『陰獣』と久山秀子
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江戸川乱歩の『陰獣』(『新青年』1928年8月増刊号 - 10月号)には、主人公の探偵小説家・寒川が、次のように語るくだりがある。 僕は或る人物を思い出さないではいられなかった。ほかでもない、女流探偵小説家平山日出子だ。世間ではあれを女だと思っている。作家や記者仲間でも、女だと信じている人が多い。日出子のうちへは毎日のように愛読者の青年からのラブ・レターが舞い込むそうだ。ところがほんとうは彼は男なんだよ。しかも、れっきとした政府のお役人なんだよ。 — 江戸川乱歩、『陰獣』 「平山日出子」はこの箇所にしか登場しないが、この、性別をいつわって作品を発表している作家の存在が、犯人の正体に関する重要なヒントとなっている。 のちに久山は、『新青年』1931年2月増刊号に発表したエッセイ『丹那盆地の断層』の中で、乱歩に対して冗談まじりの抗議をしている。 (略)あたしが大の男であるなンてことを幻想する者があるから困っちゃう。しかしあれは江戸川乱歩が良くない。「平山日出子はれっきとした政府のお役人である」なアンて与太を飛ばすもンだから、つい実在のあたしとコンガラカッちゃったんだわ。それよかね、乱歩こそ、ほんとうは江川乱助っていうの。スラリとした、細面の、チャプリン髭を生やした、トッテモいい男よ。 — 久山秀子、『丹那盆地の断層』
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