古代エジプトと周辺の国々における宗教関係
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「古代エジプトの宗教」の記事における「古代エジプトと周辺の国々における宗教関係」の解説
初期の古代エジプト時代、三つの地域と交流を持っていた。その一つがリビアである。リビアには、砂漠の神と呼ばれるアシュがおり、この神は初期時代のエジプトでセトと同一視されて言及されている。 二つ目の地域がヌビアであり、ヌビアの土着の神々とは別に、古代エジプトの神々も信仰されていた。また幾人かのエジプトのファラオは神格化され信仰された。 神格化された王たちは、センウセレト3世やアメンホテプ3世、ラメセス2世などが含まれており、ラメセス2世は、ラー・ホルアクティ神に捧げた神殿をアブ・シンベルに建てている。 また、ヌビアの地方神であったデドゥンはエジプトに持ち込まれ、ホルスと結びつきエジプト人がヌビアに築いた要塞の守護神として崇拝された。 しかしヌビアから出たピアンキがエジプトを支配し、第25王朝を開くと、ヌビアの宗教思想や信仰をエジプトへ導入した。 三つ目の地域は北に隣接するパレスティナやフェニキア、シリアなどの国々である。この国々は先の二つの地域と異なり、植民地化されなかった。 これらの国々との接触は、中王国時代までに増大していき、新王国時代になると、エジプトは、これらの地域に対して大きな影響力を持つようになった。しかしながら、エジプトの行政組織によってその地域を支配しようとする試みはなく、土地の王たちが実際的な支配力を維持し続けた。また、これらの地域では、エジプトと接触した頃には既に人々は固有の社会的、政治的そして文化的組織を持っており、加えて他の主要な文明の思想や概念などの交差する場所でもあったため、エジプトの影響力も限られたものであった。 古代エジプト人は、彼らの国家神アメン・ラーの信仰をこの地域にも広め、人類の創造主としてのその役割を強調したが、他国の主要な神々もまた同じ地域を支配する大きな力と考えられていた。実際、ファラオはシリアに幾つかの神殿を造営したが、こうした神殿の多くが土地の神々に対して捧げられたものである。 何故なら、古代エジプト人は、征服した土地の神々を自らの体系に組み込むことにより、さらに大きな力を神々から得ることができると考えていたからである。そのため戦いの神とされるシリアの神々の幾つかは、エジプトの神々の体系に加えられ、エジプト人以外の人々にも崇拝されていたと思われる。 エジプト風の衣服を着けエジプト的性格を帯びるようになった神々は、異国生まれであることを巧みに隠し、急速にエジプトの社会の中に溶け込んでいった。メンフィスでは、バアルやアシュタルト、レシェフなどが崇拝されていた。そして、ホロンはアル・ギーザで、またアナトやアシュタルト、ホロン、そしてバアルとなったセトなどが、デルタ地帯のピ・ラメセスにおいて信仰された。バアーラートはファイユームにその信仰の中心地を持っており、またレシェフとカデシュとはデル・エル・メディーナで見ることができた。 しかしこうした異国の神々が、どういう形で信仰されていたかは明らかになっていない。 ステラでは、これらの神々はエジプトの神として呼びかけられ、彼らを祭った土地の神殿の設計にも、典型的なエジプトのものとの相違は見られない。また、神官の地位を表わす称号もエジプト風のものであった。他に、病いを癒す力なども崇拝された。病を癒す神の中でも代表的な例としては、アメンホテプ3世の歯痛を癒すことを願って、ミタンニ王国のトゥシュラッタ王がエジプトの宮廷にその像を贈ったニネヴェのイシュタールがある。 シリアのパンテオンの中にはエジプトの神は見当たらないものの、地方神の中にはエジプトの神を見ることができる。 シリアのアンク・タウイの地の主で、アシュケロンの集大なる首長あった「プタハ、彼の壁の南にあるもの」や「ハトホル、ビブロスの女主人」に捧げられたフェニキアのビブロスにある神殿、そしてガザにあったアメンに捧げられた神殿などがその例である。 しかしながら、シリアやパレスティナ地域の神殿で行なわれた宗教儀式には、エジプトの影響はほとんど見られない。 第18王朝末期にかけて、王家の間に盛んに婚姻による同盟が結ばれ、また、支配者階級の人々も使節や学者として交流する機会を多く持っていた。このことから、エジプトに新しい神々や思想といったものが導入されたと思われがちである。 しかし、シリアからの資料が僅かで不完全であり、宗教や文化の交流の規模を推測することは難しい。さらに、エジプトの神学に対し何らかの影響があったという証拠はほとんど見つかっていない。
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