変周式(単変周・多変周)地上子
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 13:35 UTC 版)
「自動列車停止装置」の記事における「変周式(単変周・多変周)地上子」の解説
変周式とは、車上受信器である車上子が、特定の共振周波数を持つLC回路で構成される地上子の上を通過すると、電磁結合により車上子の発振周波数が地上子の共振周波数に引き上げられるので(これを変周作用という)、この周波数を車上装置のフィルタ回路で検出して地上情報を得る方式をいう。地上子の共振周波数は各々の信号コマンド(信号に対応した指令)に対応づけられており、単変周地上子においてはLC回路の開閉による共振の有無で、多変周地上子においては各信号コマンドに対応した共振周波数のLC回路に切り替えることで、車上に情報を送る。 日本国有鉄道が開発したATS-S形では、車上側では車上子を含む共振回路により常時発振周波数105 kHzを発信している、その出力の一部はフィルタ回路(105 kHz近傍の周波数しか通過できないバンドパスフィルタ)を経由してリレーを扛上させている。地上子は、内部がコイルとコンデンサが直列接続された共振周波数130 kHzのLC共振回路で構成されており、その共振回路に地上子内蔵の制御リレーもしくは地上子制御用のリレー箱を介してケーブルが信号機の制御用継電器と接続されている。地上子が不動作時(信号機が停止信号以外)には、地上子制御リレーが扛上して地上子の共振回路が無効化されているため、車上子による相互誘導による発振周波数の引き込み(変周作用)は起きず、車上子の発振周波数は105 kHzのままであるが、動作時(信号機が停止信号)には、地上子制御リレーが落下して地上子のLC共振回路が構成され、車上子の発振周波数が地上子の共振回路に引き込まれて105 kHzから130 kHzに変化する。この時、車上子からの発振出力はフィルタ回路を通過できないためリレーが落下し、停止情報をベル鳴動および表示器の赤色灯で伝える。 元々は共振周波数が1種類だったことから、これを特に「単変周」と呼んだが、現在[いつ?]では電気検測車の車上からの地上子良否検査を可能にするため、地上子制御用リレー箱内の制御ケーブルにコンデンサ(外付コンデンサ)を接続して、地上子制御リレーが扛上し短絡されている不動作時の共振周波数を車上装置のフィルタ回路を通過する周波数である103 kHz付近とすることで、車上計測を可能にしている。 その後、改良された地上子は複数の共振周波数を持たせる共振回路構成になり(これを多変周と呼ぶ)、共振回路の共振周波数に応じて地上子からの信号コマンドを送るシステムとなった。いずれも車上子の単独発振周波数の変化または、後述する脱変周式では複数の周波数を車上子から送出し、特定周波数の上昇を検知して地上子の情報を得る。 京王電鉄、小田急電鉄、東武鉄道などの信号ATSがこの多変周方式で、東武ATS (TSP) は周波数の一部をパターン発生地上子に割り当てている(信号ATSとは別に過速度・過走防止ATSがある)。 最近の分類では意味の薄れた「多変周 - 単変周」を避け「多情報 - (単情報)」と整理されている。またATSシステムとしては多数の変周周波数を使用しても、単機能地上子として1周波数ということもある。 JR西日本が開発したATS車上装置であるATS-SW2形は脱変周式と呼ばれる共振周波数検出方式を採用しており、スペクトラム拡散方式により、車上装置から車上子にATS地上子で使用されている共振周波数帯域の複数の周波数を常に送信しており、車上子と地上子が電磁結合すると、地上子では共振電流が流れ、車上子では地上子から発信される共振周波数の信号スペクトルの受信レベルが上昇して、それをFFT方式によるスペクトル解析で共振周波数帯域の複数の周波数ごとの信号スペクトルの受信レベル変化によるピーク周波数を検知して共振周波数を検出している。 ATS-S形の構成図と常時発振周波数および共振周波数の流れ。A: 増幅器(105 kHzを発信)、B: 車上子、C: 地上子、D: フィルター回路(105 kHzだけを通過させる)、E: リレー、赤の矢印の線は、増幅器から発信される常時発振周波数105 kHzの流れ、黒の矢印の線は、地上子からの共振周波数130 kHzの流れ。 ATS-S形の地上子と地上子制御用リレー箱の内部結線図。A: コイル、B: 内部抵抗、C: コンデンサー、D: 外付コンデンサー、E: 地上子制御リレー(QRリレー)の接点、F: 地上子制御リレー(QRリレー)、G: ケーブル。
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国鉄のATS-S型に近いが、地上子を2つ並べて、その2つの地上子を通過する時間によって速照する方式である。国鉄のATS-Sの改良型に似ている。地上子の間隔により照査速度を任意に設定可能で、地上との相対速度で計測するので速度計と関与がない。名古屋鉄道、京阪電気鉄道、南海電気鉄道で採用。
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