ICE 運行形態

ICE

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/14 02:05 UTC 版)

運行形態

ICE路線網 赤:NBS (300 km/h)、黄:NBS (250 km/h)、青:ABS (200 - 230 km/h)
運行頻度と最高速度

それまでのインターシティ (IC) の基本方針、すなわち2時間間隔の運転、1等車・2等車・食堂車の連結、主要駅での同一ホーム接続などを受け継ぎつつ、さらなるスピードアップを追求した。

運行路線はNBS(Neubaustrecke、高速新線)の有無とは関係なく、またNBSもICE専用の線路とは限らない。また従来のインターシティ・ユーロシティ (EC) も引き続き運行されており、ICEはこれらを完全に置き換えるものではない。このような点において新幹線やTGVなどとは異なる。

毎時a分、b分発というパターンダイヤで、日本でかつて運行されていたエル特急と似たような運行形態である。各系統とも1 - 2時間に1本程度の運行。主要区間では複数の系統が合わさって、最大で毎時3 - 4本程度になる。ドイツでは全国に都市が分散しているので、直通列車だけだと本数が少なくなってしまうが、ターミナル駅での乗り換え時間を短くするダイヤの工夫により、乗り換える場合も含めれば国内の中都市同士で毎時1 - 2本の乗車機会があるよう配慮されている。原則的に追い抜きはなく、各列車の停車駅の数やスピードに大きな差はないが、主にビジネス客向けに、停車駅を絞ったICEスプリンター (ICE Sprinter) という速達列車が一部路線で運転されている(後述)。また、かつての夜行列車シティナイトライン廃止の代替として設定されている、表定速度の遅い夜行ICEもある。

最高速度は、NBSではジークブルク/ボン - フランクフルト空港遠距離駅(ケルン - フランクフルト空港)で300 km/h、ヴュルツブルク - ハノーファー、マンハイム - シュトゥットガルト、ヴォルフスブルク - ベルリン、バーデン=バーデン - オッフェンブルクで250 km/h。在来線を改良したABS(Ausbaustrecke、改良路線)では、ケルン - デューレンで250 km/h、ハンブルク - ベルリンで230 km/h、その他の路線では160 - 200 km/h程度。

フランクフルト空港駅を発着する一部のICEに対しては、ルフトハンザドイツ航空の便名を付け、座席の一部を航空便として提供することで、航空と鉄道との連携輸送を行っている。かつてはルフトハンザ・エアポート・エクスプレスという専用の列車で提供されていたものであるが、現在はAIRailというサービス名で、定期のICEの一部の座席を買い上げる形に変更されている。

ICEスプリンター

ICEスプリンターは、ドイツの大都市間を移動するビジネス客向けに、停車駅を最小限に絞り、通常のICEよりも所要時間を短縮した列車である。

ビジネス客がターゲットであるため、当初は平日の朝と夕方に設定され、土曜・休日は運休であった。また、一般のICEと異なり、乗車には予約が必須であったほか、運賃・料金のほかに追加料金(1等16ユーロ・2等11ユーロ)が必要で、1等旅客には無料の食事サービスが提供された。しかし、2015年12月13日のダイヤ改正から運行区間を大幅に拡大し、土曜・休日も運行、予約不要・追加料金不要と、停車駅以外は一般のICEと同じになっている[10]

1992年5月に「イーザル・スプリンター」 (Isar Sprinter) の名称で、フランクフルト・アム・マインとミュンヘンの間を、途中マンハイムのみの停車で運転を開始した。

2008年12月時点では、ケルン - ハンブルク間に1往復、ベルリン - フランクフルト・アム・マイン間に2往復が設定されていた。

2015年12月現在、次の10区間に設定されている[11]

  • フランクフルト - ベルリン
  • フランクフルト - ハノーファー
  • フランクフルト - ハンブルク
  • フランクフルト - ケルン
  • フランクフルト - デュッセルドルフ
  • フランクフルト - シュトゥットガルト
  • ケルン - ハンブルク
  • デュッセルドルフ - ハンブルク
  • デュースブルク - ハンブルク
  • エッセン - ハンブルク

国際列車

国際列車としては、オランダのアムステルダム、ベルギーのブリュッセル、フランスのパリ、スイスのチューリッヒ・インターラーケン、オーストリアのウィーンまで直通する。直通先のいずれの国においてもICEの種別名で運転される。過去にはオーストリアのインスブルック、デンマークのコペンハーゲン・オーフスへの直通もあった。

スイス

1992年9月より、ハンブルクとフランクフルト・アム・マインを結ぶ系統の一部を、バーゼル経由でチューリッヒまで延長したのが最初で、これはICEとしては最初のドイツ国外への進出となった。スイス直通に際しては、ICE1の19編成に対して、集電装置や保安装置などをスイス国内対応とする改造が行われている。

また、1999年5月より、シュトゥットガルトとチューリッヒを結ぶ系統にも投入された。こちらは振子式ICE-T(415形・5両編成)が投入されたが、スイス直通対応用として5編成が用意されている。この系統はのちに、7両編成のICE-T(411形)に置き換えられている。411系の投入に際しては、415系の先頭車(スイス直通対応)と、411形の先頭車(スイス直通非対応)を、それぞれ交換する手法が採られている。その後、この系統はICに格下げされた。

これとは別に、振り子式気動車であるICE-TD(605形・4両編成)が、2001年6月より、ミュンヘンとチューリッヒを結ぶ系統(アレガウ線)に投入されたが、不具合が頻発したため、2003年12月に運用を終了した。

2017年12月現在、ドイツ国内からバーゼルを経由してチューリッヒまでを結ぶ系統が1日6往復、ドイツ国内からバーゼル・ベルンを経由してインターラーケンまでを結ぶ系統が1日3往復、それぞれ設定されている。

オーストリア

1998年5月より、ハンブルクとウィーンを結ぶ系統にICE1が投入された。オーストリア直通に際しては、10編成のICE1が、保安装置などの対応改造を行った。

2006年より、ドイツ鉄道所有のICE-T(411形)3編成がオーストリア連邦鉄道 (ÖBB) に譲渡されて同社の4011形となった。この3編成と、ドイツ鉄道のICE-T(411形)8編成を使用して、2007年12月より、フランクフルト・アム・マインとウィーンを結ぶ系統に、2時間間隔で投入されている。

2017年12月現在、ドイツ国内からパッサウを経由してウィーンまでを結ぶ系統が1日6往復設定されている。ミュンヘンとウィーンを結ぶ系統はÖBBが運行するレイルジェットに置き換えられている。

オランダ

2000年11月より、ケルンからアムステルダムまでを結ぶ系統に、"ICE International"の名称で、オランダ・ベルギー直通対応のICE3M(406形)が投入された。13編成はドイツ鉄道の所有であるが、3編成はオランダ鉄道の所有となっている。

2017年12月現在、ドイツ国内からケルンを経由してアムステルダムまでを結ぶ系統が1日7往復設定されている。

ベルギー

2002年12月より、フランクフルトからブリュッセルまでを結ぶ系統に、"ICE International"の名称で、オランダ・ベルギー直通対応のICE3M(406形)が投入された。当時、既にベルギー国内の高速新線(ブリュッセル - リエージュ間)は開業していたが、当初、ICE3Mは高速新線の走行が許可されず、在来線経由での運転となった。2004年12月よりこの規制は撤廃され、ベルギー国内も高速新線経由となった。2009年6月には、リェージュからドイツ国境までを結ぶ高速新線が開業した。

2017年12月現在、ドイツ国内からケルンを経由してブリュッセルまでを結ぶ系統が1日7往復設定されている。なお、ケルンからブリュッセルまではタリスが同一ルートを走行する。

フランス

2007年6月のLGV東線開業に伴い、フランス直通対応のICE3MF(406形)が、フランクフルト・アム・マインからザールブリュッケンを経由してパリまで直通するようになった。TGVが同一ルートを走行する。

2017年12月現在、ドイツ国内からザールブリュッケンを経由してパリまでを結ぶ系統が3往復(他にTGVが1往復)、ドイツ国内からカールスルーエを経由してパリまでを結ぶ系統が3往復(他にTGVが4往復)、それぞれ設定されている。

デンマーク

車両不具合のため定期運用から離脱していたICE-TD(605形)を使用し、2007年12月より、ハンブルクとコペンハーゲンを結ぶ系統と、ハンブルクとオーフスを結ぶ系統で、それぞれ直通を開始した。前者は「渡り鳥コース」と呼ばれるルートで、途中、鉄道連絡船による航送が行われていた。その後、IC/ECへの格下げにより消滅している。


  1. ^ http://www.jreast.co.jp/development/tech/pdf_1/33-37.pdf
  2. ^ 15 Jahre Hochgeschwindigkeitsverkehr” (ドイツ語). Deutsche Bahn AG. 2007年2月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年2月13日閲覧。
  3. ^ 世界の高速列車のトレンドに発生した"異変" 鉄道見本市「イノトランス」速報レポート 東洋経済オンライン、2016年9月20日。
  4. ^ a b ICx becomes ICE 4 レールウェイ・ガゼット・インターナショナル、2015年12月7日。(英語)
  5. ^ DB unveils ICE4 inter-city train ‘for the gigabit society’ レールウェイ・ガゼット・インターナショナル、2016年9月14日。(英語)
  6. ^ Deutsche Bahn to Recall Part of High-Speed Train Fleet”. Deutsche Welle (2008年10月24日). 2008年11月25日閲覧。
  7. ^ Deutsche Bahn to recall part of ICE train fleet”. The Local - Germany's news in English (2008年10月24日). 2008年11月25日閲覧。
  8. ^ Koschinski 2008, p. 82
  9. ^ Dirk Übbing. “Nach Städten benannte ICE der Deutschen Bahn AG”. Lok Report. 2002年2月11日閲覧。
  10. ^ European Rail Timetable January 2016, p. 3
  11. ^ ICE Sprinter”. ドイツ鉄道. 2016年1月8日閲覧。
  12. ^ INC, SANKEI DIGITAL. “ドイツ高速列車で火災 500人避難、軽傷者も”. 産経フォト. 2020年11月30日閲覧。
  13. ^ ドイツの高速鉄道ICEが満員で走行中に突然煙が出て2車両で火災が発生https://www.nicovideo.jp/watch/sm340103502020年11月30日閲覧 


「ICE」の続きの解説一覧

(ICE から転送)

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(冰、こおり)とは、固体の状態にあるのこと。


注釈

  1. ^ 星野リゾート トマム(北海道占冠村)が厳冬期に設営する。「クールな夢 見られそう」朝日新聞』夕刊2019年1月22日(1面)2019年1月24日閲覧。

出典 

  1. ^ a b Yamane, Ryo; Komatsu, Kazuki; Gouchi, Jun; Uwatoko, Yoshiya; Machida, Shinichi; Hattori, Takanori; Ito, Hayate; Kagi, Hiroyuki (2021-2-18). “Experimental evidence for the existence of a second partially-ordered phase of ice VI”. Nature Communications 12 (1): 1129. doi:10.1038/s41467-021-21351-9. ISSN 2041-1723. 
  2. ^ a b 低温高圧下で新しい氷の相(氷XIX)を発見』(プレスリリース)東京大学大学院理学系研究科・理学部、2021年2月19日https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/info/7238/2021年2月22日閲覧 
  3. ^ Weber, Bart; Nagata, Yuki; Ketzetzi, Stefania; Tang, Fujie; Smit, Wilbert J.; Bakker, Huib J.; Backus, Ellen H. G.; Bonn, Mischa et al. (2018-06-07). “Molecular Insight into the Slipperiness of Ice”. The Journal of Physical Chemistry Letters 9 (11): 2838–2842. doi:10.1021/acs.jpclett.8b01188. https://doi.org/10.1021/acs.jpclett.8b01188. 
  4. ^ チコちゃんに叱られる!「拡大版SP!イチョウ並木・氷の謎・イラスト一挙公開!」”. TVでた蔵 (2019年12月27日). 2019年12月30日閲覧。
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  6. ^ a b 溶けゆく氷を使っていた大正・昭和の冷蔵庫 変わるキッチン(第15回)~冷やす(後篇)”. 2016年2月5日閲覧。
  7. ^ "Unique ice pier provides harbor for ships," Antarctic Sun. 8 January 2006; McMurdo Station, Antarctica.
  8. ^ Makkonen, L. (1994) "Ice and Construction". E & FN Spon, London. ISBN 0-203-62726-1
  9. ^ Stephanie Dalley (1 January 2002). Mari and Karana: Two Old Babylonian Cities. Gorgias Press LLC. p. 91. ISBN 978-1-931956-02-4. https://books.google.com/books?id=_oTh51M5XF4C&pg=PA91 
  10. ^ a b “コンビニ「氷特需」 コーヒー用カップ入り増産、札幌の工場フル稼働”. 北海道新聞 (北海道新聞社). (2014年8月7日). http://www.hokkaido-np.co.jp/news/sapporo/555554.html 
  11. ^ International Equations for the Pressure along the Melting and along the Sublimation Curve of Ordinary Water Substance W. Wagner, A. Saul and A. Pruss (1994), J. Phys. Chem. Ref. Data, 23, 515.
  12. ^ Review of the vapour pressures of ice and supercooled water for atmospheric applications. D. M. Murphy and T. Koop (2005) Quarterly Journal of the Royal Meteorological Society, 131, 1539.
  13. ^ National Snow and Data Ice Center, "The Life of a Glacier"
  14. ^ Chang, Kenneth (2004年12月9日). “Astronomers Contemplate Icy Volcanoes in Far Places”. The New York Times. http://www.nytimes.com/2004/12/09/science/09ice.html 2012年7月30日閲覧。 
  15. ^ Tschauner, O.; Huang, S.; Greenberg, E.; Prakapenka, V. B.; Ma, C.; Rossman, G. R.; Shen, A. H.; Zhang, D. et al. (2018-03-09). “Ice-VII inclusions in diamonds: Evidence for aqueous fluid in Earth’s deep mantle” (英語). Science 359 (6380): 1136–1139. doi:10.1126/science.aao3030. ISSN 0036-8075. PMID 29590042. https://science.sciencemag.org/content/359/6380/1136. 






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スイスの鉄道 ブフリ式駆動方式  ラントヴァッサー橋  ICE  ベルニナ急行  シティナイトライン
ベルギーの鉄道 ベルギー沿岸軌道  パリ・ブリュッセル・アムステルダム間の列車  ICE  ベネルクストレイン  フィーラ
オーストリアの鉄道 オーストリアケーブルカー火災事故  ICE  シティナイトライン  ブレンナーベーストンネル  LZB
ドイツの鉄道車両 ユーロスプリンター  デジロ  ICE  ドイツ鉄道088形  TRAXX
オーストリアの鉄道車両 ユーロスプリンター  デジロ  ICE  デジロML

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