ドナルド・クヌース Computer Musings

ドナルド・クヌース

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/12 15:15 UTC 版)

Computer Musings

名誉教授となった今も、年に数回スタンフォード大学で非公式の講義を行っている。彼はこれを Computer Musings と呼ぶ。また、オックスフォード大学コンピュータ研究所の客員教授であり、同大学モードリン・カレッジの名誉フェローでもある[16]

クヌースのユーモア

クヌースはプログラマとしても有名で、専門的ユーモアでも知られている。

クヌース賞金小切手(一部ボカシ入)
  • 彼は自身の著作の間違いやタイポに対して 2.56ドルを支払うとしている。この金額は256ペニーが1(16進数)ドルになるということで決められた。また、「価値ある示唆」に対しては0.32ドルを支払う。なお、3:16 Bible Texts Illuminated の間違いに関しては 3.16ドルを支払うことになっている。MITTechnology Review によれば、これらの賞金の小切手は「コンピュータ界の最高の栄誉」だという。ただし2008年、実際の小切手を送ることは止め、架空の銀行「サンセリフ銀行」の預金証明書を送ることにした[17]
  • 彼は自身のソフトウェアに「上記コードのバグに注意; 正しいことは確認したが使ってみたことはない」と警告を入れたことがある[18]
  • Concrete Mathematics の序文より: クヌースが Concrete Mathematics をスタンフォードで最初に教えたとき、彼はその奇妙なタイトルについて「この数学コースは決してソフトではない」という意味であると説明した。実際、誤解した土木工学などの学生が講義室にやってきて、静かに帰っていったという。
  • クヌースは1957年、"Potrzebie System of Weights and Measures"(度量衡のPotrzebieシステム)というタイトルで学内雑誌に科学論文を発表した。その中で長さの基本単位を MAD誌(アメリカのユーモア雑誌)の26号の厚さとし、力の基本単位を "whatmeworry" とした。MAD誌はこの記事を買い取り、1957年6月号 (#33) に掲載した。
  • クヌースの "The Complexity of Songs"(歌の計算複雑性)という論文は計算機科学の学会誌に2回掲載された。
  • The Art of Computer Programming 第3巻の索引には "Royalties, use of, 405" という行がある。しかし405ページを見ても著作権使用料 (Royalty) に関する記述はなく、図2として "organ-pipe arrangement"(オルガン-パイプ配置)の図がある。彼の自宅のパイプオルガンは同書の著作権使用料で購入したのであった[19]
  • TeX のバージョン番号は、3, 3.1, 3.14, … というように円周率 π に近づいている。METAFONTのバージョン番号は同様にネイピア数 e に近づいている。
  • Computers and Typesetting シリーズの全ての付録は、付録を識別する文字から始まるタイトルになっている。
  • TUG 2010 Conference にて、クヌースは XML をベースとした TeX の後継 "iTeX" を発表した。任意の縮尺の無理数単位、3Dプリンティング、アニメーション、ステレオ音声などをサポートするとしている[※ 3][20]
  • クヌースは、お気に入りの Emacs について、ストールマンに提案を行ったことがあるが返事はもらえてないとのことで、伝達手段が電子メールでなかったことが原因かも知れないとされる[21]

受賞歴と栄誉

クヌースの計算機科学への貢献に敬意を表し、1990年、彼は「プログラミング技法の教授; Professor of the Art of Computer Programming」という唯一の称号を与えられた(現在では「名誉教授」に変更されている)。

1992年、クヌースはフランスの科学アカデミーの準会員となった。同年教授職を引退し、The Art of Computer Programming の完成に専念するようになった。2003年、イギリスの王立協会外国人会員に選ばれた。

2009年、アメリカ応用数理学会 (SIAM) の特別フェローに選ばれた[26]Norwegian Academy of Science and Letters の会員でもある[27]


  1. ^ コンピュータ科学者の Arthur Evans に言及するなどジョークを交えながら、
  2. ^ 出版界に当時、新しく導入された電算写植システムについて編集者や印刷業者の使いこなしに問題があったことが遠因だが、クヌースが「電子出版ツールに不満を持」った、というわけではない。
  3. ^ クヌースの許可を得て、録画した動画が River Valley TV で公開されている。
  4. ^ 完全な著作リストは "Books" at Stanford site にある。
  5. ^ 完全なリストは "Books" at Stanford site にある。
  1. ^ ドナルド・アーヴィン・クヌース - 京都賞”. 公益財団法人 稲盛財団. 2021年11月13日閲覧。
  2. ^ Knuth, Don. “Knuth: Frequently Asked Questions”. Don Knuth's home page. Stanford University. 2010年11月2日閲覧。 “How do you pronounce your last name? Ka-NOOTH.”
  3. ^ Donald Knuth's Homepage at Stanford.
  4. ^ The Art of Computer Programming (Stanford University).
  5. ^ Knuth's CV
  6. ^ Dennis Elliott Shasha; Cathy A. Lazere (1998). Out of their minds: the lives and discoveries of 15 great computer scientists. Springer. p. 90. ISBN 978-0-387-98269-4. https://books.google.co.jp/books?id=-0tDZX3z-8UC&pg=PA90 
  7. ^ a b c Thomas Koshy (2004). Discrete mathematics with applications. Academic Press. p. 244. ISBN 978-0-12-421180-3. https://books.google.co.jp/books?id=90KApidK5NwC&pg=PA244&redir_esc=y&hl=ja 2011年7月30日閲覧。 
  8. ^ History of Beta Nu Chapter
  9. ^ Finite Semifields and Projective Planes – Donald Knuth's Ph.D. dissertation
  10. ^ https://amturing.acm.org/award_winners/knuth_1013846.cfm
  11. ^ 原文のput straitは「直す」とか「正す」という意味。
  12. ^ ドナルド・クヌース. “The Art of Computer Programming (TAOCP)”. 2012年5月20日閲覧。
  13. ^ Knuth, Donald (1974). Surreal numbers : how two ex-students turned on to pure mathematics and found total happiness : a mathematical novelette. Addison-Wesley. ISBN 978-0-201-03812-5 
  14. ^ Knuth, Donald (1991). 3:16 : Bible texts illuminated. A-R Eds.. ISBN 978-0-89579-252-5 
  15. ^ Love at First Byte. Stanford Magazine, May/June 2006.
  16. ^ Professor Donald Knuth”. Magdalen College. 2010年12月6日閲覧。
  17. ^ MITTechnology Review"Rewriting the Bible in 0's and 1's"
  18. ^ ドナルド・クヌース. “Knuth: Frequently Asked Questions”. Don Knuth's home page. Stanford University. 2010年11月2日閲覧。
  19. ^ "Pipe Organ" at Stanford site
  20. ^ ドナルド・クヌース (2010). “An Earthshaking Announcement”. TUGboat 31 (2): 121–124. ISSN 0896-3207. http://tug.org/TUGboat/tb31-2/tb98knut.pdf. 
  21. ^ GLYN MOODY 小山祐司監訳『ソースコードの反逆』株式会社アスキー、2002年6月11日、194頁。 
  22. ^ http://www.admin.technion.ac.il/harvey/1995-2.html
  23. ^ http://www.cs.cmu.edu/~katayanagi/
  24. ^ http://www.fbbva.es/TLFU/tlfu/ing/microsites/premios/fronteras/galardonados/2010/informacion.jsp
  25. ^ Andrew Myers (2001年6月1日). “Stanford's Don Knuth, a pioneering hero of computer programming”. Stanford Report. http://news.stanford.edu/news/2011/june/knuth-engineering-hero-060111.html 2011年6月27日閲覧。 
  26. ^ http://fellows.siam.org/index.php?sort=year&value=2009
  27. ^ Gruppe 1: Matematiske fag” (Norwegian). Norwegian Academy of Science and Letters. 2010年10月7日閲覧。
  28. ^ Donald Knuth: 85 - Coping with cancer”. Web of Stories (2006年4月). 2012年5月2日閲覧。
  29. ^ http://www-cs-faculty.stanford.edu/~uno/taocp.html
  30. ^ "Selected Papers" at Stanford site
  31. ^ "Literate Programming"
  32. ^ "Selected Papers on Computer Science"
  33. ^ "Digital Typography"
  34. ^ "Selected Papers on Analysis of Algorithms"
  35. ^ "Selected Papers on Computer Languages"
  36. ^ "Selected Papers on Discrete Mathematics"
  37. ^ "Selected Papers on Design of Algorithms"
  38. ^ "Selected Papers on Fun and Games"
  39. ^ "Companion to the Papers of Donald Knuth"
  40. ^ the book's official homepage






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20世紀の数学者 アンドリュー・ワイルズ  公文公  ドナルド・クヌース  アディ・シャミア  カール・ピアソン
21世紀の数学者 ルネ・トム  アンドリュー・ワイルズ  ドナルド・クヌース  アディ・シャミア  テレンス・タオ
コンピュータ関連人物 エイドリアン・ラモ  ポール・グレアム  ドナルド・クヌース  岩谷宏  谷裕紀彦
アメリカ合衆国の数学者 ニール・スローン  アロンゾ・チャーチ  ドナルド・クヌース  リチャード・ハミング  ジュディー・ホルデナー
ソフトウェア作家 チャールズ・シモニー  ブレンダン・アイク  ドナルド・クヌース  レオナルド・エーデルマン  ケヴィン・マークス
コンピュータに関する人物 ジョン・エッカート  ポール・グレアム  ドナルド・クヌース  ジョン・フォン・ノイマン  エドガー・ダイクストラ
プログラミング言語設計者 ジョン・マッカーシー  ブレンダン・アイク  ドナルド・クヌース  エドガー・ダイクストラ  ロブ・パイク

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