白金触媒式カイロ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/21 15:10 UTC 版)
白金触媒式のカイロとは、プラチナによる燃料の酸化発熱を利用したカイロである。ベンジンを主な燃料としている。 大正末期、的場仁市がイギリスのプラチナ触媒式ライターを参考に、「プラチナ(白金)の触媒作用を利用して、気化したベンジンをゆっくりと酸化発熱させる」懐炉を独自に発明し、1923年に「ハクキンカイロ(白金懐炉)」の商品名で発売した。ベンジンが稀少であった第二次世界大戦前や戦中は郵便局や軍隊などが利用の中心だったが、戦後はハクキンカイロ社以外の製品も登場し一般にも広く普及した。 ベンジンなどの石油系炭化水素を、白金(プラチナ)の触媒作用により、摂氏300度 - 400度の比較的低温域で、緩やかに二酸化炭素と水へ酸化分解させ、その過程で反応熱を取り出す。炭化水素を燃料とするが、比較的低温な反応のため窒素酸化物をごく微量しか生成しない。反応の結果は燃焼に酷似する。 触媒となるプラチナをマット状ガラス繊維に粒子として付着させてあり、効率的に反応が進行する。ベンジン1cc当り約11,500cal(≒48,116J)と、使い捨てカイロの約13倍の熱量を持ちながら、機種により差はあるがおよそ燃料1ccで、表面温度60度の状態を約1 - 2時間保持可能。補給する燃料の量によって調節できるが、24時間以上使用し続けることも可能。反応開始時はライターまたは電熱線を用いて、触媒を130度以上加熱する必要がある。 燃料については、ハクキンカイロではカイロ用ベンジンが、ジッポーハンディウォーマーではジッポーオイルが、ハクキンカイロの輸出用製品ではジッポーオイルとホワイトガソリンが指定されている。自己責任で指定外の燃料を使用する者もいるが、製品の寿命・性能などが低下したり、不快なにおい・有毒なガスが発生することがあるため注意が必要。特に染み抜き用ベンジンにはシミ抜き用の成分が添加されているため、火口を痛めたり不快なにおいが出るので、カイロ燃料としては不向きである。なお引火性液体の航空機内への持ち込みは法令によって禁止されているため、ベンジンなどを使ったカイロ本体も同様に持ち込みが禁止されることがある。JRについては燃料を充填したカイロの持ち込みは規定量までは可能。ただし燃料単体は、2015年6月30日に発生した東海道新幹線での放火事件を受け、2016年4月28日より持ち込み禁止となった。 現在、日本国内メーカー製造・販売のベンジンを燃料とする白金触媒式カイロは、ハクキンカイロ株式会社が販売する「ハクキンカイロ」、マルカイコーポレーションが販売するジッポーブランドの「ハンディウォーマー」及びマルカイオリジナルブランドの「ハンディウォーマーミニ」等がある。なお川崎精機製作所(東京都荒川区)が「KAWASAKIポケットウォーマー」を販売し、2006年から新規参入している。白金触媒式カイロは、本体材質が真鍮かそれ以外の材料の差違がある程度で、基本構造及び本体形状は元祖たるハクキンカイロにほぼ準じている。 ハクキンカイロと異なるの形状・構造を持つ白金触媒式カイロとしては、1953年に松下電器産業(現:パナソニック)から発売されたナショナル黄金カイロ(またはナショナルカイロ)が存在した。黄金カイロはドーナツに似た円盤状の本体を持ち、乾電池を利用した専用点火具で電熱線を熱することで点火を行う形式で、本体中央部に嵌め込まれた円筒状の触媒ユニットを回転させて触媒と燃料タンク開口部をずらしてしまう事で任意に発熱反応を停止出来る事も特徴の一つであった。そのため、女性や子供でも扱いやすく平置きにも支障がない白金触媒式カイロとして長くハクキンカイロと市場シェアを争い続けた。ナショナルカイロはハクキンカイロ標準モデルとほぼ同じ燃焼時間の「標準型」の他、本体の厚さを薄くした「うす型」、本体の小型化を行った「ミニ」などのモデルが存在したが、使い捨てカイロ登場に伴う市場の縮小から1993年4月に全てのモデルの販売を終了した。そのため火口などの純正部品の供給も、すでに終了している。 なおナショナルカイロの販売終了後、松下電器産業アイロン事業部からナショナルほっとベルト及びナショナルほっとベストなる商品も発売された。単三乾電池2本を電源とする電磁ポンプにより、専用カートリッジ内ブタンガスを白金触媒ヒーター部に送り込み、酸化発熱させる原理。メーカーによれば「使い捨てカイロの約20倍のパワー(ほっとベストの場合)」、任意のON・OFF、三段階温度調節、オフタイマー機能、ガス燃料のためベンジンのように臭わず燃料補充も容易などの長所を持っていた。 白金触媒式カイロ。ベンジンを使用する。 zippoジッポーハンディウォーマーとオイル ハクキンカイロ専用ベンジン
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