カレー粉 歴史

カレー粉

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/07 16:39 UTC 版)

歴史

カレー粉は18世紀頃にインドからイギリスに導入され[2]、イギリスのクロス・アンド・ブラックウェル社がはじめて開発・商品化した。同社は貴族のパーティーなどの料理を請け負う会社で、植民地インドの料理を作るとき、あらかじめ多種類のスパイスを調合して省力化を図っていた。この混合スパイスを「C&Bカレーパウダー」と名付けて一般向けに販売したところ大評判となり、イギリスの家庭料理のひとつに「カレー」が加えられるほど普及した。1810年にはオックスフォード英語辞典に「カレーパウダー」の語が登場している[3]。なお、カレー粉は多種多品目を誇る当時のクロス・アンド・ブラックウェル社の主力商品ではなかったので、現在は生産されておらずレシピも資料も残っていない。しかしカレー粉は、現在も世界各地で広く使われている。

このカレー粉を使うイギリス式のカレーライス明治時代に日本へ伝わり、国民食といわれるほどの人気料理となった。

日本における歴史

  • 1905年ハチ食品の前身(大和屋)が製造販売を開始[4]
  • 1923年エスビー食品の前身(日賀志屋)が製造販売を開始。同社はこれが「C&B」の製品に対抗できた初めての国産カレー粉であるとしている[5]

それまで「C&B」のカレー粉を使っていた洋食店は、味が変わることを恐れ、これら国産のものになかなか切り替えなかった。国産カレー粉普及のきっかけとなったのは1931年に起きた輸入品偽造事件で[6]、これによりかえって国産品の評価が高まる結果となった。

日本ではかつてカレーライスを作るのに、まずフライパン小麦粉を炒め、カレー粉を練りあわせてカレールウを作り、これにダシ汁と、鍋で煮た肉や野菜などの具を合わせ、カレーを作っていた。このためカレー粉はカレーに必須の材料であったが、1960年代にあらかじめカレー粉に油脂、小麦粉、旨味調味料を加えて固形にした即席カレールウが開発された。即席ルーは、具を単に水で煮てからルーを割って投下すればカレーになる簡単さから大いに普及し、カレー粉単体の販売量は激減した。ただドライカレーやカレーピラフその他カレー風味の料理の調味料として一定の需要があり、今でもロングセラー商品の地位を保っている[5]

日本初

1923年、すなわち現エスビー食品の製品販売をもって「国産のカレー粉第一号」と認識されている例は少なくない[7][8][9]

ハチ食品、エスビー食品ともに自社のWebサイトでは「国産のカレー粉第一号」をそれぞれで主張している[10][11]。上記のように現ハチ食品が製造販売したほうが早いのであるが、エスビー食品側は「原料を一から調合し開発したという意味で国産初」と主張している[7]。そのため、1923年を「純国産カレー粉」が発売された年と記述することもある[12][13]

現在

[いつ?] 日本のカレー産業はエスビー食品とハウス食品の二強が寡占しているが、カレー粉市場は「S&B 赤缶」が80%以上のシェアを握る。スパイス販売大手のGABANもカレー粉を販売しているが、同社はハウス食品と提携関係にあり、同社のカレー粉はハウス系の製品である。また大企業以外にも、いずれも戦前戦後にかけて創業された独立系老舗の、インデアン食品のインデアンカレー粉、ナイル商会のインデラカレー粉も、ロングセラー商品として販売が続いている。

その他、カレー製造関連企業で作る、全日本カレー工業協同組合(カレー組合)加盟の数社が、自社ブランドでカレー粉を発売している。


  1. ^ エスビー食品によるカレー粉、パウダールーの違いの説明。[1]
  2. ^ Controversy surrounds the true origins of Indian curry - Telegraph
  3. ^ 森枝卓士『カレーライスと日本人』(講談社新書) 講談社、1989年7月 ISBN 4061489372[要ページ番号]
  4. ^ 元祖カレーメーカーの歩み”. これまでの歴史. ハチ食品. 2010年12月3日閲覧。
  5. ^ a b ニッポン・ロングセラー考 Vol.90 赤缶カレー粉”. COMZINE. NTTコムウェア (2010年10月24日). 2010年12月3日閲覧。
  6. ^ カレーの日本史 大正・昭和初期”. カレーを知る. ハウス食品. pp. 世界に広がるカレー. 2010年12月6日閲覧。
  7. ^ a b ナベコ (2018年3月26日). “なぜ? S&B以外にも「日本初のカレー粉」がある件”. 週刊アスキー. 2022年3月2日閲覧。
  8. ^ 広山均『フレーバー : おいしさを演出する香りの秘密』フレグランスジャーナル社、2005年、9頁。ISBN 978-4894790865 
  9. ^ 神林桂一『神林先生の浅草案内(未完)』プレジデント社、2021年、70頁。ISBN 978-4833451888  書籍には『カレーライスの誕生』(小菅桂子講談社学術文庫)などを参考と記されている。
  10. ^ 日本初の国産カレー粉を開発した 大和屋二代目 今村 弥兵衛伝承 「蜂カレー」シリーズ発売』(プレスリリース)ハチ食品、2016年3月28日https://www.hachi-shokuhin.co.jp/160328_hachicurry/2022年3月2日閲覧 
  11. ^ カレー粉”. エスビー食品 (2016年3月28日). 2022年3月2日閲覧。
  12. ^ 福井晋『図解入門業界研究最新食品業界の動向とカラクリがよーくわかる本』秀和システム、2009年、96頁。ISBN 9784798022062 
  13. ^ 産経新聞文化部『食に歴史あり 洋食・和食事始め』産経新聞出版、2008年、35頁。ISBN 9784863060517 
  14. ^ Curry Powder Manufacturers in India, Curry Powder Suppliers, Indian Curry Powder Exporters
  15. ^ ブルターニュとカレー辻調グループ・とっておきのヨーロッパだより


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