外国の馬名の表記とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > ウィキペディア小見出し辞書 > 外国の馬名の表記の意味・解説 

外国の馬名の表記

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/12 09:23 UTC 版)

日本の競馬」の記事における「外国の馬名の表記」の解説

日本競走馬の名称は、カタカナ9文字までに制限されているが(競走馬#競走馬名参照国際レース増加などで、現地語で付けられている外国競走馬の名称を、日本国内何らかの形で表記する必要が増大している。通常は、日本競走馬名同様にカタカナ表記されることが多い。 ただ、一般的に外国語カタカナ表記ようとすると、「v」や「th」、「l」と「r」無声音促音拗音などの表現問題がある。これは普遍的な問題なので、ここでは詳述しない。 競馬に関して特別に発生する問題は、いくつかの原因によって生じている。 そもそも元になる外国語の名前が、外国どのように発音されているかが不確定。 たとえば、フランス首都パリであるが、外国語表記では「Paris」である。フランス語では最後の「s」は発音しないから「パリ」だが、英語ではパリス」と「s」を発音する。 もしも「Paris」という名前の馬を、フランス人フランス国内で所有しフランス国内で調教して競走参加していた場合カタカナ表記は「パリ」で異論ないところである(それでも、できるだけ現地発音に近づけようとすると「パヒ」のようになるのかもしれない)。しかし命名者アメリカ人場合は、彼は「パリス」のつもりで命名した考えるのが自然である。また、フランス人所有であってもフランスからアメリカ遠征出れば現地アメリカ人には「パリス」と呼ばれるし、フランス人所有しアメリカ国内調教される場合や、途中で所有者が変わる場合フランスで競走した引退してアメリカ売却される場合など、どの時点での発音採用するかでカタカナ表記変動する可能性がある。 このように命名の由来命名者発音関係者発音などが異な場合、どれをカタカナ表記として採用するかの公式な規則はないため、扱う人によって表記が変わる。 社会的に通例として普及している名称。 たとえば、「Mozart」という名前の馬がいた場合、これは音楽家の名前に由来するであれば日本での一般的な表記は「モーツァルト」である。仮にこの馬の関係者がすべてアメリカ人だった場合、彼らは「モザート」のように発音するので、そのとおり表記するであれば「モザート」が正確である。しかし、日本ではMozart」を「モザート」と表記する音楽家の名前とは通じなくなるため、「モーツァルト」が用いられる。 これは、現地発音確定しているにもかかわらず日本での通例によって表記が変わる場合である。 外国馬名カタカナ表現され問題となるのは、以下の場合である。 現役競走馬として来日する種牡馬繁殖牝馬として輸入され来日する上記以外(来日しない)。 1の場合ジャパンカップなどの国際競走外国馬出走すると、主催者であるJRAはその馬のカタカナ名を決める(このため例外的に日本規則である「2文字以上9文字以下」の原則当てはまらないカタカナ10文字上の馬名競走馬出走する時がある)。2の場合、その種牡馬ないし繁殖牝馬所有者は、カタカナ表記決める。 上記いずれの場合も、最終的にはJRHR(財団法人日本軽種馬登録協会)が、当事者申請を基に日本国内における公式な名称として登録する。そのカタカナ表記が妥当かどうかセンスがいいかどうかについて議論が起こることがある。いずれにしろ公式に使用する表記になるため、是非を問わず定着することになる。 3の場合は、いわゆる公式なカタカナ表記制定されないため、議論が起こると決着つかない。 以下は馬名表記問題となった代表的な例である。 ピルサドスキーピルサドスキー」も参照 1997年ジャパンカップ出走した同馬の名前は、原語表記では「Pilsudski」である。同馬のジャパンカップ出走時、JRA馬主対し馬名発音確認し、「ピルサドスキー」と表記することになっているが、1920年代ポーランド国家主席ユゼフ・ピウスツキ(Józef Klemens Piłsudski)、あるいは、兄で民族学者ブロニスワフ・ピウスツキBronisław Piotr Piłsudski)の名に由来する一般に彼の名前は「ピルスツキ」とか「ピウスツキ」と表記され例え国立スラブ研究センター出版物や在ポーランド日本大使館公式サイトでも「ピウスツキ」と表記されている。 JRA賞馬事文化賞受賞者ダート競走格付け委員山野浩一著書全日本フリーハンデ』のなかで次のように述べている。 「特にピルサドスキーのような例は下手をすると外交問題にすら発展しかねないもので、外国明治天皇の名を変なスペル綴られたりしたら、やはり外務省訂正求めるのではないだろうか。(中略抗議なければどのような失礼なことも許されるというものではない」 ゲインズバラゲインズバラ (競走馬)」も参照 1918年イギリス三冠達成した同馬の名前は、原語表記では「Gainsborough」である。18世紀画家であるトマス・ゲインズバラ由来するとされている。 「Gainsborough」の「borough」は「エディンバラ」のように「バラ」と発音されるのが日本でも通例であるが、競走馬であるゲインズボローの名前が日本紹介されたのは、1927年イギリスから種牡馬トウルヌソル輸入されて、大変良好な成績収めた時である。まだゲインズボロー現役種牡馬であった1938年日本出版された『競馬馬券実際知識』」では「ゲーンスボロー」で、上述山野浩一1970年代執筆した名馬血統』でも「ゲーンズボロー」の表記である。 「borough」を「ボロー」と読むのはアメリカ風で、日本ではこの馬の名前の後半表記長いこと「ボロー」で定着していたが、2000年代ごろから「バラ」の表記見られるようになったエルバジェ 1980年代後半から1990年代前半にかけて、輸入種牡馬シーホークの仔が活躍し1990年にはアイネスフウジン19万人観衆の前で東京優駿逃切り競馬ブーム象徴となった当時話題になったのは、シーホークの父「Herbager」の日本語表記で、同馬はフランスで生産されフランス人所有しフランス人調教しフランスで競走をした。そのため日本でもフランス名の「エルバジェ」と表記されるのが通例である。しかし同馬は引退後アメリカで種牡馬となっており、アメリカでは「ハーバージャー」と呼ばれている。シーホークアメリカ種牡馬の仔であり、「ハーバージャー」に改めるべきだとの議論一部なされたが、現在でも日本国内ではほぼ「エルバジェ」に統一されている。 これと似たようなケースで、フランス産馬「Lyphard」は「リファール」と表記され、「リファード」と表記されるのは稀である。しかし、「Lyphard」のアメリカでの仔に「Lyphard's 〜」とつくものがいて、この場合は英語風にリファーズ」と表記されている。 セントサイモンセントサイモン」も参照 19世紀末から20世紀にかけてイギリス大成功収めた歴史的名馬にして名種牡馬で、現在でも大きな影響力持っている馬名の由来フランス社会主義思想家アンリ・ド・サン=シモンである。馬名は「St.Simon」で、由来従えばSt.」の部分は「サン」、「Simon」は「シモン」と表記するのが原語忠実である。しかし同馬はイギリス馬で、英語読みでSt.」は「セイント」と読まれるようになり、「Simon」も英語風にサイモン」と表記されることが多かった歴史的には「サンシモン」「セントシモン」「セントサイモン」などの表記用いられてきた。近年、もともとの命名にしたがってサンシモン」と表記する場合がある。 ダンジグダンジグ (競走馬)」も参照 1990年代後半から、カタカナ表記論じる際に最も問題になる馬である。ダンジグ自体1991年-1993年アメリカリーディングサイアーになったほどの重要な種牡馬で、日本にも子供競走馬種牡馬として多数輸入されている。原語での馬名は「Danzig」である。ポーランド出身アメリカ人所有馬であった馬名の由来は、現在は「グダニスク」と呼ばれるポーランド都市ドイツ支配時代旧名であるとの説が有力である。 一方ダンジグの父であるノーザンダンサーには、著名な共産圏出身舞踏家の名前が命名されることが多くニジンスキーヌレイエフリファールなどが有名で、これにならってオランダ舞踏家であるルディ・ファン・ダンツィヒの名に由来するとの説もある。 いずれにせよ馬名の由来となった原語は、日本では現地発音に近い「ダンチヒ」とか「ダンツィヒ」のように表記されるのが通例である。しかし、同馬はアメリカで生産されアメリカ人調教しアメリカで競走しアメリカで種牡馬となった馬である。アメリカ人は「Danzig」を「ダンジグ」のように発音するため、日本語表記を「ダンジグ」とする説にも正当な根拠がある。 現在までに名前にDanzig」を持つ馬が外国馬として日本競走出走したことは無い。外国産馬としてはダンジグカラーズという馬が存在したが、これは日本で「ダンジグカラーズ」とカタカナ馬名登録を受けているので表記ゆれに関する問題は無い(よって同馬を「ダンチヒカラーズ」「ダンツィヒカラーズ」と呼ぶのは完全に誤りである)。

※この「外国の馬名の表記」の解説は、「日本の競馬」の解説の一部です。
「外国の馬名の表記」を含む「日本の競馬」の記事については、「日本の競馬」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「外国の馬名の表記」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「外国の馬名の表記」の関連用語

外国の馬名の表記のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



外国の馬名の表記のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの日本の競馬 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS