電子線描画装置の機構
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/20 08:32 UTC 版)
「電子線描画装置」の記事における「電子線描画装置の機構」の解説
電子線描画装置は走査型電子顕微鏡(SEM)とほぼ同じ機構を持っており、相違点は微細な移動が行える精密X-Yステージ、高真空制御機構、微細測長機能、温度制御機構、ブランキング機構、ビーム径測定機構、高さ検出器などである。一部のメーカーでは電子顕微鏡を改造してこれらを追加し、電子線描画装置にするサービスがある。 電子線源(電子銃) スポットビームは熱電子電界放出型(Thermal FEG (T-FEG))としてZrO/W(酸化ジリコニウムタングステン)、矩形ビームはLaB6(6硼化ランタン)単結晶が用いられることが多い。 ブランキング機構 X-Yステージ移動時や偏光器による電子線照射場所の移動時などにおいてはそのまま電子線を照射していると移動軌跡にあわせて描画されてしまうので不都合があること、またビーム源からの電子線照射を止めると再度出力するときに電子線が安定するまで時間がかかる。このため電子線の出力は止めず描画したくない場合にはブランキング機構を作動させる。ブランキング機構には電子線偏向器とブランキング専用アパーチャーを用いることが多い。 高電圧発生部 10KV~100KV程度の高電圧を高精度かつ安定的に供給する。 電子レンズ 静電偏向、電磁偏向により電子線を縮小または焦点合わせをする。 偏向器(デフレクタ) 電子線を一定の範囲で任意の位置に照射するために静電偏向器または電磁偏向器を用いる。X-Y-Zステージでは制御が難しい数十um~nm単位のビーム位置補正などを行う。 収差補正 対物アパーチャーや静電式収差補正電極などにより、各種の収差を補正する。 X-Y-Zステージ パターン露光に合わせて一定のステップでステージを動かす。ステージの移動量制御には真空チャンバー外部設置のモーターとレーザー干渉式測長器、或いは 真空チャンバー内部設置の、非磁性・真空モータとリニアスケールが用いられ、数十um~nm単位の移動動作を行う。それ以下の位置制御は偏向器で行うことが多い。非磁性・真空モータとしてはリニア超音波モータが使用される。 反射電子検出器 描画位置検出やマーク付きウェハーの位置検出などにも用いられる。 二次電子検出器 二次電子は物体に電子線を照射した際、物体のごく浅い表面から発せられるため、物体の形状や表面凹凸を検出するのに適している。電子線形状測定やSEM像を確認するときなどに用いられる。 高さ検出器 ウェハーやマスクの高さを測定し、電子線照射時のフォーカス合わせに用いる。高さ測定には可視光や赤外線を用いることが多い。 電流検出器 電子線の照射量はマスクの品質に大きく影響を及ぼすため、一定期間において電子線量が正しいか測定を行っている。 ビーム径測定機構 電子線の大きさを測定する。電子線の電流検出機能があるナイフエッジとよばれる矩形開口を電子線で走査することによって、電子線の断面形状と電流を検出する。 高真空制御機構 電子線が通る部分は高真空を安定的に保持しなければならないため、ロータリーポンプ、ターボ分子ポンプ、イオンポンプなどを併用して最大で10^-8Pa程度の真空状態を保っている。また、ペニング真空計、電離真空計などの真空計により常に真空度の確認を行っている。電子銃がT-FEGの場合、電子銃周辺は10^-7Pa程度の真空度が必要である。 温度制御機構 水冷などにより、動作中に熱の発生する電子レンズやステージ、ガラスマスクやウエハー、増幅器の定温温度制御を行う。
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