「シエラクラブ対モートン事件」判決
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/14 06:05 UTC 版)
「自然の権利」の記事における「「シエラクラブ対モートン事件」判決」の解説
「シエラクラブ対モートン事件(en:Sierra Club v. Morton)」は、アメリカ合衆国で1965年に提訴された自然保護裁判。自然保護団体のシエラクラブが、ウォルト・ディズニー社によるミネラルキング渓谷の開発計画について、開発許可の無効確認を求めて、ロジャース・モートン内務長官を訴えたもの。二審判決までは、原告シエラクラブには何の法的権利侵害も生じることがないとして、訴訟要件である原告適格が欠けることを理由に却下判決が下された。 本件訴訟の最高裁判決は1972年に出された。最高裁判決においても、大多数の裁判官は原告適格が欠けると判断し、結論は却下判決となったが、注目すべきは担当裁判官の一人のウィリアム・ダグラス判事(William O. Douglas)が原告適格を認めるべきだとする少数意見を採ったことである。ダグラス判事は判決に付した反対意見の中で、前述のクリストファー・ストーンの論文を随所に引用した上で、「この裁判の原告は、(自然保護団体の)シエラクラブではなく、(開発されようとしている)ミネラルキング渓谷自身であるべきだった」と述べた。なお、本事件は法的には原告敗訴に終わったものの、訴訟の長期化によるコスト増大から開発計画が中止されたため、原告にとっては事実上の勝訴であったともいえる。 自然の権利論を支持する論者は、ダグラス判事が『樹木の当事者適格』の発想を取り入れたことについて、原告の一員ではない中立な法的判断者として人間以外の存在の法的資格に言及したこともので、「自然の権利」思想上で大きな出来事であると考えている。
※この「「シエラクラブ対モートン事件」判決」の解説は、「自然の権利」の解説の一部です。
「「シエラクラブ対モートン事件」判決」を含む「自然の権利」の記事については、「自然の権利」の概要を参照ください。
- 「シエラクラブ対モートン事件」判決のページへのリンク