メモリースティック
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/22 02:55 UTC 版)
概要
メモリースティックは1997年7月17日にソニーから発表された。ソニーのVAIOセンター、富士通などによる共同開発で、アイワ(初代法人)、オリンパス、カシオ計算機、三洋電機、シャープ、ソニーが発表時から協賛していた[1]。
発表当時、既にメモリーカード市場ではコンパクトフラッシュ・スマートメディアなどがシェアを争っていたが、PC周辺機器での使用を前提として開発されたそれらの規格と違い、メモリースティックはさまざまなユーザーが利用することを想定した家電寄りのユニバーサルデザイン的な設計思想が特徴である。「メモリースティック」という規格名は、平易な単語で構成することで非英語話者でも理解しやすいよう試みたもの。
メモリースティックには、他のメモリーカード規格と同様にいくつかのバリエーションがある。まず、電気的仕様の違いから従来型「メモリースティック」系と上位規格「メモリースティック PRO」系に大別される。PRO規格は従来型規格の上位互換となっており、PRO機器では従来型メディアが利用できるが、一方で従来型規格の機器ではPROメディアは利用できない。また、メモリースティックPROにはさらなる拡張規格として、転送速度を強化したメモリースティック PRO-HGと、最大記録容量を強化したメモリースティックXCがある。
次に、物理サイズの違いから標準サイズとDuoサイズ、マイクロサイズの3種類がある。小型タイプのメディアは簡素な構造のアダプタを介することで、より大きいメディアに対応した機器で利用することができる。ただ、機器の小型化に伴って標準サイズのメディアはほとんど利用されなくなっており、現在は実質的にDuoサイズとマイクロサイズのみとなっている。
なお、初期のメモリースティックでは、著作権保護技術『MagicGate』に対応する製品と対応しない製品に分かれていたが、現在はMagicGate機能標準搭載で統一されている。
メモリースティック系 | メモリースティックPRO系 | ||||
---|---|---|---|---|---|
拡張規格 | なし | 標準 | HG | XC | XC-HG |
標準サイズ | メモリースティック | メモリースティックPRO | なし | なし | なし |
Duoサイズ | メモリースティックDuo | メモリースティックPRO Duo | メモリースティックPRO-HG Duo | メモリースティックXC Duo | メモリースティックXC-HG Duo |
マイクロサイズ | なし | メモリースティック マイクロ | メモリースティック HG マイクロ | メモリースティックXC マイクロ | メモリースティックXC-HG マイクロ |
MagicGate機能 | 一部対応[2] | 全モデル対応 | |||
最大記録容量 | 128MB×2 | 32GB | 2TB | ||
最大転送速度 | 160Mbps(20MB/s) | 480Mbps(60MB/s) | 160Mbps(20MB/s) | 480Mbps(60MB/s) | |
最低保証速度 | なし | 15Mbps(1.875MB/s) | 120Mbps(15MB/s) | 15Mbps(1.875MB/s) | 120Mbps(15MB/s) |
メモリースティック
概要(メモリースティック)
メモリースティック (Memory Stick) は、メモリースティック開発表明と同時に発表された、最初期の標準規格である。総称としての広義の「メモリースティック」と区別するため「青メモリースティック」「青メモステ」などとも呼ばれる。本項では「従来型メモリースティック」と表記している。
外形寸法は21.5mm×50mm×2.8mmで、長さは単3乾電池と同じに設定されている。ユニバーサルデザイン的な設計思想にもとづき、扱いやすさを考えてこのサイズ・形状にされた。メディア片面の仕上げをザラザラとした手触りにすることで、メディアを見なくても裏表が判断できるような工夫がなされ、また人為的な誤消去を防ぐためミニディスクやフロッピーディスクのような誤消去防止スイッチが設けられている。
接触不良を防ぐため端子数は10ピンにおさえ、指などが直接触れないよう端子をくぼみの奥に配置した。動作電圧は2.7V - 3.6Vとなっている。通信には独自のシリアルプロトコルを採用することで将来的な容量・素子の変更時にも互換性が確保でき、当時スマートメディアなどが頻繁に起こしていた互換性問題にも無縁であるとされた。また、メモリースティックへの静止画、音楽、動画などの記録については個別にアプリケーションフォーマットが規格化されており、メーカーや機器にかかわらず互換性を保つよう務められている。
転送速度は書き込みが最大1.5MB/s、読み出しが最大2.45MB/sである[3]。
外観は、製造メーカーや容量を問わずほとんどの製品が青紫色のカラーリングで統一され、表面にフロッピーディスクと同様のラベル貼付エリアが設けられた。
1998年9月に最初の製品として4MBおよび8MBのメディアが発売され[3]、その後128MBまでの大容量化が行われた。 2000年にソニーが発表したロードマップでは当初少なくとも1GBまでの大容量化が予定されていた[4]が、規格上の問題から製品化できたのは128MBまでにとどまり、256MB以上の大容量メディアは「メモリースティック PRO」という新規格での発売となった。このため256MB相当の代替製品として、128MBメモリを内部に2つ内蔵し、物理的なスイッチで切り替えて使う「メモリースティック(メモリーセレクト機能付)」(Memory Stick Select) が用意された。なおソニーは128MBメモリを4つ内蔵した512MB相当モデルや、メモリとスイッチをさらに増やした大容量モデルも計画していた[5]が、実際の製品化には至っていない。
メモリ容量(メモリースティック)
- 1998年: 4MB
- 1998年: 8MB
- 1999年: 16MB
- 1999年: 32MB
- 1999年: 64MB
- 2001年: 128MB
- 2003年: 128MBx2
マジックゲート メモリースティック
マジックゲート メモリースティック (MagicGate Memory Stick) は、著作権保護が必要なセキュアデータの取り扱いに対応すべく、著作権保護機能MagicGate機能を搭載したメモリースティックである。MGメモリースティック、MGMSなどとも呼ばれる。MagicGate機能を持たない従来型メモリースティックと区別するために、ホワイトのカラーリングで統一された。MagicGate機能の有無以外の仕様は従来型メモリースティックと同一である。
メモリースティック ウォークマンの発売にあわせ、1999年12月に最初の製品として32MBおよび64MBがソニーから発売され、後に128MBが追加された。しかし、MGメモリースティックはMG非対応のメモリースティックに比べて割高で、MG非対応の青紫色メモリースティックも引き続き併売されたことなどから普及が進まず[6]、また市場にこれら2製品が混在することによる混乱の声も聞かれた[7]。
メモリ容量(マジックゲート)
- 1999年: 32MB
- 1999年: 64MB
- 2001年: 128MB
メモリースティック Duo
メモリースティック Duo (Memory Stick Duo) は、2000年4月13日に発表された、小型のメモリースティックである。「メモステDuo」あるいは単に「Duo」などと略される。
携帯電話などの小型機器用途を想定し、外形寸法は20mm×31mm×1.6mmとされた。初期のモデルは裏面に誤消去防止スイッチを搭載していたが、現在はメモリースティックPRO Duoも含めほとんどのモデルで誤消去防止スイッチが省略されている。電気的仕様は標準サイズのメモリースティックと同一であるため、物理サイズを標準サイズに揃えるための簡素な構造のアダプタを使用することにより、標準サイズ用の機器で使用することができるほか、一部にはメモリースティックDuoもアダプターを使わずに挿入できるよう構造が工夫されたスロットもある。
標準サイズのメモリースティック同様、登場初期のモデルはMagicGate機能に対応しておらず、MagicGate対応モデルは2003年2月に「マジックゲート メモリースティック Duo」(MagicGate Memory Stick Duo、MGMS-Duo)として登場した[8]。
メモリースティックDuoの登場当初は、携帯電話やごく小型のデジタルカメラ、携帯音楽プレーヤーなどでのみ使用される特殊規格という位置付けであった。しかし、2005年ごろからは、ある程度の大きさを持つ機器においても、標準サイズをあえてサポートせずにDuoサイズのみ対応とする傾向が強くなり、標準サイズのメディアが販売されなくなった2007年ごろからはDuoサイズが事実上の標準メディアとなっている。
なお、標準サイズのメモリースティックと電気的仕様が同じであることから、Duoサイズも容量は128MBまでにとどまり、256MB以上の大容量メディアは「メモリースティック PRO Duo」という新規格での展開となった。
-
MGメモリースティックDuo
-
誤消去防止スイッチ搭載タイプのメモリースティックDuo裏面
-
メモリースティックDuoアダプター
メモリ容量 (Duo)
- 2002年: 8MB
- 2002年: 16MB
- 2002年: 32MB
- 2003年: 64MB
- 2003年: 128MB
メモリースティック(マジックゲート/高速データ転送対応)
MagicGate機能の有無で複雑化していたラインナップの整理と、登場初期の仕様のままだった転送速度の向上のため、メモリースティックおよびMGメモリースティックは2004年5月に[9]、メモリースティックDuoおよびMGメモリースティックDuoは2003年9月に[10]、順次「メモリースティック(マジックゲート/高速データ転送対応)」へと切り替えられた。
本モデルではMagicGate機能を標準で搭載するとともに、メモリースティックPROと同様のパラレルデータ転送に対応し最大転送速度を160Mbpsへと引き上げた(ただし、これはあくまで理論値であり、実測値ではメモリースティックPROに及んでいない。また機器側もパラレル転送に対応する必要がある)。外形寸法はMGメモリースティックおよび同Duoと同一であり、仕様上の違いは転送速度のみとなっている。
本モデルのカラーリングは紺色で統一された(限定カラーモデルなど一部を除く)。
なお、メモリースティック規格自体に変更は加えられなかったため、一部サードパーティーの製品ではその後もMagicGate非対応のメモリースティックが残っていた時期があった。
- ^ ただし、実際にFAT32を使用しているのは4GB以上のメディアであり、2GB以下のメディアは従来通りFAT16である。このため当時はメモリースティックProを読み込める機器であってもFAT16までしか対応しておらず4GB以上のメディアを正常に扱えない場合もあった。
- ^ この最低速度保証は、後にSDHCメモリーカードでもSDスピードクラスとして取り入れられている。
- ^ 付属の変換アダプタを利用することでmicroSDカードも使用することができる。
- ^ 本機はメモリースティック マイクロの他、microSD/microSDHCカードにも対応する。
- ^ なお、同社のスマートフォンであるXperiaシリーズは、最初からmicroSDのみの対応である。
- ^ “ソニー、デジタルカメラなどAV機器用の新規格ICメモリーカード”. インプレス (1997年7月17日). 2015年4月20日閲覧。
- ^ MGメモリースティックおよびMGメモリースティックDuo、メモリースティック(MG/高速転送対応)が対応
- ^ a b “ソニー、新記憶媒体「メモリースティック」”. インプレス (1998年7月30日). 2015年4月20日閲覧。
- ^ “ソニー、メモリースティックのロードマップを公開”. インプレス (2000年10月25日). 2015年4月20日閲覧。
- ^ a b “News:ソニー、新世代の「メモリースティックPRO」を発表”. ITmedia (2003年1月10日). 2015年4月20日閲覧。
- ^ “「今年こそメモリースティック普及元年」”. ITmedia (2004年5月21日). 2015年4月20日閲覧。
- ^ a b “メモステマイクロ、狙うは海外の小型携帯”. ITmedia (2005年10月19日). 2015年4月20日閲覧。
- ^ “News and Information 内蔵メモリーに音楽CD約11枚分の長時間記録が可能、小型でさらに携帯性が向上した新スタイルネットワークウォークマン 発売”. ソニー (2002年12月10日). 2009年9月6日閲覧。
- ^ “News and Information 高速データ転送に対応し、著作権保護技術「マジックゲート」を標準搭載した新 「メモリースティック」 を発売”. ソニー (2004年4月14日). 2009年9月6日閲覧。
- ^ “News and Information 「メモリースティック デュオ」のラインアップが一新高容量記録・高速データ転送の「メモリースティックPRO デュオ」を新たに発売”. ソニー (2003年8月19日). 2009年9月6日閲覧。
- ^ “News and Information 高画質動画記録に対応可能な、高容量・高速書込みを実現する新世代メモリースティック「メモリースティックPRO(プロ)」発売~記録容量 1GB・512MB・256MBに対応~”. ソニー (2003年1月10日). 2009年9月12日閲覧。
- ^ “元麻布春男の週刊PCホットライン”. インプレス (2005年12月6日). 2009年9月12日閲覧。
- ^ ““とんがった”メディアを目指す「メモリースティックPRO」”. ITmedia (2003年2月7日). 2015年4月20日閲覧。
- ^ “サンディスクとソニー、携帯電話向けにより小型化したIC記録メディア「メモリースティック マイクロ」(M2)フォーマットを開発”. ソニー (2005年9月30日). 2015年4月20日閲覧。
- ^ “ITmediaニュース:Duoより小さい「メモリースティックマイクロ」”. ITmedia (2005年9月30日). 2015年4月20日閲覧。
- ^ “サンディスクとソニー、高速転送、高速書き込みを実現する「メモリースティックPRO-HG」を開発”. ソニー (2006年12月11日). 2009年8月6日閲覧。
- ^ “転送速度は「PRO」の3倍 「メモリースティックPRO-HG」開発”. ITmedia (2006年12月11日). 2015年4月20日閲覧。
- ^ “【新製品レビュー】ソニー「メモリースティックPRO-HGデュオ」+ExpressCardアダプター”. インプレス (2007年7月11日). 2010年12月29日閲覧。
- ^ “ソニー、32GBのメモリースティックPRO-HGデュオHXを国内発売”. インプレス (2009年7月16日). 2015年4月20日閲覧。
- ^ a b “サンディスクとソニー、「メモリースティックPRO」と「メモリースティック マイクロ」の拡張フォーマットを共同開発”. ソニー (2009年1月8日). 2009年8月6日閲覧。
- ^ “ソニー、最大2TBの「メモリースティックXC」仕様を公開”. インプレス (2009年8月6日). 2009年8月6日閲覧。
- ^ a b ““ミラーリングメモリースティック”「PXシリーズ」発売のご案内”. ソニー (2012年10月31日). 2015年4月20日閲覧。
- ^ “ソニー、“メモリースティックROM”を発表”. アスキー (2001年5月28日). 2015年4月20日閲覧。
- ^ “ソニー、“メモリースティック Duo”を7月に発売――“メモリースティック-R(仮称)”も開発中”. アスキー (2002年6月3日). 2015年4月20日閲覧。
- ^ “フルハイビジョンの動画撮影を実現 デジタルスチルカメラ “サイバーショット”|プレスリリース|ソニー”. ソニー (2010年1月10日). 2010年1月28日閲覧。
- ^ “静止画ファイルフォーマット | メモリースティック”. ソニー. 2010年7月15日閲覧。
- ^ “位置情報ファイルフォーマット | メモリースティック”. ソニー. 2010年7月15日閲覧。
- ^ “SD連合がシェア65%で圧勝、メモリーカード規格対決、買い得なのは?”. BCN (2005年10月3日). 2015年4月20日閲覧。
- ^ “ソニーがSDカードを発売へ”. ITmedia (2010年1月7日). 2015年4月20日閲覧。
- ^ “使用できるメディアの種類 | PlayStation®Vita ユーザーズガイド”. manuals.playstation.net. 2022年7月13日閲覧。
- ^ “本物そっくり 偽造メモリースティックに注意”. ITmedia (2006年7月16日). 2015年4月20日閲覧。
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