水の青 水の青の概要

水の青

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/12 04:30 UTC 版)

ノルウェーのブリックスダール氷河

青色の色の反射に加え、この水の吸収スペクトルに由来する本質的な色に起因する。

概要

無色の水

水の色は少規模な実験室スケールにおいて無色透明と表現される[1][2]。しかしながら水色といえば淡い青色のことを指す。また、澄んだ透明度の高い海水や湖水など厚い層を成す水は、いずれも青色を呈する。さらに氷河など巨大なも青色を呈し、白色と表現されるもよく観察すれば、わずかに青色を呈する。屋内の空の反射の影響が無い白いタイル張りのプールの水も、薄い青色を呈する。また、風呂桶やバケツに入った水も深さによりわずかに青色を帯びることを観察できる。

硫酸銅メチレンブルーなどを溶解した水は溶質可視光線の吸収に由来する青色を呈するが、純粋な水赤色の波長領域に弱い吸収帯が存在する。すなわち、水自身が本質的にわずかな青色に着色している。

可視光線の波長は約380nm - 約780nmの領域であるため、電磁波の吸収帯のうち物質の色に関連するのはこの波長領域に限られる。

青色の原因

青色を呈するプールの水とバケツの水

レイリー卿は空の青色の原因を、微粒子による光の散乱によるものと考えた。これをレイリー散乱と呼ぶ。また、レイリーはの青も空の青の反射の結果であると考えた。チャンドラセカール・ラマンは水分子自体の光の散乱によるものであると推測し、1922年に論文を発表している[3]。しかしながら、海の青色の原因の一部は空の色の反射も寄与し、レイリー散乱の寄与も完全には否定されていないものの、青色は主に水自身の光の吸収に起因するものであることが、現在では判明している。また、水自身の色の主因がレイリー散乱によるものと仮定すれば、夕焼けのように透過光では赤色に見えるはずであるが、水の透過光は青色である。

液体の水の色は、長いパイプに入れた純水に白色光源を当てることにより観察できる。このとき水はターコイズブルーを呈し、これは補色の関係にある赤色領域に弱い吸収帯が存在することに起因する。可視領域には 760nm(赤色)を中心にやや強い吸収帯、660nm(赤橙色)、605nm(橙色)を中心に弱い吸収帯が存在する。物質の色に深く関連する紫外可視吸収スペクトルは通常、分子軌道電子遷移に由来するが、水分子の電子遷移エネルギーに相当する波長は200nm以下の紫外領域となり、電子遷移が色に寄与することは無い[4]

水の色は電子遷移ではなく、分子内の共有結合の伸縮振動、すなわち赤外吸収帯の倍音振動が可視領域に存在することに起因する[5]


  1. ^ 日本化学会編 『化学便覧 基礎編 改訂4版』 丸善、1993年
  2. ^ 『化学大辞典』 共立出版、1993年
  3. ^ Sir Venkata Raman, The molecular scattering of light Nobel Lecture, December 11, 1930.pdf
  4. ^ 水のスペクトルと水の色.pdf
  5. ^ a b C. L. Broun and S. N. Smirnov, Why is Water Blue? J. Chem. Edu. 1993, 70(8), 612.
  6. ^ Gordon M. Barrow著、藤代 亮一訳  『バーロー物理化学』第5版 東京化学同人、1990年
  7. ^ 綿抜邦彦、久保田昌治 『新しい水の科学と利用技術』 サイエンスフォーラム、1992年
  8. ^ Herzberg, G. Infrared and Raman Spectra; D. Van Nostrand: Princeton, 1945; p. 281.
  9. ^ Curcio, J. A.; Petty, C. C. J. Chem. Phys. 1951, 41, 302.
  10. ^ Marechal, Y. Hydrogen-Bonded Liquids; Dore J. C.; Teixeira, J. Eds.; NATO ASI Series, Vol. 329, 1989, p.237.
  11. ^ KIRIYA CHEMI 海が青く見えるのはなぜですか?


「水の青」の続きの解説一覧



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「水の青」の関連用語

水の青のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



水の青のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの水の青 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS