さまざまな痕跡器官
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 03:00 UTC 版)
「痕跡器官 (生物)」の記事における「さまざまな痕跡器官」の解説
痕跡器官は、他の分類群ではよく発達して役に立っている器官が、ある分類群ではどう見ても役立たない状態になったものである。したがって、たいていは役に立つものより大きさでは小さく、形態では単純になっているので、目立たないものも多い。外部形態で確認できるものもあれば、本来は外部形態であったものが、もはや内部形態でしか確認できない、という場合もある。 外部から見える形の例では、先のニシキヘビの後肢の爪が有名である。また、飛行能力を失った昆虫、特に甲虫類では痕跡的な後翅を持つものが見られる。内部構造のみが残った例ではクジラの後肢が、外見上はなくなっているが、内部の骨格では腰骨が確認できる例などがそうである。 内臓器官でも、同様に痕跡的になった器官の例はある。草食性のサルのものよりはるかに短く縮小して先端に虫垂をぶら下げたヒトの盲腸は、身近でよく知られた例である。 また、その種の全個体に出現する訳ではないが、まれに出現する形質が、先祖の形質を暗示するようなものである場合もある。ヒトの場合、有名なのは耳を動かす筋肉がそれで、筋肉そのものは簡単ながら全員に備わっているが、一部のものしかそれを操って耳を動かすことができない。永久歯の正中から数えて8番目の歯(上下の第三大臼歯)は「智歯」あるいは「親知らず」とも呼ばれ、時期的に他の永久歯より遅れて顎の成長が不十分の場合でも無理をして出てくるものであるが、現在では最後までこの歯が出ないヒトもいる。これなど、ヒトの進化における歯の退化傾向の中で、痕跡器官化しつつあると言えるかもしれない。 かつて、ヒトの男性(正しくは哺乳類の雄)の乳首も痕跡器官とされたこともあるが、雄が授乳する哺乳類は過去も現在も存在しないため、明確に否定されている。
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