カウンティ級駆逐艦 カウンティ級駆逐艦の概要

カウンティ級駆逐艦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/30 01:05 UTC 版)

カウンティ級駆逐艦

バッチ2のHMS ノーフォーク(D21)
艦級概観
艦種 駆逐艦 (ミサイル嚮導駆逐艦)
艦名 イギリスのカウンティ
前級 防空巡洋艦: タイガー級
駆逐艦: デアリング級
次級 82型 (ブリストル)
性能要目
排水量 基準5,268トン
満載6,210トン
全長 158.7 m
全幅 16.5 m
吃水 6.1 m
機関 COSAG方式
水管ボイラー 2缶
蒸気タービン (15,000 shp) 2基
メトロヴィックG6ガスタービン (7,500 shp) 4基
スクリュープロペラ 2軸
速力 32.5ノット
航続距離 4,500海里 (15kt巡航時)
乗員 471名 (うち士官33名)
兵装 45口径11.4cm連装砲
※後期型は1基
2基
70口径20mm単装機銃 2基
シースラグSAM連装発射機 1基
シーキャット短SAM 4連装発射機 2基
エグゾセMM38 SSM単装発射機
※後期型のみ
4基
艦載機 ウェセックス哨戒ヘリコプター 1機
C4I CDS戦術情報処理装置 (バッチ1)
ADAWS-1戦術情報処理装置 (バッチ2)
レーダー 965型 早期警戒用 1基
278型 高角測定用 1基
992型 目標捕捉用 1基
978型 航法用 1基
901型 SAM射撃指揮用 1基
904型 短SAM射撃指揮用
※後期型では後日装備
2基
903型 砲射撃指揮用 1基
ソナー 177型 中距離捜索用
※184型に後日更新
1基
162型 海底捜索用 1基
電子戦
対抗手段
[注 1]
UA-8/9電波探知装置
667型電波妨害装置
コーバス8連装デコイ発射機 2基
182型 対魚雷デコイ装置

イギリス海軍初のミサイル駆逐艦として、まず19556年度計画で前期型(バッチ1)4隻が建造されたのち、19614年度で更に後期型(バッチ2)4隻が追加された[4]。なお、当時導入されていたアメリカ海軍式の船体番号ではミサイル・フリゲート(DLG)に類別されていたほか[1]ジェーン海軍年鑑では軽巡洋艦として扱われていた[5]

来歴

イギリス海軍は、艦隊駆逐艦として、1942年1943年度戦時予算ではバトル級、1944年度予算ではデアリング級を建造していた。しかし第二次世界大戦直後のイギリスでは大西洋の戦いの記憶が鮮烈であり、将来の戦争への備えとしては船団護衛に高い優先度を与えていた。このため、大戦直後の水上戦闘艦としては、船団護衛艦としてのフリゲートの建造が優先され、艦隊駆逐艦の建造はしばらく途絶えることとなった[1]

その間も、海軍では将来駆逐艦の研究が重ねられていた。1940年代後半から1953年にかけて、艦隊航空管制護衛艦(Fleet Aircraft Direction Escort, FADE)、対潜護衛艦(A/S Escort)、また62口径12.7cm砲[注 2]主砲とする巡洋艦駆逐艦(cruiser-destroyer)など、様々な計画が検討されては放棄されていった。1953年10月には、2,910トン級で新開発のガスタービンエンジンを採用した艦隊対潜護衛艦の検討が着手されたものの、ガスタービンエンジンのスペース増大に伴って1954年6月には4,000トンまで肥大化しており、この排水量ならば、むしろデアリング級と同コンセプトで拡大強化した汎用艦のほうが望ましいと看做されるようになっていた。この汎用艦の案は、「超デアリング級」「改デアリング級」「汎用駆逐艦」「高速護衛艦」など様々に呼称されたが、これが本級の計画の端緒となった[1]

1954年、海軍は戦略を見直し、次なる世界大戦よりも第三世界での限定戦争に重点を移すこととした。この場合、大西洋での船団護衛よりは空母機動部隊の戦力充実が必要となり、艦隊駆逐艦の更新は待ったなしの課題となった。この時点で、将来の対空兵器は新開発のシースラグ艦対空ミサイルになるであろうと予測されていたが、このシステムはあまりに巨大すぎて、海軍の要求にあわせて搭載するには巡洋艦の規模が必要とされていた。1954年10月、艦載誘導兵器作業部会(Shipboard Guided Weapon Working Party)は、ミサイル搭載艦への要求を妥協するように勧告した。そしてちょうどこの時期に上記の改デアリング級の設計が進められていたことから、ミサイル搭載艦のベースとして注目されるようになり、1955年5月、DNC第5課により、ミサイル搭載版の概略設計4案が作成された。このうちもっとも大型であったGW 57案が採択され、本級のベースとなった。6月29日には幕僚要求事項(TSD 2304/55)が作成され、7月には正式な設計が発注された。その後も、各種新装備の開発趨勢に応じて設計変更が繰り返されたが、1957年4月11日に概略設計は認可された[1]

設計

船体

艦内容積確保のため、船型は長船首楼型となり、また上部構造物も長大なものとなった[6]。上甲板が強度甲板とされている。抗堪性の観点から戦闘指揮所(AIO)は01甲板(船首楼甲板)の下に移され、艦橋とはエレベーターで結ばれた。これにより上部構造物の防弾性に拘泥する必要がなくなったことから、上部重量削減のため、可能な限りアルミニウム合金が導入されている[1]。機関構成の関係から、太く低い2本煙突が設けられ、印象的な艦容となった[2]

このように艦内容積が増大したことで、区画的に余裕がある艦となった。空気調整室の新設で艦内は冷暖房完備となり、兵員室でも伝統的なハンモックと腰掛兼衣服箱が廃止され、寝台とロッカーが設けられるなど、居住性の改善が図られた。また大戦中の戦訓も踏まえて、照明と通風装置の改善によって舷窓も廃止された[6]。また巡洋艦に匹敵する規模となったことから、旗艦としての運用も想定して、提督および幕僚のための居住区画も設けられていた[1]

なおヘリコプターの搭載に伴い、安定化装置として、複数翼のフィンスタビライザーを導入した[1]

機関

第二次大戦当時、イギリス製の機関は過度に保守的な設計を採用し、アメリカ製の機関と比して重い割に出力が低いことが問題になっていた。これに対し、まずデアリング級で是正が試みられ、一定の成果を収めていた。しかし当局は更に野心的に、加速機としてガスタービンエンジンを併用することによる抜本的な改善を志向した[1]

このCOSAG機関はヤーロウ-アドミラルティ研究部(Y-ARD)によって開発されており、機関全体としてはY.102と称された。ボイラーはバブコック・アンド・ウィルコックス水管ボイラー、蒸気性状はデアリング級よりも更に高温・高圧化が進められ、圧力700 lbf/in2 (49 kgf/cm2)、温度950 °F (510 °C)となった[7]。ガスタービンエンジンとしては、当初は5,000馬力のメトロヴィックG4が予定されていたが、後に7,500馬力のG6に変更された。これらは、航空用エンジン蒸気タービンの中間的な重構造型ガスタービンエンジンであり、重量低減効果は当初予期されたほどではなかったが、始動の早さなどのメリットが評価されたため、採用の撤回には至らなかった[1]

電子機器の強化に伴い電力需要が激増したことから、電源は、蒸気タービン主発電機(出力1,000キロワット)2基、ガスタービン主発電機(出力1,000キロワット)2基、ガスタービン予備発電機(出力750キロワット)1基と、一気に強化された。ただしガスタービン主発電機は熱帯での出力低下が問題となり、「ハンプシャー」以外では後にディーゼル発電機に換装された[1]


注釈

  1. ^ いずれも後期型(バッチ2)の装備[1]
  2. ^ アメリカ製の54口径12.7cm砲と弾薬を共通化した新型砲として開発されていたものの、砲塔重量過大などが問題になり開発そのものが断念された[1]
  3. ^ ウルトラライトそのものは採用されなかったが、この研究は一回り大型のワスプHAS.1中距離魚雷投射ヘリコプター(MATCH)として結実し、駆逐艦・フリゲートに広く配備されることになる。

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w Friedman 2012, ch.9 The Missile Destroyer.
  2. ^ a b c 中川 1994, pp. 128–131.
  3. ^ a b c d Gardiner 1996, p. 508.
  4. ^ 中川 1994, pp. 149–155.
  5. ^ Moore 1975, pp. 335–336.
  6. ^ a b 岡田 1994.
  7. ^ 阿部 1994.


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