版木とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 産業 > 製造業 > > 版木の意味・解説 

はん‐ぎ【版木/板木】

読み方:はんぎ

木版印刷で、文字や絵などを彫りつけた木版日本では主にヤマザクラ・ツゲなどの材を用いた。彫板(えりいた)。形木(かたぎ)。摺(す)り形木


木版

(版木 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/09/13 08:17 UTC 版)

浮世絵の木版

木版(もくはん)とは、版木/板木(はんぎ)とも呼ばれ、印刷のために文字や絵画などを反対向きに刻した板。木版印刷木版画制作に用いられる。

概要

用材

文字や絵などを彫刻した木版。適した用材は桜、梨、林檎、菩提樹などで,日本では木版としては、山桜などの柾目を用い,必要に応じて細かい彫りの部分に黄楊の木口を象眼し,これに書画を裏返しに張って彫る。彫板形木ともいい、中国では古く (あずさ) を用いたのでとも呼ぶ。

木活字による印刷

活版印刷は8世紀後半の期の中国にルーツがあるとされ、朝鮮日本などの周辺諸国に広まった。仏教を国教とした高麗においては10 - 13世紀に木版印刷による経典の印刷が盛んに行われた。高麗版大蔵経は11世紀に国家事業として刊行されたが、モンゴルの侵攻によって焼失し、その後13世紀に再刊、現在は海印寺大蔵経板殿に所蔵されている。高麗の木版印刷は、日本にももたらされ、日本の仏教やその他の文化にも大きな影響をもたらした。西洋にも同様の技術は存在したが、東洋において特に盛んに行われた。以後の中国における学術・文芸の振興や江戸時代の日本における浮世絵の盛行も、木版なくしては語ることは出来ない。

板木の再利用、木版の転売と流通

木版は両面に刻まれるが、板木の表面を削って新たに削りなおすことで再利用が可能である。また、保存状況が良ければ、100年単位で印刷に用いることが可能となるはずであるが、実際には、墨が付いている部分を残して虫食いなどによって空洞ができ再版に利用できない場合が多い[1][2]。また、当該印刷物が普及した後にその木版自体を商品として当該印刷物を必要とする他の地方に転売して利益を得る方法も存在した。そして、何よりも同一内容の印刷物を短時間に大量に生み出して広範に広めることが可能であった。ただし、前述のように誤字脱字の発生など木版そのものの製造にコストがかかるため、複数人が資金を出して木版を作って印刷を行い、利益を配分する事も行われた。更に木版には費用と利益の両面よりそれ自体に資産的価値を有したため、前近代の東洋では著作物を考案・執筆した著作者よりも、そこから実際の印刷物を生み出す木版の出資者・所有者(いわゆる「版元」)の方が著作物による権利や利益を受ける権利があると考えられ[3]著作権概念の発達が阻害された側面も有した[注 1]。それでも、木版が人類の学問文学芸術の発展に重要な役割を果たした。

作業

作業場と版木
作業場風景
版木

原木を切り出して一定の厚さを持つ両面平坦な木版を作り、歪みや亀裂を防ぐために塩水に浸したり樹脂を抜いた後に、陰干しをする。その後、版木の両端に把手(はしばみ)を付けて歪みを防ぐとともに側面に書名や巻数、ページ数などを刻んで必要ではない木版を誤って印刷をすることのないようにする。また刷り面の中央部分で2つ折出来る構造になっている構造のものもあり、これを版心(はんしん)と呼ぶ、中国や朝鮮では版心に実際に刻した人物(刻手)の氏名・住所、総字数などを記して後日の彫り賃などの証明代わりとした。今日では、そこから得られた版手の情報を元に木版が作られた時代や場所を特定する研究法が存在する。

こうした作業と並行して、刷りあがり後を想定して紙に内容を書き(版下)、それを木版に裏返しに貼り付け、文字や絵など以外の部分を除くように彫る陽刻や反対に文字や絵の部分を除くように彫る陰刻、印刷物を版下に用いて精密に刻する覆刻などによって木版に凹凸を付けていく。その際には徹底した校正が行われ、誤字脱字が一言一句交じることのないように精密に刻む必要がある(一度間違えた場合には修正が困難である)。その後、木版に墨を塗り、湿らせた紙を上に載せてばれんなどで紙背を擦って写し取ることで、片方だけが刷られた片面摺の印刷物が完成する。その印刷物そのもの、あるいはそれを半分に折って1丁(2ページ分)としてまとめた後に糊付・糸綴をしての体裁にしたものを、整版(せいはん)と呼ぶ。また、巻経を摺るための木版である長版の技術を応用して、2丁・3丁分を1度に摺ることも行われた。

脚注

注釈

  1. ^ 日本では江戸時代に三都などの都市において、書物問屋地本問屋などの版元による株仲間が結成されており、著作物に関する権利の多くは著作者ではなくこうした版元が有していた。これらの版元は明治の著作権概念の導入によって資産であった木版・出版物に関する権利の多くを失って没落することになる[4][5]

出典

  1. ^ 川瀬一馬『「米澤蔵書」と清見寺旧蔵本、五山版と古活字版』〈成簣堂文庫随想〉、156 、158 - 159頁https://dl.ndl.go.jp/pid/12237364/1/82 
  2. ^ 川瀬一馬 (1978-05). 文化庁. ed. “古版木の残存”. 文化庁月報 (ぎょうせい) 5 (116): 10 - 11. https://dl.ndl.go.jp/pid/2802973/1/6. 
  3. ^ 井上和雄『株板の実例』〈日本書誌学大系4〉、27 - 34頁https://dl.ndl.go.jp/pid/12235169/1/26 
  4. ^ 国史大辞典』第9巻(吉川弘文館、1988年)「著作権」(執筆:美作太郎
  5. ^ 『歴史学事典 15 コミュニケーション』(弘文堂、2008年)「書籍と出版 (日本)」(執筆:藤實久美子

参考文献

関連項目

外部リンク


版木

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/01 09:18 UTC 版)

歌川派」の記事における「版木」の解説

錦絵の元となる版木は削ってリサイクルされたため残っていることはまれだが、国立歴史民俗博物館弘化2年から嘉永元年1945-1948年)のものとみられる歌川派錦絵版木」群368として単独版元のものが大量に残っていた。このことによって染料科学分析も可能となり以下の結果となった黒 - 炭由来炭素。 赤 - 1点から、鉛に硫黄硝石加えて焼いた酸化鉛。 青 - フェロシアン化第二鉄、これはベロ藍呼ばれたプルシアンブルー。 黄 - ベロ藍硫黄混ぜたもの。

※この「版木」の解説は、「歌川派」の解説の一部です。
「版木」を含む「歌川派」の記事については、「歌川派」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「版木」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

「版木」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



版木と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「版木」の関連用語

1
100% |||||

2
摺り形木 デジタル大辞泉
100% |||||


4
版屋 デジタル大辞泉
100% |||||


6
100% |||||

7
100% |||||

8
偽版 デジタル大辞泉
100% |||||

9
剞劂氏 デジタル大辞泉
100% |||||


版木のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



版木のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの木版 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの歌川派 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2024 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2024 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2024 GRAS Group, Inc.RSS