aは、スペクトル型がG8 IIIの黄色巨星である[2]。質量は太陽の倍程で、半径は巨星なので更に大きい[6][5]。年齢も、太陽よりだいぶ若いとみられる[3]。一方、りゅう座ε星Bのスペクトル型はF5 IIIとされる[2]。
2007年に公表された、ヒッパルコス衛星の改正データによれば、年周視差は22.04ミリ秒で、これに基づいて地球からの距離を計算すると、148光年となる[2]。
脚注
注釈
- ^ a b パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算、光年は1÷年周視差(秒)×3.2615638より計算
- ^ 出典での表記は、
19h 48m 10.35080s, +70° 16′ 04.5492″
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