Itanium
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/23 06:43 UTC 版)
生産時期 | 2001年6月 から2021年7月29日 まで |
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生産者 | Intel |
CPU周波数 | 733 MHz から 2.66 GHz |
FSB周波数 | 266 MT/s から 6.4 GT/s |
アーキテクチャ | EPIC |
コア数 | 1, 2, 4 or 8 |
Itanium 2(アイテニアムツー)は、翌2002年に発表されたItaniumの後継で、3次キャッシュを内蔵させるなど性能の向上を図った。2008年2月25日、インテルはItanium 2の表記を「Itanium 9000」などに変更した[1]。これはプロセッサナンバーの採用によりItaniumとItanium 2を区別する必要性が薄れたこと、ブランド力の強化などがあげられる。
2019年1月、インテルは2021年のItaniumシリーズ製造終了を発表した[2][3]。
概要
16ビットおよび32ビットのx86命令セットアーキテクチャのマイクロプロセッサーによってパーソナルコンピュータ市場では事実上の標準となったインテルは、1994年に独自の64ビット命令セットアーキテクチャである「IA-64」を発表し、従来の32ビットx86アーキテクチャ (x86-32) を「IA-32」と呼ぶようになった。
IA-64は、従来のx86-32との命令セットレベルの互換性という制約を捨てる代わりに、ヒューレット・パッカード (HP) と共同開発したEPICアーキテクチャを採用し、コンパイラなど主にソフトウェアによる命令レベルの並列性を発揮することで性能と将来への拡張性を確保することを目的とした。
インテルはIA-64により、各社のRISCプロセッサが占めるハイエンドの64ビット市場に進出し、HPは従来からのPA-RISCからの移行を表明した。IA-64は同時に特許などで保護されたアーキテクチャであるため、AMD などの互換プロセッサメーカーの振り切りを狙う目的もあり、将来的にはIA-32 (x86) からの移行も掲げられていた。またインテルがメーカー各社に供給することで、幅広いハードウェアやソフトウェアでサポートと、大量生産による価格競争力の向上により、当時の32ビット市場におけるIA-32に続いて、次世代の64ビット市場で事実上の標準となることが提唱された。
しかしIA-64を採用した最初のマイクロプロセッサであるItanium(コードネームMerced)は開発が遅れ、当初予定の1999年から2年後の2001年にリリースされたが、当時の各社RISCプロセッサだけではなく、Xeonなど自社のx86プロセッサと比較しても価格性能比が低く、サポートするハードウェアやソフトウェアは広まらず、またx86エミュレーションの遅さもあり、広くは普及しなかった。
2002年には性能を改善したItanium 2がリリースされ、2008年の「Itanium 9000」番台への名称変更を経たが、同時期の各社プロセッサと比較しての価格性能比や、更に64ビット命令セットアーキテクチャとしては後発のx86-32を64ビット拡張したx64 (x86-64) が普及したこともあり、2010年の時点でも、IA-64 (Itanium) の普及は一部のメインフレームやミッドレンジコンピュータの移行先など、限定的な市場に留まった。
Itanium 2
Itanium 2の位置付けは、RISCプロセッササーバやメインフレームの置き換えであるとされており、そのため信頼性の向上にプロセッサレベルで対応している。シリーズ共通の特徴は以下の通りである。
- 16KBの1次命令キャッシュと16KBの1次 (L1) データキャッシュ
- 2次 (L2) キャッシュは規定されていないが特筆していない場合は256KB(命令/データ共通)
- 3次 (L3) キャッシュは機種により異なり、1.5MB〜24MB
- MckinleyバスまたはScalability Portとも呼ばれるシステムバスは128ビット幅
- 200MHz(DDRなので実質400MHz)の場合、6.4GB/s
- 2004年には、266MHz(実質533MHz)、8.5GB/sとなった
- 2005年には、333MHz(実質667MHz)、10.6GB/sとなった
- ItaniumからItanium 2へのマイクロアーキテクチャ上の変更点は、整数演算&メモリのユニットが2個から4個に拡張(整数演算専用ユニットは別に2個ある)、命令発行の組み合わせを増大させた、パイプライン段数を10段から8段に変更、などがあげられる。
- IA-64だけでなく、IA-32ベースのアプリケーションも実行可能である。
キャッシュ設計上の興味深い点としてL2キャッシュがALUを使わずにセマフォーを操作できるロジックを備えている点である。デュアルコアである2006年7月発売の製品Montecitoを皮切りに、以降のItaniumファミリはマルチコアチップとなる。
歴史
- 1994年 インテルとHPがIA-64の共同開発を発表
- 1999年 インテルとHPがIA-64の詳細を発表
- 2001年 Itanium (Merced) リリース
- 2002年 Itanium 2 (Mckinley) リリース
- 2003年 Itanium 2 (Madison) リリース
- 2004年 Itaniumの設計よりHPが撤退[4]
- 2005年 Itanium Solutions Alliance (ISA) 発足
- 2006年 Itanium 2 9000 (Montecito) リリース(後にItanium 9000と改称)
- 2007年 Itanium 2 9100 (Montvale) リリース(後にItanium 9100と改称)
- 2008年 Itanium 2をItaniumと改称
- 2010年 Itanium 9300 (Tukwila) リリース
- 2012年 Itanium 9500 (Paulson) リリース
- 2017年 Itanium 9700 (Kittson) リリース
- 2020年1月30日 最終受注日[2][3]
- 2021年7月29日 最終出荷日[2][3]
- ^ Product Change Notification 108304-00 - Intel
- ^ a b c Product Change Notification
- ^ a b c Itaniumが製造終了へ。IA-64の歴史に幕 - PC Watch
- ^ HP が『Itanium』の設計から撤退 - japan.internet.com
- ^ Intel Itanium Processor Numbers
- ^ The World's First 2-Billion Transistor Microprocessor
- ^ INTEL TECHNICAL DISCLOSURES AT ISSCC
- ^ インテル Itanium プロセッサー・ベース・サーバ・プラットフォーム: 製品とテクノロジー
- ^ リリースも延期:Intelが新Itanium「Tukwila」のデザインを修正
- ^ Intel、次期『Itanium』プロセッサ『Tukwila』の出荷を再び延期
- ^ 基幹業務システム向けにインテル® Itanium® プロセッサー 9300 番台を発表 - インテル
- ^ Intel、前世代から性能を2倍以上に高めた「Itanium 9500」シリーズ - PC Watch
- ^ New Intel Itanium Processor 9500 Delivers Breakthrough Capabilities for Mission-Critical Computing - Intel
- ^ インテル、vProとItanium 2のロードマップを解説
- ^ IntelのサイトにItanium 9700シリーズがひっそりと登場 ~5年ぶりの新モデル - PC Watch
- ^ “IntelのItanium、今年出荷の「Kittson」で幕引きか - CIOニュース:CIO Magazine”. 2017年2月17日閲覧。
- ^ Intel Itanium Processors Update
- ^ Intel® Itanium® Processor 9300/9500/9700 Series: Datasheet
- ^ Intel’s Itanium Takes One Last Breath: Itanium 9700 Series CPUs Released
- ^ Intel's Itanium, once destined to replace x86 processors in PCs, hits end of line | PCWorld
- ^ a b HPE Integrity with HP-UX roadmap (public) Aug 2017
- ^ “Mining Itanium”. CNet News (2005年12月7日). 2013年1月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年3月19日閲覧。
- ^ Shankland, Stephen (2006年2月14日). “Analyst firm offers rosy view of Itanium”. CNet News. 2012年12月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年3月20日閲覧。
- ^ IBM Alleviates a Problem by Buying Platform Solutions Inc.
- ^ HP Supports Customers Despite Oracle’s Anti-customer Actions - HP
- ^ HP、Oracleを提訴――Itaniumのサポート打ち切りは違法
- ^ 米国地方裁、HP Itaniumへのオラクルのソフト移植継続義務を認定
- ^ a b 米オラクル、「Oracle DB 12c」など最新ソフトをHP-UXにも提供へ
- ^ Top500 List - June 2013 - TOP500 Supercomputer Sites
- ^ 米コンパックがAlphaマシンをついに断念,サーバーは米インテル製で染める
- ^ IBM、Itaniumプロセッサを見限る--新チップセットはXeonのみ対応
- ^ Dell、Itaniumサーバから撤退へ
- ^ 米ユニシス、インテルの「Itanium」を見限る--「Xeon」の優位性を強調
- ^ HP、Itanium搭載ワークステーション打ち切り
- ^ NECがメインフレーム「ACOS」の新機種、専用プロセッサ「NOAH」が復活
- ^ 富士通がハイエンドサーバーPRIMEQUESTの新版、CPUをItaniumからXeonへ変更
- ^ インテル、Itaniumで悲喜こもごも(ワークステーション向けWindowsのItanium 2対応版の開発を中止)
- ^ 次期版Windows ServerはItaniumサポートなし
- ^ Red Hat、バージョン6でItaniumサポート打ち切り
- ^ SPARC/Solarisの置き換え狙うItanium連合
- ^ Oracle Stops All Software Development For Intel Itanium Microprocessor - Oracle Press Release
- ^ 米オラクル、Itanium向けソフト開発を終了 - ITPro
- 1 Itaniumとは
- 2 Itaniumの概要
- 3 製品
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- 5 批評
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