ゆきてかへらぬ (映画)
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| ゆきてかへらぬ | |
|---|---|
| Yasuko, Songs of Days Past[注 1] | |
| 監督 | 根岸吉太郎 |
| 脚本 | 田中陽造 |
| 製作 | 武部由実子 谷川由希子 佐藤満 |
| 製作総指揮 | 木下直哉 |
| 出演者 | 広瀬すず 木戸大聖 岡田将生 田中俊介 トータス松本 瀧内公美 草刈民代 カトウシンスケ 藤間爽子 柄本佑 |
| 音楽 | 岩代太郎 |
| 主題歌 | キタニタツヤ「ユーモア」 |
| 撮影 | 儀間眞悟 |
| 編集 | 川島章正 |
| 制作会社 | ギークピクチュアズ / ギークサイト |
| 製作会社 | 「ゆきてかへらぬ」製作委員会 |
| 配給 | キノフィルムズ |
| 公開 | |
| 上映時間 | 128分 |
| 製作国 | |
| 言語 | 日本語 |
『ゆきてかへらぬ』(現代仮名遣い:ゆきてかえらぬ)は、2025年2月21日公開の日本の映画[1]。監督は根岸吉太郎、脚本は田中陽造、主演は広瀬すず[2]。
制作経緯
大正から昭和初期を舞台に、駆け出しの女優長谷川泰子、詩人中原中也、文芸評論家小林秀雄という若い男女3人の愛と青春の日々を、実話に基づき描く[2]。田中が40年以上前に書き上げ、多くの映画人から映画化を望まれるも長く実現に至らなかった「幻の脚本」を[3][4]、根岸が『ヴィヨンの妻 〜桜桃とタンポポ〜』以来16年ぶりに監督を務める形で映画化を果たした[4]。
2025年2月5日、オランダのロッテルダム国際映画祭において、「ビッグスクリーンコンペティション部門」の正式出品作品として公開され[5][6]、その後、同年2月21日に日本で公開された[1]。
あらすじ
1924年(大正13年)の京都。まだ芽の出ない無名の女優・長谷川泰子は、のちに不世出の天才詩人と呼ばれることになる学生・中原中也と出会う。泰子は20歳、中也は17歳のときだった。ふたりは惹かれあい、住む場所のない泰子を、中也が下宿先に誘う形で同棲を始めた。どこか虚勢を張り合うふたりだが、相手を尊重できる「気っ風の良さ」は同じだった。中也は詩作に打ち込み、泰子は中也の創作活動を支えるミューズのような存在になる。ときにケンカして仲違いすることはあっても、離れられないふたりだった。
1年後の1925年(大正14年)、ふたりは京都から東京へ移住する。中也は友人の富永太郎の紹介で、のちに日本を代表する文芸評論家となる小林秀雄と出会い、親交を深める。小林は、中也の天才的な詩の才能を見抜き、深い感銘を受けていた。中也もまた、明晰な批評を行う小林から高い評価を受けることを誇りに感じ、互いに深く認め合う仲になった。
ある日、泰子と中也が住む家を小林が訪れた。中也と小林は文学について楽しそうに語り合う。才気あふれるクリエイターたちの楽しげな様子を目の当たりにして、泰子は放置され、取り残されたような気分になった。そんな泰子を落ち着かせるため、中也は小林を誘い、一緒に3人で遊ぶようになる。
やがて、小林の関心は中也の隣にいる泰子にも向けられていき、その魅力に惹かれていく。小林から求愛され、戸惑う泰子。理知的で穏やかな小林と、情熱的でどこか純粋さが残る中也。タイプがまったく異なるふたりの男に愛され、泰子の心は揺れ動く。後戻りのできない、恋愛、友情、芸術、尊敬、執着が複雑に入り混じった三角関係の始まりだった。
時が経つにつれ、3人の関係は次第に歪さを増していく。小林の安定感に次第に惹かれていき、中也の自己中心的で激しすぎる愛に疲弊していった泰子は、ついに中也のもとを去り、小林と同棲を始めた。しかし、泰子と小林の生活も平坦なものではなかった。泰子は次第に精神のバランスを崩し、潔癖症の症状が悪化していった。泰子の潔癖症は執拗な言葉責めを伴うもので、小林は尽くすが耐え切れず、ついに彼女のもとを去った。こうして、ふたりの生活は終わりを告げる。
その後、歳月が経ち、女優としての実績を積み重ねていた泰子は、ある撮影現場で中也と小林に再会する。中也は別の女性と結婚していたが、授かった子を亡くして失意にあり、自身も結核性脳膜炎を患い、衰弱していた。それから間もなく、中也の訃報を受け取った泰子は涙を流す。葬儀の場に現れた泰子は、かつて中也に託された赤い手袋を棺に添え、小林にも別れを告げる。かくて、泰子と中也と小林の「奇妙な三角関係」は、終焉を迎えたのだった。
キャスト
- 長谷川泰子(はせがわ やすこ)
- 演 - 広瀬すず
- 主人公。駆け出しの女優。
- 京都で出会った3歳年下の詩人中原中也と惹かれあう。その後、東京へ移ったふたりの前に文芸評論家小林秀雄が現れ、3人の関係は複雑な三角関係の様相を呈するに至る。
- 中原中也(なかはら ちゅうや)
- 演 - 木戸大聖[1]
- 詩人。天才詩人として、のちに日本文学史に名を遺す。泰子より3歳年下。
- 小林とは互いに認め合う仲だったが、恋人の泰子を小林に奪われてしまう。
- 小林秀雄(こばやし ひでお)
- 演 - 岡田将生[1]
- 文学者。その批評は鋭く、のちに日本を代表する文芸評論家となる。
- 中也とは互いに認め合う仲だったが、中也の恋人の泰子に惹かれ、奪ってしまう。
- 富永太郎(とみなが たろう)
- 演- 田中俊介[7]
- 中也の友人で、詩人にして画家でもある。結核のため、若くして命を落とす。
- 鷹野叔(たかの よし)
- 演 - トータス松本[7]
- バイオリンを弾きながら歌う吟遊詩人。「さすらいの大空詩人」と呼ばれ、各地を行脚した永井叔をモデルとしている[8]。
- 泰子の辛い過去を知る人物である。
- 長谷川イシ(はせがわ イシ)
- 演 - 瀧内公美[7]
- 泰子の母親。幼い泰子を巻き添えに自殺を図ろうとする。
- スター女優
- 演 - 草刈民代[7]
- 泰子が入社した撮影所のスター女優。
- 泰子を「文士の二号」と呼び、侮辱する。
- 辰野(たつの)教授
- 演 - カトウシンスケ[7]
- 東京の大学教授。秀雄の友人。
- 中原孝子(なかはら たかこ)
- 演 - 藤間爽子[7]
- 後年、中也の妻になる人物。
- 勤め人
- 演 - 柄本佑[7]
- 泰子が東京の公園で出会う勤め人。
- 田中の脚本で根岸が新作映画を製作すると聞きつけた柄本が、「通行人Aでもいいから出演したい」と要望を出したところ、「勤め人」として出演が実現した[9]。
スタッフ
- 監督 - 根岸吉太郎
- 脚本 - 田中陽造
- 音楽 - 岩代太郎[10][11]
- 主題歌 - キタニタツヤ「ユーモア」(ソニー・ミュージックエンタテインメント)[12]
- 製作総指揮 - 木下直哉[10][11]
- 製作・企画 - 山田美千代[10][11]
- 製作 - 小佐野保[10][11]
- プロデューサー - 武部由実子、谷川由希子、佐藤満[10][11]
- 音楽プロデューサー - 佐々木次彦[10][11]
- 撮影 - 儀間眞悟[10][11]
- 照明 - 長田達也[10][11]
- 美術 - 原田満生、寒河江陽子[10][11]
- 美術プロデューサー - 堀明元紀[10][11]
- 録音 - 石寺健一[10][11]
- 編集 - 川島章正[10][11]
- 助監督 - 高橋正[10][11]
- キャスティング - 杉山麻衣[10][11]
- ヘア&メイクディレクター - 松浦美穂[10][11]
- 衣裳デザイナー - 大塚満[10][11]
- スタイリスト - 伊賀大介[10][11]
- ヘア - 山本理恵子、成澤雪江[10][11]
- メイク - 中村了太、瀬戸山佳那[10][11]
- VFXスーパーバイザー - オダイッセイ[10][11]
- 配給 - キノフィルムズ[2]
- 制作プロダクション - ギークピクチュアズ / ギークサイト[11]
- 製作 -「ゆきてかへらぬ」製作委員会(木下グループ、パパドゥ音楽出版、ギークピクチュアズ)[11]
脚注
注釈
- ^ 本作品の英題「Yasuko, Songs of Days Past 」は、中原中也の詩集『在りし日の歌』から着想を得て付けられた。「映画『#ゆきてかへらぬ』ティザービジュアル解禁 ┈ Vol.1 ┈」 映画『ゆきてかへらぬ』公式X 2025年2月21日付、2025年7月11日閲覧.
出典
- ^ a b c d “広瀬すず、岡田将生&木戸大聖と三角関係に!主演最新作『ゆきてかへらぬ』2.21公開決定”. シネマトゥデイ. シネマトゥデイ (2024年8月17日). 2025年11月6日閲覧。
- ^ a b c “広瀬すず主演映画『ゆきてかへらぬ』2025年2月公開 監督は根岸吉太郎、脚本は田中陽造”. リアルサウンド映画部. blueprint (2024年6月26日). 2025年11月6日閲覧。
- ^ 香田史生 「『ゆきてかへらぬ』根岸吉太郎監督 撮影までの数年間がもたらしたもの【Director’s Interview Vol.473】」 CINEMORE 2025年2月21日付、2025年7月11日閲覧.
- ^ a b 週刊文春CINEMAオンライン編集部 「《映画「ゆきてかへらぬ」》全シーンがフォトジェニック『ゆきてかへらぬ』が紡ぐ秋冬春夏…駆け出し女優、天才詩人、知的な評論家の青春物語を深掘り」 文春オンライン 2025年2月22日付、2025年7月11日閲覧.
- ^ “「ゆきてかへらぬ」ロッテルダム映画祭で上映、根岸吉太郎「愛と格闘と葛藤を描いた話」”. 映画ナタリー. ナターシャ (2025年2月6日). 2025年11月6日閲覧。
- ^ 「ロッテルダム国際映画祭舞台挨拶レポート」 映画『ゆきてかへらぬ』公式サイト 2025年2月6日付、2025年7月11日閲覧.
- ^ a b c d e f g “「ゆきてかへらぬ」に田中俊介、トータス松本、瀧内公美、草刈民代、柄本佑ら7名出演”. 映画ナタリー. ナターシャ (2024年11月15日). 2025年11月6日閲覧。
- ^ 田中陽造 「自作解題」 『ゆきてかへらぬ -田中陽造自選シナリオ集-』 国書刊行会、2025年、p.397.下段.
- ^ 週刊文春CINEMAオンライン編集部 「《映画『ゆきてかへらぬ』》柄本佑ピンポイント出演に父・柄本明が「佑、どこに出てた?」…公開後だからこそ話せた裏話が続々‼ 《オフィシャルレポート》3月23日(日)公開後トークイベント」 文春オンライン 2025年3月24日付、2025年7月11日閲覧.
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t “ゆきてかへらぬ:作品情報・キャスト・あらすじ・動画”. 映画.com. エイガ・ドット・コム. 2025年11月6日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v “ゆきてかへらぬ - 作品情報・映画レビュー”. キネマ旬報WEB. キネマ旬報社. 2025年11月6日閲覧。
- ^ “キタニタツヤ、新曲「ユーモア」が映画"ゆきてかへらぬ"主題歌に決定”. skream!. 激ロックエンタテインメント (2024年12月6日). 2025年11月6日閲覧。
外部リンク
- 映画『ゆきてかへらぬ』公式サイト
- 映画『ゆきてかへらぬ』公式 (@yk_movie2025) - X
- 映画『ゆきてかへらぬ』公式 (@yukitekaheranu_movie) - Instagram
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