一般国道
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/22 03:58 UTC 版)
国道の実態
一般国道(以下、特記がない場合は「国道」と称する)は円滑な自動車交通のために存在しているが、実際には車両が通行不能な場所はいくつもある[23]。定義で前述した通り、国道に指定される基準は、単に重要な地同士または重要な地と他の国道とを結ぶ道路ということであって、その道路の規模(幅や車線数、距離、舗装・未舗装の別など)によって決まるわけではない。港湾部などでは国道174号(港国道)のように総延長が数百メートル程度しかない国道もある[24]。港(空港)は、日本の経済活動上、物資輸送など陸上交通を担う上でも最も重要視されており[24]、国土交通省への走行経路届出が必要な大型コンテナトレーラーの届出を簡略化させる意味合いがある。
多くの国道は2車線以上に拡幅されており、6車線以上の非常に交通量の多い国道があったり[1]、国道357号のように道路幅が最大100 m程もある広い国道がある一方で[25]、落石や崖崩れの危険性から大雨のたびに通行止めになる道路や、積雪で冬季通行止めになる国道があったり、車のすれ違いが困難な狭隘道路や車の通行が全く不可能な道[26]、オフロードの国道も存在し[27][28]、さらには、登山道のような国道区間や[1]、海上などの人の通れる道すらない区間がある国道も点在する。このような一般に抱かれているイメージから乖離した「国道らしからぬ」国道を「酷道」と呼ぶ者もおり、ファンの間で名所になることもある[29][30][31]。
車両通行不能区間の存在
国道網の一部には、自動車や自転車の通行もできないような細い道が一般国道の経路に指定されている区間も存在しており、道路幅員が1.5 m未満で徒歩以外での通行ができないような交通路で、地図上において点線で表記される道は、俗に「点線国道」とよばれている[32][33]。道路整備が進んでいない未開通区間で、地形が険しい峠付近に存在するほか、都市部の一部にもみられる[32]。一例として、青森県津軽半島最北端で観光地としても知られる国道339号の「階段国道」も車両が通行できない点線国道である[34][26]。
車両の交通路として供用されていない理由はさまざまで、地形が険しい山地では道路開発が困難のためいまだ開通していなかったり、海上をフェリーで渡る航路が国道に指定されていたりする[23]。また、自然災害や事故などで道路が封鎖されてしまい、そのまま廃道化してしまったケースもある[23]。
海上国道
海上区間のある国道は、俗に「海上国道」と呼ばれており、本州と北海道を結ぶ津軽海峡や東京湾の横断航路、鹿児島 - 那覇間の南西諸島を結ぶ航路などいくつか該当する国道区間が存在する[35]。これは、道路法第2条には「道路とは一般の用に供する道で、トンネル、橋、渡船施設、道路用エレベーター等、道路と一体となってその効用を全うする施設、または工作物および道路の付属物で、当該道路に付属して設けられているものを含んだものとする」という道路法上の道路の定義があり、たとえば海上であっても1本の交通系統として重要な幹線道路と認められれば、フェリーボートの航路も国道になりえると解釈されるからである[35][36]。
また海底に掘られた道路トンネルが国道に指定されているところもあり、本州と九州を結ぶ関門海峡の海底道路トンネルである国道2号の関門トンネルは、車道部とは独立した人道トンネルがあり、両陸地の地上と海底の人道トンネルを結ぶエレベーター自体も、道路法第2条の解釈により「工作物および道路の付属物」に該当する道路施設として橋やトンネル同様に国道の一部として扱われている[37]。
高規格幹線道路
国道30号の海上部分(宇野港 - 高松港)は、バイパス道路である瀬戸中央自動車道の通行料金の高さからJR四国の宇高連絡船廃止後も2008年(平成20年)3月までは3社で合計一日100便以上のフェリー便が運航されていたが、2009年(平成21年)3月から始まった瀬戸中央自動車道の休日割引等の影響で大幅減便となった[38]。まず、2009年4月に津国汽船(本四フェリー)が撤退した[39]。他の2社もいったんは航路廃止を表明しつつも、その後撤回し、ダイヤ調整などを行って存続を図ったが、2012年10月をもって宇高国道フェリーが航路休止した[39]。さらに、四国フェリーも2017年4月現在、1日5便にまで減便したものの業績の悪化が著しく、2019年12月16日より運航を休止した[40]。
他方、建設費の調達や償還などの都合から事実上高速自動車国道と同様の構造規格で建設されているにもかかわらず、一般国道のバイパス(一般国道自動車専用道路)として建設され、高規格幹線道路として機能している路線もある。高速自動車国道の建設にあたっては多大な手続きが必要なため、一般国道バイパス予算で国土交通省が整備し、実質的に高速自動車国道の一部として機能する高速自動車国道に並行する一般国道自動車専用道路もある。
国道は上記の通り国と都道府県・市の二元管理が行われているが、道路は劣化するため舗装などの維持整備に多額の支出が起こり、自治体の支出増大の一因となっている。国の財政もまた悪化しており国道設置は新たな補助金支出につながるため、1993年の指定を最後に新設による都道府県道の国道昇格[注釈 4]が行われなくなっている。
注釈
出典
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