NPO
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概説
ジョンズ・ホプキンズ大学国際比較研究プロジェクトにおける定義
1990年から行われたジョンズ・ホプキンズ大学国際比較研究プロジェクトにおいては、国際比較を可能とするためにNPOを次の要件を満たすものと定義した。
- (1)正式の組織(Formal Organization)であること
- (2)非政府組織であること(Non-Political)
- (3)利益を配分しないこと(Non-Profit Distributing)
- (4)自己統治(Self-Governing)
- (5)自発的であること(Voluntary)
1994年までの研究プロジェクト第1段階では、
- (6)非宗教組織であること
- (7)非政党団体であること
が付け加えられたが、あくまで比較作業上の理由によるものであり、第2段階では、上記の狭義の定義と、(6)(7)を要件から除外し、さらに協同組合と相互団体を加えた広義の定義との2本立てで調査が行われた[7]。
以上の定義が一般的であるが、NPO(非営利組織)を組織の分析概念とすれば、認識主体の認識対象の重要性に応じ、NPOの定義は、James & Rose-Ackerman(1988)、Hayes(1996)、電通総研(1996:23-24)、田尾(1999:4-5)、田尾・吉田(2009:3-4)、村上(2014:96)など、さまざまになされている。またL.M.サラモンの研究でも、上記の5つの定義構成要素に加え、6番目の構成要素として「公益性」(public benefit)すなわち「公共目的のために活動・貢献している」が加わっている(Salamon,1999:10-11)。複数の定義構成要素のうち、NPOの本質的特徴は、「利益を分配しないこと」すなわち「非利益分配拘束」がもっとも重要である。なぜなら、それ以外の定義構成要素の特徴は、一定の社会貢献を経営理念とし、株式会社の組織形態を採用する民間企業も該当する。しかし「非利益分配拘束」は、純粋型としてのNPO(非営利組織)に不可欠である。またNPOは“Non-Profit Organization”であるから、営利活動とは無関係に寄付金や助成金だけに依存する、ボランティアの組織であると考えれば、「ソーシャル・ビジネス」の組織をNPOに含むことができなくなる。NPOによる営利活動は十分あり得るし、また営利組織も、その社会的責任から公益性を追求し、社会貢献することは、今日では、むしろ一般的である(新原,2003)。したがってNPOは“Not for Profit Organization”と考えることが現実的である。民間企業でも本業の貫徹とその成就自体に社会貢献の意味が含まれる(村上,2014:97)。社会に損傷を与えるビジネスは一過的であり、営利の事業運営の継続性も、なんらかの社会貢献と自然に結びついている。故に利益分配するかどうかの「非利益分配拘束」が「非営利」と「営利」の純粋型での違いである。
広義のNPO
広義のNPOは、利益の再分配を行わない組織・団体一般(非営利団体)を意味する。この場合の対義語は営利団体、即ち会社(会社法による)などである。この意味では、社団法人や財団法人、医療法人、社会福祉法人、学校法人、宗教法人、中間法人、協同組合、果ては地域の自治会なども広義の NPO である。法令に定められた各種法人格を持つものにあっても、行う事業あるいはその組織・団体自体を維持するために収益を上げることに制限はない。有給・無給の専従職員を置く団体も数多い。
アメリカにおいて制定された内国歳入法典に "NPO" という呼称が使われたことから、この言葉が広まったとされる。1960年代の公民権運動がNPO活動の発展に火をつけた。もともと「小さな政府」として成立しているアメリカでは、市民の自発的な非営利活動によって市民社会をより良い環境に構築していく必要性があり、各州の法律によって非営利団体の活動は保護また規定されている。たとえば、ウィキペディアを運営する "Wikimedia Foundation" は、フロリダ州法に基づく非営利団体である。ほとんどの財源は民間や個人の寄付金によって賄われ、一般的な認識としては市場経済の一員である。
北欧では、スウェーデンの 1809年憲法に明記された近代的オンブズマンが起源である。憲法に記載されていることから分かるように、れっきとした行政機関である。財源は原則として福祉国家から拠出されるため、政府の代理人という性質を持つ。
フランスでは、1901年法という法律に基づいて設立された結社(アソシアシオン association)が、日米でいうところの NPOと類似の活動を行っている(社会福祉目的の他、スポーツ・文化活動など)。長い伝統に基づき、どこにも属さない市民社会の中核として活動している。
狭義のNPO
NPOは、狭義では、各種のボランティア団体や市民活動団体を意味し、さらに狭く「特定非営利活動法人」をNPOとする場合もある。「特定非営利活動促進法」によって国、又は都道府県に認証をうけたNPOを通称でNPO法人という。
日本では、1995年の阪神・淡路大震災を契機に市民活動団体、ボランティア団体等で法人格の必要性がクローズアップされた。
市民活動団体の法人格取得を容易にするための国会への法案提出はまず、新進党案として、市民公益活動を行う団体に対する法人格の付与等に関する法律案が、平成7年11月7日に第134回国会で衆議院に提出されたが、第137回国会まで継続審議となり、衆議院解散で廃案になった[8]。
第139回国会において、新進党が、市民公益活動を行う団体に対する法人格の付与等に関する法律案を、1996年11月29日に再提出[9]し、自民・社民・さきがけ連立与党は、市民活動促進法案[10]を1996年11月29日に提出した。
この2法案は、第140回国会まで継続審査となり、この国会で、共産党案として、非営利団体に対する法人格の付与等に関する法律案[11]が、1997年3月14日に提出された。
与野党提出の3法案は、1997年6月6日の本会議において、新進党案及び共産党案が否決され、自民・社民・さきがけ連立与党案の市民活動促進法案に民主党の修正を加えたものが、衆議院本会議で可決された。
参議院においては、第142回国会まで継続審議となり、参議院自民党が「市民」の語への反発から「市民活動」を「特定非営利活動」にするなどの修正要求を行い、これを与党が受け入れ、1998年3月4日の参議院本会議で、賛成票 217、反対票 2(新社会党)[12]のほぼ全会一致で可決された。
1998年3月19日に、この参議院修正を衆議院が全回一致で同意[注釈 1]し、法案は成立した。
これにより、条件を充たすものは特定非営利活動法人として法人格の取得が可能となった。また近年、社会起業家の概念が普及してきており、コミュニティ・ビジネスの主体としても期待されている。また、国、地方自治体の財政逼迫等から全国的に行政とNPOとのいわゆる協働がブームとなっている。
そうした行政とNPOとのいわゆる協働の流れの中で、各地で行政とNPOが協働してルール作りを行うなどの新しい試みが行われている。
NGO(非政府組織)という表現との使い分けは視点の違いであって、「民間団体の中で、営利目的ではなく社会的な事業を行っているもの」という、非営利性を強調した表現がNPOであり、「社会的な非営利事業の中で、行政ではなく市民によって行われているもの」という、非政府性を強調した表現がNGOであると言える。一般的には、国際的な分野で活躍するのがNGOと呼ばれる。ただし、ともに非営利であり、非政府であるという意味ではNPOとNGOは共通している。
最近では、CSR(Corporate Social Responsibility - 企業の社会的責任)のステークホルダー(利害関係者)として、企業にとっても無視できない存在になっている。 ドラッカーは、NPOの原型は、日本の寺院にあると述べている。
注釈
- ^ 新社会党は、この時点で、衆議院に議席はなかった
出典
- ^ “コロナでNPO苦境 活動ままならず、寄付金は減少”. 日本経済新聞 (2020年6月16日). 2021年11月19日閲覧。
- ^ “NPOってなんだろう|石川県NPO活動支援センター”. www.ishikawa-npo.jp. 2021年11月19日閲覧。
- ^ a b “NPOのイロハ | NPOホームページ”. www.npo-homepage.go.jp. 2021年11月19日閲覧。
- ^ Company, The Asahi Shimbun. “NPO法人に関するトピックス:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 2021年11月19日閲覧。
- ^ “NPO法人ポータルサイト - 内閣府”. www.npo-homepage.go.jp. 2022年12月13日閲覧。
- ^ “Not-for-profit organization definition and meaning | Collins English Dictionary”. web.archive.org (2018年11月7日). 2021年11月19日閲覧。
- ^ NPO研究フォーラム『NPOが拓く新世紀』清文社、1999年、11-31頁。ISBN 978-4-433-17539-9。
- ^ “市民公益活動を行う団体に対する法人格の付与等に関する法律案 衆法 (第134回国会 衆法 第17号)”. 国立国会図書館. 2022年3月23日閲覧。
- ^ “市民公益活動を行う団体に対する法人格の付与等に関する法律案 衆法 (第139回国会 衆法 第4号)”. 国立国会図書館. 2022年3月23日閲覧。
- ^ “特定非営利活動促進法 平成10年3月25日法律第7号”. 国立国会図書館. 2022年3月23日閲覧。
- ^ “非営利団体に対する法人格の付与等に関する法律案”. 国立国会図書館. 2022年3月23日閲覧。
- ^ “第142回国会1998年3月4日投票結果環市民活動促進法案(第140回国会衆議院提出)「委員長報告の通り修正議決」”. 参議院. 2022年3月23日閲覧。
- ^ a b “行政 : NPO商標問題で協力呼びかけ | NPOWEB” (2003年7月5日). 2022年12月13日閲覧。
- ^ “脱法売買の詳細を初めて裏付け 犯罪グループ悪用も”. 毎日新聞. (2018年6月6日) 2018年6月8日閲覧。
- ^ “NPO法人:脱法売買 全国11法人売り出され、仲介業者も 口座乱造、詐欺に悪用”. 毎日新聞. (2018年6月7日) 2018年6月8日閲覧。
- ^ “非営利法人「善意」の陰で.NPOの信用、逆手 逮捕の男「詐欺用口座、簡単に作れた」”. 毎日新聞. (2018年6月7日) 2018年6月8日閲覧。
- ^ “非営利法人「善意」の陰で。転売NPO、犯罪の舞台 「信用」で次々預金口座 逮捕の男、本来の活動せず”. 毎日新聞. (2018年6月7日) 2018年6月8日閲覧。
- ^ “NPO売買:法人買いで利権狙う 目的は「もうけ話”. 毎日新聞. (2018年6月8日) 2018年6月8日閲覧。
- ^ INC, SANKEI DIGITAL (2016年1月20日). “震災事業費横領に実刑判決 「被災者愚弄している」 岩手”. 産経ニュース. 2022年12月13日閲覧。
- ^ “非営利法人「善意」の陰で:休眠NPO、看板悪用 東京、多重債務者集め詐欺/茨城、実態は違法風俗店”. 毎日新聞. 2022年12月13日閲覧。
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